形而上的ダッチワイフだっちゃ
ラムちゃんとあたるの複雑な恋愛感情について考えたい。ここのところ毎週欠かさず偶然観てしまっている令和版うる星やつら。昭和版の放送時、自分はまだ小学生くらいだった。その時は抱かなかったこの二人の複雑な恋愛感情に対する疑問について改めて考察してみたいのだ。
第一話を観た人ならご存知かと思うが最初二人は敵同士で鬼ごっこの鬼と子の関係だった。ちなみにラムが逃げる子役、あたるが追いかける鬼役という属性が入れ替わっている所がミソだ。
ある日突然地球侵略に来た宇宙人、鬼族。圧倒的な科学力を誇る彼らが地球人への勝負として提示したゲームが鬼ごっこだった。空を飛び電撃を操ることができるラムをもし捕まえることができれば地球侵略を諦めるというのだ。その鬼役として地球代表に選ばれたのが女たらしの高校生あたるだった。そしてこの無謀な挑戦を成功させるために当時のガールフレンドしのぶはもしラムを捕まえることができたらそのご褒美に結婚してあげると宣言したのだ。
結婚というニンジンをぶら下げられたあたるは懸命にラムを追いかけながらうわごとのように結婚結婚結婚と叫んでいた。そして対決の期日ギリギリになんとかラムを捕まえることに成功したあたる。捕まえる直前まで結婚結婚結婚と叫んでいたためそれをラムが自分への求婚だと勘違いして二人の同棲生活が始まったのである。荒唐無稽甚だしいがこれが漫画でありファンタジーなんだからしょうがない。
こうした経緯であたるは女好きでありながらもラムの愛情を素直に受け入れることができない、という設定なのである。
その後の二人の関係性が興味深い。身体面では電撃を操るラムのかかあ天下となるのだが、精神面においては一方的にラムから好かれるあたるが優位となり、亭主関白的なのである。この複雑な関係性がストーリーを奥深く単なるラブコメとは一線を画す構造になっている。こうした高橋留美子の独自の世界観設定やストーリーテリング力の高さには感嘆の念を禁じ得ない。
この二つの側面により形勢が激しく交互に入れ替わりながら個性的な脇役達も相まって物語は毎回混沌としたクライマックスへと昇り詰めていく。
冒頭で示した鬼ごっこにおける属性の入れ替わりが示唆するように女が力を男が愛を手にした世界線、男女平等かまびすしい令和ではもはや珍しくもなんともないが、単なるドS女子とドM男子という資本主義的な需要と供給が相殺されたこの恋愛愛憎劇の有り様は今世においても十分に有効だと言える。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?