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劇団桜舞「天狗の義」楽曲提供のこぼれ話など

去る2022/1/13〜17 武蔵野芸能劇場にて上演されました、劇団桜舞「天狗の義」に楽曲提供をさせていただきました。
主催のK's Link様のご厚意で、作曲サンプルとして楽曲をダイジェストで公開させていただけることになりましたので、動画にしてみました。これです。

俺としては珍しい、TremendousCircusではない舞台への作曲だったわけですが、トレメンドスの場合はサントラがあって、その中に楽曲解説を封入してるんですよね。今回はそういったものがないので、noteで少しだけこぼれ話でも。

和風テイストをどのくらい盛り込むか問題

生来の天の邪鬼気質なもので、日本の歴史モノだからといって素直に思いっきり和のテイストを全開にするのも芸がないかなぁ???
むしろ思いっきりシンセをビキビキ鳴らしてテクノよりにしてしまっても面白いかも!
という気持ちもあって、そのバランスをどのくらい取ろうかというのが結構考えたというか悩んだというか。

時系列でいうと、後から書かれたものほど和楽器に重心を持っていてます。
比較的先に書かれた群狼」(新選組の羽織姿になるシーン)は、本作でも全然シンセ使いまくりなのが顕著ですね。
中盤から尺八がメロディを担当するんですが、実はあれも初期のバージョンではシンセで同じメロディを弾いてました。
尺八に音を差し替えても、その後ろで、ビヨンビヨン言ってるシンセがなってるのは、「初期の試行錯誤」の名残ですね。
ビヨンビヨンいってたシンセは、この赤い子です。
Behringer TD-3 (Roland TB-303のクローン)です。

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逆に、一番最後に作曲した岡田以蔵のテーマは、和楽器が中心!という意識がわりと強いです。まぁ、最後の作曲のつもりで、好き放題ギター弾きましたけどね(笑)

遊女ガールズのダンス曲もそうですね。
その1その2の順番に書いてるので、その1の方がシンセが強めです。
その1のシンセ/和楽器のバランス感が俺本人は気に入ってます。
その2の方が終盤なので、儚さを出そうとするとやっぱり和楽器が美しいですよねぇ。

和楽器の音源があんまりない問題

和楽器に限ったことではないんですが、今回俺が実際に演奏して録音してる楽器はギターだけで、後はいわゆるサンプラー音源。要するにパソコンのアプリやシンセサイザーで作ってるわけです。
バイオリンしかり、トロンボーンしかり、ドラムしかり。今回はベースも本物は弾かずにMODO BASSという音源を使ってます。

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こういう時に西洋楽器はいくらでも音源の選択肢があるんですよ。
だから実際にオーケストラを雇えなくても、まぁまぁそれっぽい感じには仕上がるわけです。
一方で、和楽器となると、なかなか種類がない!

劇伴作品では、よくEastwest社のサンプリング音源を使ってるんですが、和楽器は Eastwest Quantum Leap RA というライブラリを使ってます。
このライブラリ、音は結構良い感じなのですが、いかんせん和楽器の種類がさほど多くない!

三味線、尺八、琴…以上!
え、3つしかないのかよ!
琵琶はないのか、琵琶は…いや違う!中国の琵琶じゃなくって、薩摩琵琶とか筑前琵琶とかああいうのだよ!!

これがないんですねぇ…。この際だから琵琶は買って自力で弾けばいいんじゃないのか?!俺ギター弾けるんだから、なんとかなるだろ!(無謀)
と思って探してはみたものの、そもそも和楽器は西洋楽器に比べて普及率も決して高くないわけです。要するにお値段が高いんですよ。
流石に40万円は手が届かないよ…。

てなわけで、琵琶っぽいを再現するために、同じくQuantum Leap RAに収録されていたウードという中東の楽器の音色で代用しました。
(琵琶はないのに、ウードはあるんだ…。)
あと、ピッコロ、フルート、クラリネット、オーボエは、他の音に混ざれば和楽器のフリをしてくれることがよくわかりました。木管楽器は偉大だなぁ。
特にピッコロは相当使ってますね。

音階とかメロディの組み立て方で和テイストをしっかり出せれば、音色のチョイスは工夫しだいでなんとかなるなぁ…。ということですね。
この辺は理論的な話をしようと思えばいくらでもできるんだけど、それはまたいずれ。

実はギターは原点回帰していた。

今回使用したギターですが、Ibanez K-7改です。

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もう20年くらい使ってる、俺のギターの中でも最も付き合いが長いギターなんですが、実は劇伴で使うことが滅多にありません。
7弦ギターで、1音下げチューニングの完全低音重視セッティングに、超高出力のアクティブピックアップ搭載で、性能がピーキーすぎて汎用性がないんですなにやっても過激な音になります。

なので、俺の率いるバンド2Bulletの正式採用ギターとしては非常に良いのですが、様々なジャンルを求められる劇伴にはあんまり向いてないんですよ。
せっかくだから、2Bulletでも聴いてくれ↓

多分劇伴で使ったのはTremendousCircusの青髭のサントラとか、すごく限られてるんですよね。

で、これは天狗の義が終わってしばらくして気づいたんですけど、今回の天狗の義のドラムとギターのコンビネーションが、ちょっと青髭っぽいんですよ。

多分それはこのギターが一番生きる曲が、こういう感じだからなんでしょうねぇ。
俺にとっては一番長く付き合ってきたギターとともに原点回帰した気分です。

最後に

非常に良い経験をさせていただきました。
何がいいって、芹沢鴨が主役なんですよ?!
歴史のヒールは果たして本当にヒールだったのかという、歴史ファンとしては心躍る題材でしたし、義と白刃の幕末ですから。
そりゃ面白くないはずがないんですよ。

俺も初日の舞台は客席で拝見したんですが…もう、ずっと自分の中に眠っている熱い何かに燃料を投下された思いでした。

またこういったお仕事をさせてもらいたいなぁって思う一方で…

…俺、こういう曲も全然行けるんじゃん!と妙に得意になっております(笑)

あ!そうそう、天狗の義はDVDも発売されるんですって!
ぜひ予約してくださいね!

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