続³・心所
※心王・心所をご存知でない方は、宜しければ
2020年6月20・21日「心」「続・心」心の概要と大まかな分類、
22日「心所」五遍行・五別境について、
23日「続・心所」十一善について、
24日「続²・心所」六煩悩について、をご覧下さい。
心所の更²に続きである。
『大乗阿毘(だいじょうあび)達磨集論(だつましゅうろん)』無着(むじゃく)/アサンガ著で説かれている、五十一種の心所より、今回は根元の煩悩より派生して起こった二十の煩悩(二十の付随的煩悩)を紹介する。
二十随煩悩(にじゅうずいぼんのう):二十の付随的煩悩
煩悩は数えきれないほどあるが、解り易い特定の様相で二十に分けてある。
経典には八万四千の煩悩の対処が八万四千載っている。
煩悩同様、全てが概念作用である。
※これに含まれなくとも、快くない思考(不安・恐怖・焦り等)は、取り除いた方が幸せになれる。
①忿(ふん):怒り
瞋の類。
望みどおりにならず腹が立つ。
怒りによって、物理的・身体的に対象を傷つけようとする。殴る蹴るの動機。
②恨(こん):恨み
瞋の類。
怒りを心にとどめて、後に対象を害そうとする。
常に心に怒りを保持し続けるので、精神衛生的にも大変良くない心理作用。
「怒るのはしょうがないが、恨みに思うな」とよく言われる。
③悩(のう):「悩み」と書くが、悪口の動機
瞋の類。
罪悪を好む。怒りによって、言葉で対象を傷つけようとする。
悪口雑言の原因であるが、にっこり笑って嫌味を場合にも当てはまるか。
④害(がい):加害心
瞋の類。
慈悲の反対。慈悲は苦しみから対象を助け出したいと思う心理作用。その反対は対象を苦しませたいと思う心理作用。
⑤嫉(しつ):嫉妬
瞋の類。
他者の優れた性質が許せない。
自分にもある程度優れた部分があり、他者にも優れた部分がある時に生じる。
⑥慳(けん):吝嗇、けち
貪(欲)の類。
自らの所有する優れたものごとに執着し、手放したくない。
⑦憍(きょう):驕り、思い上がり
貪の類。
自らを実際より優れていると思い昂る。
⑧覆(ふく):隠蔽
愚痴の類。
自らの罪を覆い隠す。
⑨誑(おう):偽り
貪と愚痴の類。
自分が優れているように、偽って偉く見せる。
⑩諂(てん):諂い(へつらい)
貪と愚痴の類。
何かを求めて、相手の気に入るようにふるまう。
諂と誑は、第一禅定(色界/天界)にもあると言われる。
第一禅定は梵天の属する天界である。三つの階層に分かれ、最高部の大梵天が下部の梵天達を創造したとされる。なので、梵天衆は大梵天を創造主としてあがめている。
ある時、釈尊が大梵天と共にいた。梵天の眷属(取り巻き)が、大梵天に難しい質問(質問内容ははっきり覚えていない。ごめんなさい。🙇)をした。
大梵天は答えを知らなかった。そしてこう言った。
「私は梵天だぞ。梵天の中でも大梵天だぞ。」
聞いた梵天衆はこう思うだろう。『大梵天さまは勿論御存知なのだ。』
この大梵天には、他者に自らを偉く見せようとする誑と、自らの取り巻きに敬ってもらおうとする諂があったと言われる。
因みに、釈尊はその質問にしっかり返答した。
⑪無慚(むざん)
三毒(貪・瞋・愚痴)全て。
自身が持つ理由から悪行を慎まない。
『私は人間だけど人間性など気にしない(で悪いことをしてもよい)』と思う等。
⑫無愧(むき):無恥
三毒(貪・瞋・愚痴)全て。
他者を考慮して悪行を慎まない。
『他人様は見てるけど気にしない(で悪いことをしてもよい)』と思う等。
⑬不信(ふしん)
愚痴の類。
信頼すべきものを信じない。
⑭懈怠(けだい): 怠惰
愚痴の類。
面倒くさい。先延ばしにする怠け心。
⑴先延ばしにする怠惰(明日やろう。来週やろう。の類)、⑵善くない行いに勤しむ怠惰(修行をせず、商売や娯楽に精を出す怠惰)、⑶気弱な怠惰(仏陀の境地なんて素晴らし過ぎて私には絶対無理だから、修行なんてしない。の類)の三種がある。
⑮放逸(ほういつ)
三毒(貪・瞋・愚痴)、または貪と愚痴の類。
悪い方向に心を散逸させる。
煩悩のおもむくまま行動し、善に励まぬ心理作用。
⑯失念(しつねん):忘却
忘れる。煩悩とともにある念(五別境の一)と言われる。
自分が戒律等を持っていることを忘れていたり、瞑想する時に瞑想対象を留めておけない。以前習ったことを覚えていない等。
⑰昏沈(こんじん):沈鬱
愚痴の類。
心が重く沈み込み、はっきりとしない。眠りかけているような状態。
瞑想時の沈み込みの程度が重い状態。
⑱掉挙(じょうこ):昂り
貪の類。
欲望の対象に心を向け続ける。気が散る。連想を止められず、ハイになって考え続ける。瞑想時の障害になる。
⑲不正知(ふしょうち)
愚痴の類。
自心が正しく働いているかどうか、注意を向けていない。
⑳散乱(さんらん)
三毒(貪・瞋・愚痴)全てに関わる。
心が不安定で、集中できない。気を散らせる心理作用。
あと一回、四不定(善にも不善にも定まらない四種の心理作用)で終了。
明日は最終回!
つづく。
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