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堅実なボス戦、すれ違う価値観。一匙のフェチを添えて:MALICIOUSシリーズ

 MALICIOUSシリーズ
 PS3、PSVITA、PS4と続編を追加したマイナーチェンジを繰り返してきた、ダウンロード専用のアクションゲームシリーズだ。

 ボスステージのみの空間と、大迫力のグラフィックとアクション。
 メインストーリーのシンプルな語りを補完するノベルアルバムなど、お値段以上のゲーム性を秘めた作品。知っている人は少なからずいるのではないだろうか。

 本記事では、MALICIOUSシリーズの大まかなあらすじや作品ごとにブラッシュアップされたシステム、そしてちょっとしたフェチについて綴っていきたいと思う。

注意:本記事執筆者はMALICIOUSシリーズ完結作である「MALICIOUS Fallen」は未クリアであり、実況動画を閲覧することで補完しております、予めご了承ください。

MALICIOUS(PS3)

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 始まりの物語。
 預言者によって異世界から召喚されたプレイヤー。
「討伐者」としてとある「器」に収まり、来たる災厄「マリシアス」を討伐するために力を振るうことになる。

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 プレイヤーの魂を召喚し「器」に放り込んだ預言者。
 全部で6人いるが、見た目はほとんど変わらないので見分けがつきにくい。

 白の空間と呼ばれる謎の場所で、預言者に囲まれた状態で目覚めた「討伐者」。
 預言者の話によると、どうやらこの世界は負の感情を苗床として現れる災厄「マリシアス」に度々脅かされているという。
 しかし力が備わっていない状態ではマリシアスには対抗できない。 
 かくして「討伐者」となったプレイヤーは、力の保持者を倒して能力を得て、マリシアスへと戦いを挑むことになる。

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MALICIOUS公式サイトから引用した主人公の立ち絵。(以降の画像も同様)
後に掲載するPSVita版、PS4版の立ち絵よりシンプルで無機物感が窺える。
Flashを使用したサイトなので閲覧の際は設定にご注意。

 MALICIOUSシリーズ最初の作品である今作。(調べて驚いたが配信からもうすぐ10年経つ)
 ゲーム性はシリーズで一貫しており、それが何よりの魅力となっている。

 その魅力とは、「ボスバトルのみの攻略
 このシリーズ、いわゆる雑魚敵は存在するものの、ステージはそれぞれのクエストで1つ。そこそこの広さのものがあるのみである。
 攻略クエストは全部で5つ。プレイヤーがステージに降り立つと同時にボスが出現。それを討伐することでクリアとなる。

 シンプルな構成となっているが無論一筋縄でいくわけではない。
 作中でプレイヤーに説明があったとおり、主人公たる「討伐者」は最初使える技が少ない。ペチペチ程度の威力しかない銃弾と、コンボ数の少ない拳、貧弱な盾の三種類となっている
 その為最初は、限られた手段の中で強力なボスと無現湧きする雑魚を相手取り、戦っていくことになる。

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 「討伐者」は身に纏う「灰の外套」を変化させて攻撃を行う。
 以上の画像に移っているのは最初から使える銃、拳、盾。

 とはいえ、これだけではあまり特色がない。今シリーズの特色である「オーラ」と「チェインシステム」「カウンター」を紹介しよう。

 オーラとは雑魚敵を倒すと増えるポイント(ジャストガードでも増加する)。これの利用先は大まかにわけて以下の2つだ。
・ダメージを受けて破損した肉体の修復。
・持続的にオーラを消費する代わりに、基礎能力を向上させる。

 どちらもすべての場面でお世話になる有用な機能。それだけに、雑魚敵を放置して戦うことはお勧めされない。

 次にチェインシステム。これは上記のオーラ稼ぎで大いに役に立つシステムだ。
 雑魚敵が倒れる時、一定範囲に光の円が発生する。
 その範囲内にいた雑魚敵は、早い話が死ぬ。そして死んだ雑魚敵からも円が広がるので、うまくいけば大量の敵が倒れ、オーラもいっぱい手に入ることになる。
 以下の映像の随所で光の円が見えているので確認して欲しい。

