忘れられた遍満

問答をするときの超重要ワードに、「遍満する」という言葉がある。
「行き渡る」という意味だが、昨日はうっかり忘れてしまった。
申し訳ありません。

例えば、同義の場合、
Aであるならば、Bであることが遍満する。(Aであるものは全てBである)
Bであるならば、Aであることが遍満する。(Bであるものは全てAである)
Aでないならば、Bでないことが遍満する。(Aでないものは全てBではない)
Bでないならば、Aでないことが遍満する。(Bでないものは全てAではない)
Aが有るならば、Bが有ることが遍満する。(Aが有れば必ずBが有る)
Bが有るならば、Aが有ることが遍満する。(Bが有れば必ずAが有る)
Aが無ければ、Bが無いことが遍満する。(Aが無ければ必ずBが無い)
Bが無ければ、Aが無いことが遍満する。(Bが無ければ必ずAが無い)
となる。

ややこしい言葉の一つで、普段の会話ではあまり使わないが、
問答してものごとの範囲をきっちり決めなければならない時には、無ければならない言葉である。

さて、昨日のクイズの解説である。

1)「有」と「所知」は同義である。
「有」と同じ意味範囲を持つものには「存在」や「法(現象)」「所量(量られる所のもの)」等があるが、「所知(知られる所のもの)」も同じ意味範囲を持つからである。

質問者:「『有』と『所知』は同義であるのか?」
返答者:「そうだ。」
質問者:「『有』と『所知』は同義であり?」
返答者:「『有』であれば全てが『所知』であり、『所知』であれば全てが『有』であり、
『有』でないものは全て『所知』ではなく、『所知』でないものは全て『有』ではなく、
『有』が有れば必ず『所知』が有り、『所知』が有れば必ずれば必ず『有』が有り、
『有』が無ければ必ず『所知』が無く、『所知』が無ければ必ず『有』が無い故である。」
と、問答の時には全部言う。

2)「事物」と「存在」は三分類である。
存在=有は、恒常と無常に分けられる。そして無常と事物は同義である。
すると、「事物」<「存在」になる。

第一分類:「事物」と「存在」の両方であるものは、「無常」をあげても良いし、「祇園精舎の鐘の声」をあげても良い。諸行無常の響きあり。
第二分類:「存在」であり「事物」でないものは、「恒常」や「(変化しない)虚空」をあげても良い。
第三分類:「事物」でも「存在」でもないものは、「無」や「ウサギの角」である。

3)「有為」と「共相」は相違である。
有為と無常は同義、共相と恒常は同義であるので、
無常と恒常が反するように、「有為」と「共相」も反する相違である。

「有為」は「共相」ではないし、「共相」も「有為」ではない。

4)「あなた」と「無常」は三分類である。
あなたは無常に含まれるし、無常であり、あなたでないものがあるからである。

第一分類:「あなた」であり「無常」であるものは、「読者のあなた」。
第二分類:「無常」であり「あなた」でないものは、「わたし」。その他、壺でも柱でも、無常であり「あなた」でなければ何でもよい。
第三分類:「あなた」でも「無常」でもないものは、「恒常」や「ロバの角(無)」。

「あなた」や「わたし」は永遠だと思っておられる方もいらっしゃるかもしれないが、
ここでは仏教的見解に従って、「あなた」や「わたし」は、身体や心のひと固まりに名付けられた者(プトガラ)として扱っている。

5)「日本人」と「男性」は四分類である。
日本人は男性であるとは限らないし、男性は日本人であるとも限らないからである。

第一分類:「日本人」であり「男性」であるのは、「日本人男性」固有名詞はご自由に。
第二分類:「日本人」であり「男性」でないのは、「日本人女性」同上。
第三分類:「男性」であり「日本人」ではないのは、「インド人男性」、「牡鹿」。
第四分類:「日本人」でも「男性」でもないのは、「チベット人女性」「地球」「虚空の花(無)」等々。

気付かれた方もおられるかもしれないが、
二日前に紹介した経量部のものごとの分類だけでは、https://note.com/dechenblog/n/n876dbc4e2825

三分類までしか当てはまらない。
四分類を当てはめるには、恒常にも無常にも、更なる分類が必要になってくる。

同義・相違・三分類・四分類のなかでどんな関係になるのか、
身近にあるもので頭をひねっていると、
ややこしい現世の悩みから一時解放される。



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