一つずつ外す

一つずつ外す

直子 デチェン

以前、一日十五時間(⁈)瞑想していたことがあると言っていた友人が教えてくれたことがある。
「何か実践的な知識を得たいと思ったら、ただ高名なラマより、自分でそれを毎日実践している修行者にきいた方が良い。」
これは密教についての話で出てきた言葉であるが、
何についても当てはまる。

昨日から、十年以上前に会った韓国の尼さんの話を思い出している。
彼女は瞑想修行者で、不思議な話を幾つか聞いた。

当時彼女はチベット公共図書館で、瞑想修行の傍ら、チベット語を学び、毎日経典を読んで大切な言葉を書き留め、考える、という生活をしていた。
恐らく、彼女の睡眠時間は三~四時間で(十二時に寝て三時半頃起きると聞いたような気がする)、特別疲れることはないと言っていた。

ダラムサラに来る前に、ラダック山中の洞窟で三年三ヶ月の単独リトリートをしており、それが終わってダライ・ラマ法王の下で空性などの哲学的な教えを学ぶ為に、図書館に滞在しているとのことであった。
法王との個人授業を受けたと言っていたが、それを他の韓国人達が信じないとも言っていた。

彼女が教えてくれたことで一番心に残っているのは、三年三ヶ月のリトリートの間、決して身体を洗ってはいけないということだ。
一ヶ月に一回、先生が予告も無く山中の洞窟にやって来て、服の袖をまくって身体を洗っていないことを確かめるという。

彼女は、常に自分の心身を感じることが大切だと言っていた。
何をすれば身体の何処にエネルギーが流れるのかを感じることができるらしく、
「韓国料理(スープ付)は、食べて消化する時の気のバランスが素晴らしい。特に熱いスープ麺は、汁を飲むと背骨に沿って気が流れるので、とても気持ちが良い」とのことであった。

彼女の言っていたことで、今になって理解しかけていることがある。

彼女は、意識の流れというものは、カメラのフィルムが一枚ずつ重なって、次から次へと経過していくようなものだと言っていた。
(パラパラ漫画のようなものか?)

もし快くない感情(欲望や怒り等と共にある感情)や、心の現れ等があれば、
それはフィルムの一部になるので、
そのフィルムを取り除く必要がある。

大きな汚れた流れを浄化しようと思ったら、
その流れの中の汚れたフィルムを一枚ずつ取り除く。
その結果として、汚れの無い清浄な流れになる。

川の流れを浄化しようと思ったら、汚れ(ゴミ)をそれぞれ取り除かなければならないように。

それを聞いた時には、『なるほど』と思ったものの、
常に流れ続ける心の一部を、(煩悩等で)汚れているからといって、いちいち取り除くことなど不可能だと感じた。
量が多すぎる。

しかし今になって、彼女の言うことが理に適っており、実現可能ではないかと思うようになった。

心というものは、感じようと感じまいと、常に変化している。
時間が止まることなく流れることと同じだ。

時間の経過とともに心を感じていると、心地良い時もあるし、気分が悪い時もある。
怒っている時もあるし、何かに硬く囚われている時もあるし、何かを酷く欲しがっている時や、何故だか分からない不安に苛まれている時もある。

その不快な心の状態にある時、先ずそのことに気付かなければならない。
中に入り込むのではなく、自分の心がその不快な状況を見ていることを、認識するのである。

彼女の理論(瞑想修行の中で得られた実感であろうと思うが)によれば、
その状態は、不快な状況を映しているフィルムが、心のフィルムの流れに紛れ込んでいる状態である。
そのフィルムを、見つけたその時々に丁寧に外していけば、
少しずつではあっても、次第に不快さは無くなっていく筈である。

そしてこれは卓上の理論ではなく、
筆者自身できるだけ普段から自分の心の状態を観察し、
心が不快な状態になった時には、その時々でなんとか意識的なエネルギーの滞留を外し、
結果として、以前ほどドツボにハマることが無くなったという実体験に基づいて、
『確かに』と納得されるものである。

心のフィルムを外す方法は沢山ある。
(一番手軽な方法は、不快な状況を感じている時、イメージの中で自分の心臓のあたりに入っていき、そこに映写機があって不快な状況の映画を映しているので、そのフィルムを外し、幸せな好みのストーリーのフィルムに取り換える。新しい幸せな映像の中にいて喜びの感情を感じ、深呼吸して全身に馴染ませる。その世界が続いていると信じて目を開け、現実に戻る。
これは一時的にドツボから抜ける方法。)

宗教的な教義に基づくもの、スピリチュアルなイメージワークや観想等、何でも構わないが、心の異常に気付いた時にこまめに行うことが、
現実的な心の軽さに繋がる。

「欲望や怒り、傲慢等に気付いた時に、即時にその対処を行う」という教えと同じだ。

面倒くさいと最初からあきらめず、
一つずつ丁寧に外していくこと。

大きな変化も、小さな変化が積み重ねられることから起こる。



DECHEN
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直子 デチェン
1999年初渡印。2003~2015年インド・ダラムサラ仏教論理大学聴講。現在も殆どヒマラヤの麓、ダラムサラで暮らす。 100円投げ銭サポート募集中!インド自炊で一食分・・・二食分?(^人^)ゞ