 またこれもPVの中で出ているのだが、特定の得物を手に入れているとカウンターチャンスが訪れる。
 チャンス中に指定のキーを押すことで専用のムービーが流れ、ボスへ大ダメージを与えることが可能だ

 そうして全6種類の能力を手にし、マリシアスを倒すことでクリアとなる。
 お値段は800円。やってみるとわかるがボリュームと比べるとすごく安い。触れなかったがBGMもいいものだし、クリア後にはチャレンジモードとして何度でも各ボスへと挑むことが出来る。

 不満点としてはカメラワークの悪さが挙げられるが、それを差し引いてもお値段以上の輝きを見せていた。

 初代MALICIOUS公式サイト。
 リンクのある「誰が為の歌」は現在のバージョンでは非対応であり、販売されていないので注意。

MALICIOUS Rebirth(PSVita)

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 MALICIOUSシリーズ第2作。
 再び呼び出された「討伐者」は、新たな敵との戦いへと身を投じる。

 前作「MALICIOUS」を討伐編としてグラフィックをブラッシュアップし、更に再誕編を収録した、いわば「MALICIOUS1+2」の今作。
 様々な新システムが搭載されており、よりアクションの幅が広がっている。

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 今作の主人公デザイン。
 瞳の色が単色ではなくなり、動きがついたためか、人形のような印象から人よりになっている。

 今作で追加された要素として武器のコンボパターンもあるが、一番は「コスチューム」だろう
 新機能のコスチュームだが、見た目が変わるのと同時に「討伐者」自身の能力も変化し、目的に合わせた使い方ができるようになっている
 今作では基本の衣装を合わせて4種類が選択可能。本編中に出てくるキャラを模したものばかりなので、着せ替えするときはよく見てみるといいだろう。

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 基準のコスチュームを豪華にしたような「守護者の衣」
 本編攻略の最終手段であり、強力なステータスと能力を誇る。

 また新たに追加された「再誕編」のボスを倒すことで、既存の武器にコンボパターンが追加される
 拳には爪が、銃にはガトリングが……という風に、より戦法が増え、見た目も派手になっている。
 個人的には大剣からの派生技である大槌がお気に入り。じっくりと貯めた上で繰り出す鈍重な一撃は、ピーキーさ故にかなりの火力を誇る。

 しかし新要素が追加されたとはいえ「全編ボス戦」「自由な攻略順序」といった基礎部分のテーマは変わっていない。
 新規のボスはよりバリエーション豊かな挙動をとるようになったが、トライアンドエラーを繰り返すうちに気づいたら討伐できてしまうような、丁度いい難易度に仕上がっている。

 こちらはPSVitaのダウンロード専用で、お値段は1500円。
 前作含めて2本入りと考えるとこれまた安いと思える値段設定だ。
 サウンドトラックも別売りで配信されているので、Vitaを所持している方はぜひ。

MALICIOUS Fallen(PS4)

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 シリーズ完全版にして完結作。
「マリシアス」を防ぐ為の戦いは、ついに「預言者」の内紛へと発展する。

  シリーズ完結作となる今作では前作からグラフィックを一新。「討伐者」の見た目も若々しい少年少女のそれとなり、美麗さがアップしている。
 また前作同様既存の話に加えて高難易度ダンジョン「追討編」全ての決着をつける完結編「終焉編」が追加されている。

マリシアス

 MALICIOUS Fallenの主人公立ち絵。
 前作以上に細かな描き込みがされており、勇ましい雰囲気を醸し出している。

 さて今作、先にも触れた通り、三度いや四度目の召喚が起きたのは「預言者」内で起きた内紛が原因である。

 その説明をする前に、「預言者」という存在について簡単にしておこう。
「預言者」は数秘術の研鑽により生を超越し、世の理を司る側になった元人間である
 彼らは基本世界に積極的に介入するつもりはなく、災厄「マリシアス」への対処においても、時の実力者へと力を授けるに留まっていた。

