TremendousCircus 「ペトルーシュカ」の舞台上のシステムのこぼれ話など
去る2022年3月11日に配信オンリーで上演されました、TremendousCircus "CODE: RED2" ペトルーシュカが松戸StageVにて開催されました。
劇伴作曲家としては、TremendousCircusは俺のホームグラウンド。
今回も全曲書き下ろしで音楽監督やらせていただきました。
2022/3/25まではアーカイブ配信をやってるので、本編のネタバレはまだ避けときたいのと、各楽曲の個別の解説についてはサントラの方に入りますので、このnoteでは舞台上でのシステムについて、ちょいちょい喋ろうかと思います。
会場がいわゆる小劇場ではなく、ライブハウスでしたので、普通の演劇の構成とも、バンドマンがやるライブの構成ともちょっと違うものですから。
配信、面白いからアーカイブでもいいから見てくださいませ!
こちらからご覧になれます。
あと、この記事は長い上に、基本的に機材の話だから読むの疲れると思いますw
時間ある時に読んでください。
今回の使用システムっぷり
まず写真を見てもらった方がいいと思うのですが、
これですね。ちとわかりづらくて申し訳ないんですけど。
大まかにギター関連の機材と、音響出力用のノートPCを中心としたシステムの2つに分かれます。
ギター周りの構成とコンセプト
ギターでライブをした経験がおありの方なら
「あー、シンプルね。」
っていうくらいわかりやすいと思います。
ギター
↓
ワイヤレス(AKG WMS40セット)
↓
マルチエフェクター(Zoom G3n)
↓
アンプ(Fender Twin Reverb)
という構成ですね。
これはPCシステムも同じですが、とにかく設置面積を減らしたい!というのが第一目標です。
というのも、演劇の現場は演奏が主役ではありません。演技が主役です。
可能な限りコンパクトなシステムを組むことで、ステージ上の演技をするスペースを広く取る必要があります。
ギターのワイヤレスシステムのお話
まず、ワイヤレスなのですが、俺は普段ならLine6 Relay G30を使ってます。
ペダルボードに組み込んでパワーサプライで電源供給できるから好きなんですけど、今回は不採用。
というのも、今回はワイヤレスマイクが5本必要で、会場でレンタルさせてもらったんですけど、これが2.4GHz帯。
一応5本のワイヤレスマイクに1つのギターワイヤレスなら全部2.4GHz帯でも理論上電波は干渉しないはずなんですが、Wifiの電波も飛んでたとしたらちょっと干渉が怖いなぁ…。
以前ワイヤレスマイク4本にギターワイヤレス2本でライブハウスで演奏したときにちょっと回線の安定性が怪しい瞬間があったので、それじゃぁギターはB帯のワイヤレスも用意しとこう!
ということで買っておいたAKG WMS40を採用しました。
ただねぇ、当たり前といえば当たり前なんですけど、Line6 Relay G30と音が変わるんですよ。
単にRelayに耳が慣れてるのもあるんですが、WMS40の方が音が大人しいというかなんというか…。
ワイヤレス変えるだけなら、そこまで音作りに影響出ないかな?と思って、事前のスタジオリハーサルはRelay G30使ってたんですよね。
そしたら本番でピッキングの反応がなーんか違う。ちゃんと事前に同じ機材で確認して練習しないとだめですね(笑)
反省反省…。でもまぁやっぱりRelay30のほうが好きです。
あと、Relay30はレシーバーもコンパクトでペダルボードに入れやすいんですが、WMS40はレシーバーがでかい!仕方ないけどw
音にこだわるんならワイヤレスなんか使うな!という正論もあるんですが、設置面積を減らす上で、ケーブル本数も少ないに越したことはないんですよ。
自分のバンドでも、演劇の現場での演奏でも、事故を減らす観点からワイヤレスを使うことにしてます。
多人数が動き回るステージですからね。
安全に気を配るのも大事な仕事です。
エフェクターはマルチで良い。
実は本音を言えばエフェクターはマルチじゃなくてストンプを並べるほうが好きなんですよ。
でも、演劇の現場での演奏だとマルチエフェクターを使うことにしてます。
・設置面積をとにかく小さくしたい。
・演目によって弾くジャンルがどんどん変わるので、音をプリセットして保存しておいて、場面ごとに呼び出せる方がいい。
コンパクトエフェクターとスイッチャーでもいいんですが、やっぱり設置面積がデカくなるし機材の重量も重たくなっちゃうんですよ。
マルチエフェクターと言ってもフラッグシップクラスになるとデカいし重いんですが、機能面と物理面でバランスがいいのがZoom G3nかなと思ってます。お値段も安いし。
今回はG3nだけでやりましたけど、1つくらいなら手前にペダル追加しても、充分スペースに余裕は作れます。過去にオーバードライブとかファズを手前に設置したことはあります。
(Big Muffだけは実機じゃないとダメだった。)
音色の数があまり必要なければ、Zoom MS-50Gを使ってもいいですね。
そしてこの構成なら、最悪ギターアンプがなくても、ライン出力してミキサーに直接音を送る…なんて使い方もできますから、相当ミニマムな環境を構築できます。
(そりゃできればアンプ使えた方が良いに決まってるんですけど。)
