オセロのような経量

仏教哲学の学派は、主に四学派に分けられるけれど
(毘婆沙部(びばしゃぶ)・経量部(きょうりょうぶ)・唯識派(ゆいしきは)・中(ちゅう)観派(がんは))、
その中でも考え方が解りやすいのは経量部である。

ものごとの成り立ちを説明する時、白黒のオセロのコマのように、はっきりと分けて説明するからである。

なので、始めて問答を習う時には、経量部の説明を基礎にして、問答を始める。

先ず、「無我」である。
「無我」には、「有」も「無」も含まれるので、範囲が一番広い。
有っても無くても無我である。

「無我」のうち、「無」は分けようがないので、そのまま「無」である。
「無」の例として、ウサギの角や、ロバの角や、虚空の花や、亀の毛や、石女の子などがある(時々、毛の生えている亀はいるらしいが・・・)。

「無我」のなかで、「有」は色々に分けられるが、
その前に「有」と同じ範囲を持つものをいくつか挙げる。

「①有」とは存在の意味であるが、「②存在(基礎が成立したもの)」や、「③現象(法)」や、「④知覚されるもの(所知(しょち))」や、「⑤量られるもの(所量(しょりょう))」などで、主に五つ紹介される。これらは異音同義語で、同じ範囲をもつ。

更に「有」を分けると、一瞬毎に変化する「無常」と、変化しない「恒常」に分けられる。

変化する「⓵無常」と同じ範囲を持つものは、「⓶事物」や、「⓷作られたもの(所作(しょさ))」や、「⓸集められたもの(有為(うい))」や、「⓹自らの性相(自相(じそう))」や、「⓺聖なる真実(勝義諦(しょうぎたい))」や、更には「⓻原因(因)」とか「⓼結果(果)」などもある。

変化しない「❶恒常」と同じ範囲を持つものは、「➋無事物(むじもつ)」、「❸作られていないもの(非所作(ひしょさ))」、「❹集められていない(無為(むい))」、「❺共通の性相(共相(きょうそう))」、「❻世俗の真実(世俗諦(せぞくたい))」などがある。

このうち「➋無事物」は、定義(意味を成し得ない)をそのまま考えると「無」に当てはまる場合もあるけれど、ここでは「有」に含まれる「無事物」として記している。

  無
無我             常・無事物・非所作・無為・共相・世俗諦
  有・存在・法・所知・所量 
               無常・事物・所作・有為・自相・勝義諦

となって来る。

この大まかな「存在の分け方」に従って、初心者の問答がなされる。

本来は、テキストの頭で出てくるのは「白・赤の色」である。
問答入門者は、先ず色について問答をする。

子ども達であれば楽しめるのだけれど、大人が問答を学び始めた時には『色のことなんか問答して何になる』と考えがちなので、今回は割愛した。

でも、色について問答することも、大切な縁起物である。
問答のお題の最初に、「文殊(菩薩)の赤黄色は!・・・」と、仏様や菩薩の体色について問答するからである。
最初に縁起の良いことを言って、後々に繋げようというのである。

「最初の三年はキチガイのように問答せよ。」
といわれる。
論理的に筋道立てて考える、というより、
口を慣らせて、どうとでも考えられるように、思考の道筋を広く拡大させることが目的であると思う。

なので、理屈に合わないことをドンドン言ってくる人がいるが、それに怒っていてはいけない。
自分もバカになる必要がある。

明日は、問答で習うものごとの基本的な関係について記そうと思う。
同じ・反する・三分類・四分類の四種類であるが、
二つのものごとをピックアップして、この二つが同じ意味なのか?反するのか?などを考えるのである。
問答の基本になる。

興味のある人がいるかどうか自体が、謎といえば謎であるが、
筆者自身にとって、ものを考える習慣がついた良い方法であるので、
紹介しようと思う。

お楽しみに!


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