 しかし、幾度となく繰り返される「マリシアス」とのいたちごっこに人間の限界を感じた「預言者」達は、こう考えた。


「人の魂を作り変えて自分たちと同じにし、悪意をなくしてしまおう」

 何言ってんのやべーぞこいつ案件である

 そしてその考えに反旗を翻した「預言者」ヘクサが、色々あって封印されていた「討伐者」を目覚めさせる、というのが「終焉編」の始まりだ。

 今作の何よりの目玉といえばやはり高難易度の「追討編」だろう。(無論「終焉編」も魅力だけれど)
「追討編」は「いっそマリシアスの源に行こうぜ」という発想から「討伐者」が召喚された話であり、時系列としては「再誕編」「終焉編」の間のものである。

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 バトル内容は他とは別物で「拠点となる術式を守りながらひたすら降下し、マリシアスを討伐する」というもの。
 文字にするだけなら簡単だがこれが大変。
 ひっきりなしに湧いてくる敵を倒しながら100000という単位(1秒でおよそ500)を耐えないといけない。
 敵が増えてくると降下速度が低下する上、これまでのボスもほいほい出現。デバフ(なんと重複アリ)付与の敵もいれば自爆する敵もいるしでなんだこれ
 お決まりのように終盤になると湧く量も爆発的に増える上、中央の防衛対象が破壊されればリトライもできずやり直し。なんだこれ


 ちなみにこれ、クリアするとトロフィー貰えるんだが発売1年後当時取得率1.6%、ゲーム内スコアランキングに載っているのは16人という「マイナーだとしても少なすぎませんか」状態の代物である。(現状の取得率を知りたい人は是非買いましょう

 そんな高難易度は置いておくとして。
「終焉編」も外せない。物語の終焉となるのもあって戦闘難易度は再び上昇。「預言者」との戦いの際は4対1という虐めか何かと思う状態で戦うことになる(雑魚が湧かないのでオーラ稼ぎはジャスガ必須)。

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 見た目は量産型お爺さんだが、伊達に自力で人間卒業したわけではない。
 戦闘能力も十二分にある。

 そんな彼らを倒し、「魂の浄化計画」を阻止したのち、最後の敵との戦いに勝つことで、今度こそ「討伐者」の戦いは終わる。

ノベルパートで垣間見る人間臭さ

 さて。
 ここまで読んでくれた人は思ったかもしれない。
ストーリーそんなにないんじゃないの?」と。
 確かにメインモードでは「預言者」の一方的な話を聞くだけで、そこに深みはほとんど存在しない。
 なぜ「討伐者」が生まれたのか。なぜ歴代のボスは「討伐者」に殺されることになったのか。メインではほとんど語られていないのだ

 だがそれを補完する要素がしっかりと存在している。
 それが「ノベルパート」だ。
 MALICIOUSシリーズではメイン以外にこのノベルが収録されている。こちらは全てのシリーズそれぞれの前日譚となっており、各々が何を思っていたのか、何をしていたのかがつづられている

 討伐編のボスがなぜ力の保持者となったのか。

 再誕編のボスがどんな人間だったのか。

 追討編で何故「預言者」が「マリシアス」の追撃を決意したのか。

 終焉編で何故「預言者」達が袂を分かったのか。

 そして「討伐者」の「魂の器」は誰がモデルで、その材料は何なのか

 それら全てが、ノベルパートで明かされている。

 読み進めていると、今までただ倒す対象だったボスに様々な思いがこみ上げてくることだろう。
 個人的に一番このノベルパートで印象が変わったのがそれぞれの「預言者」だ。


「預言者」達は全員で6人。名前があるのは「終焉編」で「討伐者」の唯一の味方であるヘクサ、諸々の事情で名前が出たテサレス、そして「預言者」のまとめ役モノスの3人。
 それ以外の3人は名前すらないが、彼らは彼らなりに人類を思って様々な手段を講じていたことが、ノベルパートで語られている。

 が、それらは視点を変えると「ただのわけわからん奴ら」「とんでもないクズ野郎」「余計なことをする陣営」にも見えてくる。酷いかもしれないが事実である

 ここで、記事のタイトルにあった「価値観のすれ違い」が出てくる。人間を、世界を守るために傍観者でありながらも手段を選ばない預言者。
 彼らの行いは良くも悪くも世界へ大きな影響を与えた。

