どうアジャストするか

どうアジャストするか

直子 デチェン

アジャスト(adjust)とは「調整する」「適合させる」の意味で、
この言葉を聞いたのは、シンガポールのお坊さんからである。

心底真面目な部分と、結構ふざけた部分をあわせもつ個性的な人で、
真面目に良心的なことをいう、人生初めての友人である。

彼は、自分にとって最も大切なものはラマ、家族、友人であり、
人間関係の根幹は信頼から生まれると言った。

極めて当たり前のことでありながら、それを面と向かって、諭すように、真面目に真面目に筆者に言ってくれたのは彼が初めてで、
その時には変わった人だと思っていた。

その彼が、アジャストという言葉をよく使っていた。
どう使うのかというと、彼が帰国する時のことを説明する為に使うのである。

インドで、人の少ない道路沿いの、木々に囲まれた小さな一軒家を借りていた彼は、1日の大半を日課の修行や瞑想で過ごす。
その静かで穏やかで自由な生活からシンガポールに里帰りする時、
インドからシンガポールへのチューニングというか、
アジャストが必要だとのことだった。
シンガポールに着いてから1週間ほどがアジャスト期間。
その後は、忙しい生活に大体同調できていたのだろう。

このチューニングは、以前筆者も帰国前に必要だった。
デリーで行うことが多く、ダラムサラから夜行バスでデリーに早朝着いて、ゲストハウスに入り、夕方空港へ向かうまで、部屋付きのテレビなどを見ながら近代文明的なものごとに心を慣らすのである。

ダラムサラはそれほど平穏だということだ。

最近はどこにいてもそれほど違いを感じなくなってきたので、
手軽になったと喜んでいる。

調整は、複数の異なる性質のものが、ともに働くために必要な次第である。
全く同じ性質(気が合う)であれば、調整する必要すらない。

生活習慣はもちろんだけれど、                    気持ちや考え方にも、調整が必要なことがある。

最近折り合いをつけることが難しいと感じていたことは、        考え方の違いである。

例えば、先生にあたる人が、誰かととても仲が良かったとする。
そしてあなたは、先生と仲良しのその人が、悪いことをしたと知ったとする。
この悪行には決して賛成できないあなたであるが、先生にそれを言うこともできない。彼らは、自分よりずっと長いこと親交を続けているし、先生は気軽に連絡をとれる相手でもないからだ。

ここで、先生と仲良しのその人と関わらない決心をすることは易しいが、
すると先生にも背を向けるような心持になる。

それでも、手に入れた情報を基に自分に正直な道を進もうとする時、調整が必要になる。
先生を先生として受け入れることと、先生が指し示すこと全てを受け入れないことのアジャストである。

これについて、しばらくすっきり晴れない日々が続いていたが、     今日新しい解決策を一つ思いついた。
「罪を憎んで人を憎まず」
である。

これは普段、教えの場では怒りを治める対処として使われる言葉だ。
誰かに危害を与えられたとしても、
その誰かも欲望や怒り、愚かさなどの煩悩に操られて、自由無く罪悪をなしてしまうのである。本当に憎むべきはその煩悩とそれによって犯された罪悪であり、その罪悪をなした誰かは、慈悲の対象である。彼は、罪悪を犯した報いで後に苦しまなければならないからだ。

この考え方は、行為と行為者を分けて考える。
我々の心に映る「危害を与える人」は、
「人」と「危害を与える行為」が一つになって、
分けることができないイメージを作り上げている。

これらを別に考えることで、「危害を与える行為」を不善であると斥け、「人」は慈悲の対象として受け入れる。

これは色々に応用して使える方法で、
例えば上記の先生に当てはめて考えてみれば、
「先生」と「(実は悪いことをしていた)その人と仲良くする」を分けて、
「(実は悪いことをしていた)その人と仲良くする」の部分は、同意せずに離れる。
「先生」ご自身は、それ以外の尊敬すべき部分を沢山知っているので、その面から尊敬する。

これが一種のアジャストである。

でもそう考えると、どんなに悪いと言われる人でも、何かしら良い部分を持っていることになる。
全ての存在から憎まれる者など、存在しないだろう。

今日発見した、
心の調整の、一つの方法である。


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直子 デチェン
1999年初渡印。2003~2015年インド・ダラムサラ仏教論理大学聴講。現在も殆どヒマラヤの麓、ダラムサラで暮らす。 100円投げ銭サポート募集中!インド自炊で一食分・・・二食分?(^人^)ゞ