Present BOX

一昨々日に久々に本屋に行ってみた。何も気にせずカゴに本をドサドサ入れていくと余裕で一万円を越えてしまったので泣く泣く本を選別し、五千円代で収まるように調整した結果漫画本ばかりになってしまった。「ウスズミの果て」「児玉まりあ文学集成1~3」「雷雷雷」「よふかしのうた18」あと唯一の小説「名称未設定ファイル」ほんの数日で全て読み尽くしてしまった。「名称未設定ファイル」に関してはショートショートという性質もあるかもしれないが一日で読みきってしまった。日頃鍛えている衒学的仕草に拍車をかけんと、小難しい本を首をかしげてめくっていると数ページ読むのに数十分というのがざらにある私にとっては久々の感覚だった。やはり小説は良い。物凄く良い意味で文が軽い。重さに押し潰されてギイギイ声を上げている私にとって、スルスルと文章が頭に入ってくる感覚は自身を取り戻させてくれた。また文学の根本的な面白味を思い出させてくれたような気がする。まぁだからといってなんてことはないけれど。
 漫画の単行本をシュリンクから解放する瞬間のワクワクはプレゼントのそれと同じだと思った。自分で自分に買っているのに。クリスマスシーズンだからって訳じゃないけれど、赤と緑で彩られがちなそれを思い出した。本の匂いを嗅ぐのが好きだな。古本屋のとはまた違う、新刊図書の匂い。なんでも新品は好きだ。自分の手元に来るまでの過程でかけられた呪いもなく、キラキラフレッシュといった具合で、本に限って言えば手にして捲る紙の弾力も若々しい気がする。
 昔から本を踏んだり邪険に扱うとよく叱られた。その影響かわからないけれど本というのはそれ以外の物質とは違う価値感があるように思う。また人は言葉だという。出来の悪い私にはその発言の本質があまり理解できていないが、パースが言うのだからそうなのだろう。ならその文字情報が羅列されている本というのはあまり人とは違わない。だから人を大切にするように本を大切に扱うし、逆説的に本を大切に扱う人は人を大切にできるのだと思った。シュリンクを剥ぎとり匂いを嗅ぎ、隅々まで穴が空くほど読んだ後、そのあと、どうしていただろう。スカイスクレイパーよろしく生活空間を削り取ってくる本の山を、先ずは巻数順に並べることから始めてみる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?