空性の使い方・提案

法王猊下は「ものごとは私達に現れているように有るのではない。」とよくおっしゃいますが、これを一般論として考えていても、知識にはなっても自分の心を軽くするツールにはならないと思います。
これはどんなに勉強している人でも同じです。

「ものごと」を具体的に、自分に関わっているものに当てはめます。
それを一つずつ見て、自分が思っているイメージ通り(イメージそのもの)にものごとが存在していないことを確認して、それに囚われている心を外していく必要があります。

法王猊下の言葉、「ものごとは私達に現れているように有るのではない。」とはその通りの意味ですが、それを使って実際に心を軽くできるのは、対象に対する強い感情が起こらない人です。
法王猊下は、対象を、私情を交えずに客観的に見られる境地に達しておられるので、それだけを言っておられますが、私達が空性を使う時には、先ず心を公平に、軽くしておく必要があります。

空性を使う時には、
①「何が空性なのか」と空性を適用する対象を決める。
全ては空性だけど、私達は一度に一つしか考えられないので、空性の拠所になっている対象を一つに絞る。考えやすくするため。

②対象を自分がどのように把握しているかを確認する。
良くも悪くも「こうだ!」と思っている対象のイメージをはっきりさせる。
付随して、それを思っている感情のエネルギーの強さ、硬さ、重さ(これらは全て実体視からくる)を確認しておく。
これが、「対象が自分の心に現れているように受け入れている」心の状態。

③それが正しいなら、どんなに細かく考察しても「イメージそのもの」が淘汰されて残る筈であると確認する。

④自分が確認したイメージそのままに、感じたそのままに、今現在対象が存在しているかどうか、様々な理由を使って客観的に分析する。
対象についての情報を得た時のツール(ネット?姿?声?等)、時間的な経過(昨日の話?1年前の話?)、同時にある性質(色・形・音・働き等)等、対象のイメージがどういう要素と経過で出来上がっているかを見て、「対象のイメージそのもの」と実際の対象が全く同じかどうかを見る。

⑤分析の思考が進むと、必然的に最初の「イメージそのもの」が構成要素に分類されて、消えて行く。

⑥②で確認したイメージが、自分の作った実体感を持つイメージであることに納得する。

⑦②のイメージと、そのイメージに囚われていた心を手放す。

という流れになります。
これは強い苦しみや怒りの対象(実際は無いもの)を考察する場合です。

自分自身や一般的にニュートラルに感じられる「ものごと」について考える時は、分析して「現れている様に存在するのではない」けれども、経験として無ではないことも一緒に理解します。

ここから先は、仏教のテキストを基にした考察(私見)です。

でも実際のところ、今、私達は自分の心を上手くコントロールできません。
なので、実践的に今始めることは、怒り・恨み・苦しみ・悲しみ・嫉妬等何でも良いですが、自分の重たい心を否定せず、受け入れて、肯定することです。
仏教のテキストで悪い心だと言われているものでも、先ず肯定しなければ先に進めません。

理由は、どんな感情、どんな心理作用でも、自分自身の心の流れだからです。
心にはエネルギー(「ルン」とか言われます)があって、どんな心の働きも、➊対象の現れと様相、➋対象に向かうエネルギーで構成されています。
➊は様々な様相に変化しますが、➋のあり方は同じです。
経験があまりにも強烈過ぎると、➊のベースにある実体の現れに実体視が増強されて、➋のエネルギーの停滞というか、しこりが残ります。エネルギーが引っかかるので、何度も何度も思い出して、中に入り込んでしまうのだと思います。

空性を考える時には、➊(②の対象)が何であるか、はっきりと特定して、対象を安定して心にとどめておく必要があります。
そのために、自分の心の全面的な肯定が必要になります。
自心に対する肯定が無いと、理由を考えている時や、そうでなくても言い訳する気持ちが出てきて、対象から心が逸れます。

例えば、不安が現在の一番の問題であれば、まず自分が不安を持っていて良いと肯定します。自分の不安に同情し、癒し、自分がありのままで良いと実感し、自分に対する信頼感を育みます。
自分の感情エネルギーが不安の形で感じられると実感できれば、ベストです。

次に、何に対する不安が最も強いかを確認します。

次に、この不安一つにフォーカスして、その対象が何かを見ます。
この時大事なのは、一つの不安から連想して、別の不安を混ぜてしまわないことです。
対象も「別の不安の対象」にずれてしまうからです。

未来の収入に関係した不安であれば、具体的に、1日先についてなのか?2日先についてなのか?1週間先についてなのか?1年先についてなのか?
金額は100円無いかもしれないから不安なのか?1000円無いから?1万円無いから?10万円無いから?100万円無いから?
不安の対象を、ピンポイントで探していきます。

そうすると、ピンポイントで不安の対象を提示することはできません。
不安は未だ起こっていない未来の状況に関して、解らないことから起こるからです。
(一番手軽な方法は、『今現在、目の前に、それ(不安の対象)が有るか?』と考えることですが、その理由が有効に使える人は、普段からあまり考えすぎず思考の少ない人です)

すると、不安の対象が、実際は存在しないことが解ります。
不安の対象は、本当は存在しないけれど、自分の心にそれが映ることで、自分がそれを「それしかない!」と信じて、不安になっていたことが解ります。

対象が存在しないことを理解すると、知覚はそれにとどまることができないので(エネルギーの引っ掛かりが無いから)、消えて行きます。

居心地の悪さが直ぐになくなるわけではありませんが、居ても立っても居られない様な不安の状態からは離れて、『現状で最も必要な対策は何か』という現実にコミットした思考を持つことができるようになります。
一回で全ての引っ掛かりが無くなるわけではありませんが、気が付いた時に何度もやることで、一つ一つ外れて、だんだん軽くなっていきます。


難しいかもしれませんが、
先ず、自分の心を全て受け入れる。
自分の心に映っている対象を、安心して(心が軽い状態で)、客観的に観察できるようになる。
自分の心に映っている「イメージそのもの」が本当に存在するかどうか見る。
「イメージそのもの」が自分で作ったイメージだったことに気付く。
『本当だ』と思っていたことが思い込みだったことを客観的に理解した時に、「イメージそのもの」がフッと消えて、心が軽くなる(滞っていたエネルギーが解けて消えていく感じ)。
という流れです。

先ずは、誰かを嫌いな気持ちでも、失望でも、どんな感情も自分で受け止めて愛すること。
相手がどんな方であろうと、如何なる対象に対してもです!
多分涙が出てくるし、罪悪感を感じることもあるかもしれませんが、これが第一歩です(私にはメチャメチャハードル高かった・・・)。

それから、精神的なエネルギーも解放するばかりではエネルギー不足になりやすいので、光や仏陀、イメージは何でもよいので、自分に溶け込んで自分が愛や光で満たされて安心安全であるという感覚も、育んであげて下さい。

もし『効きそうかなー?』と思われたなら、試しにやってみてね~!

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