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ニコラス の ゲーム


『 ゲーム 』 (1997年)

 評論家の宮崎哲弥氏は自身の著書の中で、この映画『ゲーム』を「自己啓発セミナーのプログラムの映画化でこの作品は自己啓発セミナーでの人格改造の過程を映像化したものだ」と言っております。

 大富豪だった父の財産を引き継いだ実業家・ニコラスは、父親が自殺した年齢である48歳の誕生日を迎える。彼は離婚した妻にも冷たく周囲に対しても心を開かない孤独な人間です。

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 そんなニコラスが、謎の“ゲーム”に参加し酷い目に遭うのですが、その“ゲーム”そのものが実は人格の再構築(リボーン)を目的とした大掛かりな心理療法だったというわけです。

映画の中盤でニコラスは薬を盛られ、目覚めるとそこは柩の中。そしてニコラスは墓から蘇りまさに“復活”するのです。ここ大爆笑シーン。ニコラス、生まれ変りの図。

 そこから映画前半の受身一辺倒で“ゲーム”に振り回されっぱなしだったニコラスが、後半 売って変わり自らの意志と行動で謎を解き明かそうとしていきます。銃も持った事がなかったニコラスが逆に強盗に対して銃を向け脅したりしちゃいます。確実に自分の何かが変わってきたニコラス。

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 クライマックス何が大切なのか知ったニコラス、と同時にそれを失ってしまったニコラスは絶望し自殺、ビルから飛び降りるニコラス 子供の頃の記憶 父もまた全てを失い自殺したと知る、空から舞い降りるニコラス 着地ポイントの×(クロス十字架)が書かれたマットにドスン。

観客の拍手「おめでとう おめでとう 」「ありがとう」 人格再構築の完成終~了パチパチパチ。

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“俺はメキシコで薬を飲まされ死んでた それで得たものはこのクソTシャツだ”

(主人公“ニコラス”という名前は聖人ニコラオスから来ています。なんでも聖人ニコラオスは弱者や貧しい人にお金を配ってたらしいよ。ニコラスもそういう人になれるといいよね。当初ショーン・ペン演じてたニコラスの弟役はジョディ・フォスターだったらしく、それって「羊たちの沈黙」でカウンセリング済みの“クラリス”役じゃねーの?と勘ぐってしまいます。)

映画のラスト、“ゲーム”で知り合ったクリスティーンがタクシーに乗り込もうとする所をデートに誘うニコラス。何とかオーケーをもらいますがそこで、ふと気づいたかのように辺りを見渡すニコラス。ひょっとしてこれまだ“ゲーム”?とオチが着きます。

私も時々、生きてて今“ゲーム”?って思うときあるわ。

エンディング曲はジェファーソン・エアプレイン「ホワイト・ラビット」

ウサギを追ってアリスが穴に落ち不思議な国の体験をする「不思議の国のアリス」のお話まんまの歌詞。

ニコラスのおっさんはアリスだったのね…。

ではまた。

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