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アルペジオーネという謎の楽器を買った話

開幕手前味噌で恐縮だがこの前演奏動画を作った。

このサムネにも使った謎の楽器"アルペジオーネ"の話をしていく。

アルペジオーネって何?

そもそもアルペジオーネ(Arpeggione)とは何なのか?

以下、wikipediaの引用
・1823年から1824年にウィーンのギター製造者ヨハン・ゲオルク・シュタウファーにより発明された、6弦の弦楽器である。

アルペジオーネ

・弓で演奏するが、チェロを小ぶりにしたような本体のために重音を出すことが容易であり、また24のフレットを持つなど、ギターの特徴も併せ持つ。
・有名な楽曲は、シューベルトの《アルペジョーネ・ソナタ イ短調》
・上記曲は1824年の作品だが、1871年になってようやく出版された時には、すでにアルペジョーネは忘れられた楽器になっていた。

~引用終わり~

簡単に言うと「弓で弾くギターのようなもの」だが、「立てて弓で弾く」という性質上「フレットをつけたチェロ」にも見える不思議な楽器である。
引用の通り、50年にも満たない期間で忘れられた楽器なので情報はおろか、持っている人も知っている人も少ない悲しい楽器でもある。

びわのアルペジオーネは?

一方、びわのアルペジオーネがこちら

隣のギターはスペイン製テレキャスもどき

チェロを小ぶりにしたような本体……ではないが実はこれ、エレクトリックのアルペジオーネである。エレキヴァイオリン、エレキチェロ等で検索すると分かるがエレクトリックな擦弦楽器には生音を小さくする、ハウリングを防止する、持ち運びを楽にするといった理由で元々のふくよかなボディを削って棒状、もしくは外枠だけ残したものが多い。ギタリストにはヤマハの「サイレントギター」が想像しやすいかもしれない。びわのアルペジオーネもその傾向にのっとり(?)、最低限の材と黒いスタンドで構成されているためシャープなシルエットになっている。

「こんな楽器、楽器屋で売ってるのか?」というと売ってなくて、"Reverb(楽器売買専門のオンラインマーケット。楽器店、メーカ、個人問わず世界中の人と取引できる)"でイギリスのアルペジオーネ愛好家から買った。どうもアルペジオーネが好きすぎて自分で作って弾いて売っているらしく、Reverbには何点かのアルペジオーネ、YouTubeには演奏や製作の様子がアップされてる。

なんかアイリッシュな感じ(小並感)。
エフェクターも使うことでヴァイオリン、チェロ、ギター、ベースの4種が同居したような多彩さを感じる。

どうして買ったの?

なぜアルペジオーネを買ったかと言えば理由は2つ。

 1. 変わったギター、楽器が欲しい
 2. ギターの元の音を自分の意志で操りたい

1. 変わったギター、楽器が欲しい

びわは変な楽器が好きである。ギターを始めてから色々なタイプのギターを買っては売ってを繰り返してきたが、ストラトやレスポールといったスタンダードな仕様のギターを買ったことがあまりない(厳密にはストラトは買ったことあるがハードテイル仕様だった)。ヘッドレス、8弦、ネックが長いギター等々、変わった見た目に惚れることもあれば、欲しい仕様を追求したら変わり者しかなかったこともあった。

去年の8月くらいの所持ギター

そんなびわが「立てて弓で弾くギターのようなもの」に興味を惹かれないわけがない(?)。Reverb徘徊中に「アルペジオーネ? 初めて聞いたけど面白そうやん!」と思うのも自然だった。

2. ギターの元の音を自分の意志で操りたい

ギターは"撥弦楽器”という分類の楽器である。弦をはじいて音を出す性質からピアノともトランペットとも違う撥弦楽器特有の出音(弦と指、ピックが当たった音+弦振動で出る音)はなによりの特徴だと思うし、奏法や機材の多彩さもあり多くの音色を得てきたと思う。
ただし、撥弦楽器は自分がはじいた後の音を自由にコントロールできないというデメリットもある。同じ音量で一定時間伸ばす、一息で音の強弱を変えながら吹く、といった表現はアコースティックの撥弦楽器では難しい事である。エレクトリックであれば手元のボリュームをいじる、フィードバックを使う、といった機材と組み合わせて音量、音価をコントロールすることもできるが、はじいた弦の音というより電気的に増幅した後の音なので若干趣旨とそれる。
そこで"擦弦楽器"、弦をこすって音を出す楽器である。ヴァイオリンやコントラバス、二胡等の弓を使った楽器が該当するが弓の端から端までなら切れ目のない音で音量や音化を自分の意志でコントロールできるのは撥弦楽器では得られない効果だと思う。
「じゃあギターを弓で弾けば解決するのでは?」というとそう上手くいかない。ギターには指版ラディアスが大きいor小さいギター、指版が弧状になっていることで弦高が横一列にならないものがあるが、ヴァイオリンなどの楽器は弓で弾いた際に隣の弦に触れないようギターの比にならないくらい指版ラディアスが大きくなっている。また、端の弦を弾いてるときに弓がボディに当たらないようボディがくびれている、駒(ブリッジ)の背が高いのもポイントでギターの場合は弓の角度が付けられてもボディと干渉する可能性が高い。

びわのアルペジオーネを下から撮ったもの

ではアルペジオーネはというと、弓で弾く前提の設計(指版ラディアスが大きい、ボディがくびれている、駒(ブリッジ)の背が高いということでギターを弓で弾く上での問題をほとんど解決しているのだ。ヴァイオリンと違いフレットもついておりチューニングもギターと一緒。一時期はギターに音域が近いチェロをやろうかとも考えていたが「色々覚えること多そうだなぁ……」と断念したびわにとってはギターとの共通点が多いアルペジオーネはとっつきやすい楽器だった。

そして購入

そんなこんなあり異国の職人が作った未体験の楽器を買うに至った。ちなみにボーナスは全てこいつに消えた。
他にも購入したもの、届いたアルペジオーネの印象、弾いた感想等も書きたいところだが長くなってきたので続きは別枠で書こうと思う。目にする機会があったらまた読んでもらえると嬉しい。

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