Zoomは俺がギター始めたばっかりの頃から、低予算ながら一応使える機材を出してくれてて、それこそ中学生くらいの頃からZoomのマルチエフェクター使ったことあるんですけど。
昔のZoomはオーバードライブやディストーションがイマイチだったんですよねぇ。
ディレイとかリバーブとか、あとノイズゲートの質は昔から割と好きだったんですけどね。
それがMS-50G買ったあたりから、なんだよ!Zoomってばめっちゃ音良くなってるじゃん!ってなって。
今の機種は何の問題もないですね。現場で使えます。
Fender Twin Reverbが好きになった。
アンプは基本的にMarshall大好きなので、JCM2000でも、DSL100でも、JCM800でも、あればそれをレンタルして使ってることが殆どです。
…が、今回は使ってないです。
さらに設置面積を小さくするためです。
大体の場合Marshall以外の選択肢だとRoland JC-120が定番ですね。
変なクセもないですし、どこのスタジオにも大抵ありますから、狙った音作りをしやすいですし。
ところが、JC-120とFender Twin Reverbを並べてみると、実はTwin Reverbの方がほんの少し寸法が小さいんですよね。
よし、さらにコンパクトにするために今回はTwin Reverbだ!ということにしました。https://amzn.to/3i00eFX
で、本番の何日か前にスタジオ行ってレンタルしてきたら、これがなかなか良いんですよ!
外部エフェクターで歪みを作るにしても、やっぱりチューブアンプの方がロックギターらしい音になりますよねぇ。
ピックが弦にヒットしたときの「ガリっ!」っとした音だとか、ローミッドが分厚く出てくれたり。
やっぱり未だに真空管が有難がられてるのには理由があるよなぁと思います。
JC-120だと、予想通り狙い通りの音が作れるわけですが、今回に関してはTwin Reverbは期待の上をいく音を出してくれましたねぇ。
ジャンルによる向き不向きは出そうですが、今回かなり好きになりました。また使いたいな。
PCのシステムもコンパクトに!(課題あり)
続いてPC編なのですが、演劇の場合そもそもステージ上でBGMやSEの制御をすることは殆どありません。だって邪魔だもんw
PAブース側にシステムを組んで、音響オペレーターの方が操作するのが通常です。
ところがここはライブハウス。
ライブハウスのPAエンジニアさんに、いきなり台本とシステムを渡して「さぁ、やれ!」というわけにも行かないですし。
(やはり音響も演出との打ち合わせと稽古の上でやらないとどうにもならないので。)
かと言って、本公演と違って音響さんを雇ってもいない。
ステージ上には居ない劇団員のお任せするという方法もあるけど、他の役割があるわけで。そうなると、俺がやる以外に方法がないわけです。
とはいえ、音響出しするシステムのために、ただでさえ節約したいステージ上のスペースをさらに犠牲にするのか?!という問題もあったりで。
それなら俺はステージに上がらないで、今回も裏方でやろうか?という案もあったんですけどね。
結論としてはPCシステム可能な限り小型化してステージでギターの演奏と並行でオペをやるという方向に。
そこでキクタニのLT-500というスタンドを持ち込み、
小皿の方にiPadを設置して台本を表示。
大皿の方には、さらにキクタニのLT-100Bを設置。
上段にノートPC (ASUS FX505)を設置しつつ、下段にAKAI APC Miniを設置してAbleton Liveのフェーダーをコントロール
その空きスペースにPresonus Audiobox GOを設置して音声をステレオ出力!
可能な限りの小型化を図りました。
ひとつひとつの雑感を説明します。
キクタニのスタンド類
これもベストとは思いませんでしたが、現状では最適解だったとも思います。
ベストでないと思った理由は、これでも極限までスペースを減らせたんですが、それでも演者は減ったスペースを気にしながら演じてたよなぁ…という点。幸い事故は起こらなかったけど、演者のストレスは少ないに越したことはないですからね。
あと、安定性という意味では金属製でしっかり機材を支えられて良かったんですけど、まぁ金属製ですから、持ち運びは重たいですよねw
大体ライブハウスでこういうPC類を設置するときの定番って、キーボードスタンドに板を渡してその上にシステムを組むパターンが多いんですが、それよりは設置面積が少なく済んだのは間違いないです。
だから、ベストではないけど、現状の限界がここかなぁ。
AKAI APC Mini
これもベストではないけど、今はこれが最適解のパターンですね。
まず、小型軽量という点では申し分ないです。
USBバスパワーで動作するから、電源ケーブルも要らないですし。PCケースに一緒に入ります。
ただ、それと引き換えに操作性はちょっと難ありかなぁと思ってます。
主にAbleton Live上で再生しているトラックの音量をフェーダーでコントロールしてるんですけど、要するにミキサーのフェーダーなわけですよ。
その肝心要のフェーダーのクオリティがチープすぎるんですよ。おもちゃみたい。
トルクも軽いし、ストロークも短い。
しかも、本体のフェーダーに目盛りがついてない!
