二つの関係性

問答は一種のゲームである。

禅問答の場合は、弟子の心の段階がどれだけ進んでいるかを、師が確認するものであろう。
しかし、チベットの僧院で論理学の実践として最初に学ぶ問答は、
ゲームに近い。

ものごとがどういうものであるかを知る為に、定義というものをあげて、
その定義が当てはまる、当てはまらないと考えることも初心者のうちから学ぶが、
先ずは二つの主体をあげて、「この二つがどんな関係を持つか?」と質疑応答する。

基本的に、二つの主体の関係性は四種類ある。
①同義(AとBは、同じ意味)◯
②相違(AとBは、反する意味)◯●
③三分類(AとBは、どちらかがどちらかに含まれる)◉
④四分類(AとB両方に、他方に当てはまるものと、当てはまらないものがある)

①同義は、同じ意味として行き渡る八門がある。
AならばBである。BならばAである。
AでなければBではない。BでなければAではない。
Aが有ればBが有る。Bが有ればAが有る。
Aが無ければBは無い。Bが無ければAは無い。

例えば、「デチェン(筆者)」と「直子(筆者)」は、同義である。
デチェン(筆者)であれば、直子(筆者)であるし、
デチェン(筆者)でなければ、直子(筆者)ではない。
以降もそのまま当てはめる。

②相違は反する意味である。反するとは、AでありBでもある現象が無いことである。
普段私達が使う「反する」という言葉の意味は正反対のイメージであるが、ここでの「反する」の意味は、AとBの両方であるものごとが無ければ成立する。

例えば、「デチェン(筆者・以下省略)」と、「通りかかったボス猿」である。

③三分類は、一方が一方に含まれる。AとBのうち、どちらかの範囲が広くなる。
[Aの方が範囲が広い場合]
第一分類=BがAに含まれる。AとB両方であるもの。
第二分類=AでありBではないもの。
第三分類=AでもBでもないもの。

例えば、「デチェン」と「日本人」である。
第一分類→デチェン(デチェンは日本人に含まれる)
第二分類→日本人の読者(日本人であり、デチェンではない)
第三分類→通りかかったボス猿(日本人でもデチェンでもない)

④四分類は、Aの中にもBであるものと、Aのみであるものがあり、
BのなかにもAであるものと、Bのみであるものがある。
二つの○が、一部重なっているような関係性である。
第一分類=AとB両方であるもの。Aでもあり、Bでもある。
第二分類=Aであるが、Bでないもの。
第三分類=Bであるが、Aでないもの。
第四分類=AとB両方でないもの。Aでもなく、Bでもない。

例えば、「日本人」と「インド学生ビザ保持者」である。
第一分類→デチェン(日本人であり、インド学生ビザ保持者である)
第二分類→デチェンの母(日本人であるが、インド学生ビザ保持者ではない)
第三分類→仏教論理大学聴講中の韓国人の友達(インド学生ビザ保持者であるが、日本人ではない)
第四分類→通りがかりのボス猿(日本人でも、インド学生ビザ保持者でもない)

問答を実際にする時には、
質問者:「○○と××の二つは、三分類、四分類、相違、同義の面から、違いを挙げることができない故である。」
返答者:「理由が成立していない。」
質問者:「違いをあげることができるか?」
返答者:「できる!」
(※雰囲気をそのまま言葉にしている。ツッコミが入る前に、あらかじめ記す)
といって、返答者は「同義である」あるいは「四分類である」等々と返答する。

では、昨日記した幾つかの名詞も交えて、どんな関係性があるのか考えてみてほしい。
1)「有」と「所知」
2)「事物」と「存在」
3)「有為」と「共相」
4)「あなた」と「無常」
5)「日本人」と「男性」

答はDECHENの下↓にある。
それぞれの分類の例をあげることが、早く適切に考えることの訓練になる。
分類の例も、ご自身であげてみると役に立つ。



DECHEN
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上記の答
1)同義 2)三分類 3)相違 4)三分類 5)四分類
解説は明日!

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