 大きな犠牲を消すために小さな犠牲を厭わない彼らの行為に対し、怒り、憎む者もいた。
 死後もなお彼らに利用される者もいた。
 彼らと違う方法で、世界を救おうとしたものもいた。

 価値観や主眼としている者の違いで起きる悲劇の連続が、今作の根幹にある。

 傍観者のスタンスを彼らは取っているように見えて、結局のところちょいちょい介入している。
 物語的にそうしなければ何も始まらないのだが、そういうところがどうにも、人間から逸脱しておきながら、どうにも人間らしさが抜けていないと感じる。

 彼らの心情が詳しく書かれたのが完結作に追加された2編というのも、こういった印象に拍車をかけている。
 それまでのパートで「悪魔のようなタイミングで現れる存在」「いきなり現れて警告1つ告げて去る奴」と、よく分からないやばいやつの印象を抱かせながら、「追討編」以降のノベルパートで一気に名前持ちを増やし、彼らの「人らしくも人でなし」の言動をプレイヤーに見せてくる

 そのあとで改めて今までのストーリーを見ると印象が変わってくるだろう。
 まぁ結局、大体「預言者」余計なことしやがってという感想にもなるが

 こちらのノベルパート、ゲーム内だけではなく公式サイトでも閲覧できるので、購入の際に世界観を確認したい人は是非どうぞ。(SPECIALページに収録)

「討伐者」で感じるフェチズム

 さて今シリーズ、堅実な内容をしているのでフェチズムがないかといわれるとそんなことはない
 歴代ボスには女性も含まれ、その肉体美を存分に披露しているし、主人公たる「討伐者」特に女性版では、モーション班を発狂させたというフェチズムに溢れた待機モーションが搭載されている。

マリシアス2

 一定時間放置していると「討伐者」は「灰の外套」を椅子に変化させて座る。男性アバターだと、ドカっと大きな一人用ソファに大股で座る。威厳のある座り方なので気になる人は購入するといい

マリシアス3

 また更に放置すると徐に無表情で足をブンブン振り始める。可愛い

マリシアス4

 さらに一定時間放置していると椅子に足をのせてうずくまり、

マリシアス5

 寝落ちする

 この辺りのモーションはかなりリテイクが入ったようで、先も言った通りモーション班、というかモーションモデルの女性が発狂しそうになったとかなんとか。

 グラフィックも一新され、コスチュームも増えているので、見た目での楽しみも増えている。興味がわいたのなら是非買おう

 またシリーズ通してフェチズムをより一層感じられるものとして、ダメージの回復後の「討伐者」の見た目だ。

 MALICIOUSでは敵のHP表示はあれど、自身のHP表示はない。
 一定量のダメージを受けると肉体が段々欠損していき、何度目かの大ダメージを受けるとゲームオーバーとなる。
 この時点で割と特殊性癖が入っている気もしなくもないが、これを受けて回復したあとの姿も拘りが入っている。

 先に述べた通り「討伐者」はオーラを消費して欠損した肉体を回復するのだが。
 なんと服は再生しない。なんでそんな仕様にしたのか「預言者」は。
 しかも部位欠損は四肢以外に右の下乳から腹部という部分もある。無論欠けた後に修復しても服は復活しない。なんでそんな仕様にしたんだ「預言者」は。

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 こちらが左腕欠損、両脚が修復された状態での立ち姿だ。(4Gamerの記事より引用)
 生足を惜しげもなくさらけ出しているえっちさと、左袖がふらふらと揺れ、傷口から数秘術が漏れていること、「討伐者」がそれらを気にも留めていないという雰囲気が、彼女が人形であることを示している。

 因みにこの仕様は男性版にも適応されている。きっちり脱げるので気になる人は買うように

まとめ

 MALICIOUSシリーズ。配信開始から今年で10年になる。
 完結作と銘打ったからには続編は出ないだろうが、他機種での展開が欲しいと思う今日この頃。
 堅実なボスアクション、ちょっとしたところに見えるフェチズム、補完要素としてしっかりまとまっているノベルパート。
 お値段以上の楽しさを味わえることは間違いないので、是非購入してほしい。

 ついでに「追討編」のランキングに載れるように頑張って欲しいな!

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