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空っぽのコーヒーカップと潜行三千里

買った本の重さのことはすっかり忘れて、重たい本を10冊も買ってしまった。その足で入った喫茶店の椅子から立ち上がるのは、何よりも難しかった。
しばらく、空っぽのコーヒーカップをじっと見ていた。

欲しかった本は6冊一纏めになっている、桃源社から出ている世界異端文学というシリーズだった。

これが荻窪の古書ワルツにあるというのが日本の古本屋というサイト(このサイトめっちゃ素敵なのですよ)でわかったので行ってみたのだった。

その前に、新宿の京王デパートで最終日だった大九州展で練乳が入ったサニーパンを買いに行ったらまさかの17時終了で、目的を果たせず泣く泣くその場を後にしたので、古書ワルツでは絶対にゲットしなくちゃと、結構意気込んでた。

お店の人に在庫を聞いてみたなら、二つあったうちの一つの在庫がすでに売れていて、残った片方を無事に買えた。売り切れていなくて良かった。

そのあとも本棚を物色して更に4冊、ついつい買ってしまったのだった。


いま読んでいるのは、年明けに買った本で、ちょっと驚かれるような気もするのだけど、辻政信という人が書いた、潜行三千里という本。

太平洋戦争の時のあらゆる作戦を作った張本人で、終戦時にタイから日本へ戻ることなく(戦犯だから帰れば恐らく絞首刑)、僧侶などに扮してタイ、ラオス、ベトナムを経て中国に渡り潜行したという本人によるその道中の述懐。

しかもその旅の後に日本に帰り、潜行三千里がベストセラーになり、政治家に転身。さらにその後にラオスで失踪。

そんなとんでもない人が居たらしい。

読んでいて面白いのは、数年前にわたしが旅した、タイ、ラオス、昆明というルートとかなり近いルートで潜行しているから、地名がなんだか懐かしいのだ。しかしこの時代のこの環境下での身分を偽装しての長旅、凄まじいものがある。
善とか悪とか飛び越えて、(いや、太平洋戦争でいったい何人の人間を死に追いやったかと考えればその答えは自明なんだけど)この人、怪物だな、というただそれに尽きてしまうような、、気もする。

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