結局微妙な指の力加減で、狙った目盛りにフェーダーがスッと行かないから、へんに不自然な切り方するようになっちゃうんですよね。
画面上のフェーダーで数値を見るしかないので。
結局この辺がしっくりこないので、オーディオインターフェースでパラアウトできるようにして、外部のDJミキサーに出力して、そっちで制御したほうがよっぽどラクです。
同じくAKAIのAPC40の初代モデルがあるんですが、これだもフェーダーのトルクもストロークもずーっと良いです。これならDJミキサーいりません。
ただ、一気に巨大化するんですよw
設置面積を節約したい今回はちょっと無理。
そんなこんなでAPC Miniも、今回はいいけど毎回のベストではないよねぇ…と思ってます。
Presonus Audiobox GOは大正解!
オーディオインターフェースは今回のAudiobox Goには大満足でした。
小さい!軽い!USBバスパワー駆動!
音質もとりあえず及第点です。使えます。
パラアウトがいらない現場だと、これ以上の選択肢はないかもしれません。
本音を言えばBGMとSEはパラアウトで分けて出力する方がいろいろ便利なのですが、今回はもう割り切って2mixで行こう!と。
結論から言えば今回の規模のオペなら問題なかったですね。
どのみち俺がステージにいる以上、PAのメインミキサーまで触れないですから。2mixで問題無いように仕込んだ方が良かったケースです。
パラアウトが必要か現場だと、ESI Gigaport eXあたりがコンパクトで良さげですね。
試したことないけど、ちょっと欲しいな。
自宅の作曲録音用だとMOTU Ultralite AVBを使ってるんですけど、あれもサイズ感と重量感は許せるレベルで、音質も申し分ないんですが…自宅でいろいろルーティングして組んでるから、あんまり持ち出したくないのw
ともあれ、Audiobox GOは作曲業務的には今後すげぇ活躍してくれそうです。
iPad Proと直結できますからねぇ。
そしたら、考えうる限り最高にミニマムで便利な作曲録音環境になりますよ。
マイクプリの質までチェックできてないのでアレですけど、割り切ったデモ制作だと十分な気がする。
ノートPCが一番体力を奪っている。
前述の通り、ASUS FX505DTを16GBメモリ搭載して使ってるんですが…スペック的にはまぁいいです。この規模の舞台音響のオペを果たすスペックはあります。
ただ、ここまで語ってきた機材の中で、こいつが一番重量が重たいんですよ(笑)
もう、稽古期間中はこれらのシステムを毎日持ち歩いてたから、体力をゴリゴリ奪われました。
俺は昔からMacユーザーで、かつてはMacbookも何台か使ってたんですけど、壊れたりなんなり代替わりして、今はノートはこのASUSのやつなんですね。
俺、わかりました。Macってなにかと薄いし軽いんですよ。そこが偉大なんですよw
今使ってるDAWにしろプラグインにしろ、周辺のハードウェアにしろ、MacでもWindowsでも同じものが使えるので、どうしてもMacでなければいけないという理由はないんですが。
(コスパならWindows機の方が良いしね。)
これはもう、次買い換えたら確実にMacbookにすると思います。
もう若くないから少しでも軽量化したいんです(笑)
最後にボヤキ。
ペトルーシュカはロシアを舞台にした演目です。このご時世にですよ。
今回のTremendousCircus版のペトルーシュカは、こんな感じのシステムで上演したんですが、FenderやPresonusはアメリカのブランドですし、ASUSは台湾のブランド。AKAIやZOOMは日本のブランドですし、AKGはオーストリアです。
PCの内部ではAbleton Liveが動いてるんですが、これはドイツのブランドです。
他にも衣装はアジア諸国で作られてるものが多いですし、原料レベルまで掘り下げたら、きっとさらに多くの国々から来ているんだと思います。
なにかを創るのって、一人では何もできないわけで、この演目も世界中の色んな人達やいろんな技術が直接的にも間接的にも関わって完成してるんです。
どれが欠けてもだめです。
そんな事実を再確認するだけでも、やっぱり戦争なんかしちゃいけないし、平和であるための努力を続けないといけないんだよなぁって思います。
とりあえずペトルーシュカは、後日サントラが発売されますので、その時にもうちょっとお話する機会を儲けようと思います。よろしくね!
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