祈る方法

昨日、祈ることを勧めたけれど、補足があるので今日記す。

普段わたし達が祈る時、
「・・・・・になりますように。」
と祈るのではないだろうか。

例えば、
「全ての生きものが幸せになりますように。」
「全ての生きものが苦しみから解放されますように。」
というように。

これを、
「全ての生きものが幸せで嬉しい。ありがとう。」や、
「全ての生きものが、苦しみから解放されて嬉しい。ありがとう。」
というように、祈る時のイメージングを変えることが必要だと思う。

先日の世界同時瞑想では、光によって良い方向に(既に)変化した世界を視覚化して、感じることが行われた。
これが「祈り」に似ていると、筆者が感じたものである。
望む結果に自分をおいて、その意識経験で、結果を引き寄せるというものだ。

今までの多くの祈り方では、
『全ての生きものは幸せではないから、幸せになりますように。』とか、
『全ての生きものは苦しいから、苦しみから解放されますように。』というように、
自分が経験している現実を『幸せではない』『苦しい』という前提で祈る。
それが現実なのだから、当たり前と言えば当たり前のことだ。

しかし、今手元に無くて、欠乏感を感じている「幸せ」や「苦しみからの解放」を何度も欲しがってしまうと、

「幸せではではない状態で幸せを望む」
「苦しみの中で苦しみからの解放を望む」
という心の経験を、何度も積み重ねることになる。

心というものは、経験を積み重ねて染みついていく心の方向に、自然に流されるものなので、「幸せではない・・・」「苦しみの・・・」と何度も考えていると、
そちらの方を覚えてしまって、それと同じ状況に自身を連れていく。
結果、幸せではない、苦しい状態に自分が留まることになる。

以前、もう亡くなられた高名なラマがおっしゃっていたことを思い出す。
当時、良かれと思って為したことが更に高位のラマの怒りに触れて、しばらくの自粛。許されて自粛開けの法話会で、自分が間違っていたことをはっきりとおっしゃられた後で、
「これについては、考えないようにすることが良い。心というものは、何度も考えれば考えるほど、癖がついて強くなる。」
と言われた。

他の先生からも、
「嫌いな相手を考えれば考えるほど嫌いになるだろう?
それも修習(瞑想)と同じだ。悪い方向に慣れることも、方向が違うだけで、心の働き方は同じ。」
と聞いた。

『なるほど納得』と思ったので、十年以上たった今でもよく覚えているのだが、それを応用すれば、                       今まで通りの祈り方では、より良くしようと思って祈っているのに、負のループに陥ってしまう。

普段、信仰の教えの場では、このことについて話されることはない。
清貧や苦しみの中で精進することで、福徳を多く積むことができるからかもしれない。

でもより高度な教えになって来ると、
(修行する許可を得てからではあるが)
空性で全てを浄化した後、自身を仏や菩薩であると信じて修行する方法もある。

これは、結果は、結果と同種の原因から生じるという理論から導き出された方法で、
稲の種から稲が生え、大豆からは大豆の芽が出るのと同じことである。

そう考えると、
「全ての生きものが幸せで嬉しい。ありがとう。」や、
「全ての生きものが、苦しみから解放されて嬉しい。ありがとう。」
と結果が既に起こったように可視化して、
その中で嬉しさや感謝の気持ちを経験すれば、

更にそれを何度も何度も繰り返せば、
心の経験が積み重なって、それと同種の結果を経験するように、心が動いていく。

仏教とほとんど関係無さそうな話題でこれを知った時、とても興味深いと思ったけれど、
心の働き方を考えてみれば、理に適っている。

顕在意識と潜在意識で望みが違う場合は、顕在意識で祈った通りにものごとは進まないかもしれないが、
心の根底に隠れた傷が癒されれば、心というものは、自然に光の方向へ向いていく。

これも、「わたし」を感じる限り、
「わたし」が存続するに好ましい「幸せ」を望み、
「わたし」が傷つけられる「苦しみ」を望まないー離れようとすることは、
普遍的なことだからだ。

全ての生きものが幸せであるようにと祈る時、
悲しみの中で祈るのではなく、
幸せが実現した中に自分もいて、
感謝を感じながら「祈り」というイメージングをしてみよう。

「わたし」も全ての生きものの一部なのだから。



DECHEN
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