大師、ありがとう。

昨日はツォンカパ大師の御命日で、
チベットやインド、その他の国々でも、御縁のある人々が大師を偲ばれたと思う。

ダラムサラでも、未だお寺や僧院はロックダウン中ではあるが、
日中は法要の声がスピーカーで流れてきたし、
晩方には
「ミグメー、ツェウェー、テルチェン、ジェンレシㇰ・・・」
というツォンカパ大師の称賛偈が、お寺や他の僧院の方向からも聞こえてきた。
それぞれの家のベランダにロウソクを灯す人々もおり、
僧院には電飾が飾られた。

夜間外出禁止なので、静かではあったけれど。

数年前までは、寒い時期には南に授業があるといって避寒しており、
大師の著された「了義と未了義
(了義:空性を説いており、言葉通りに受け取って良い経典の意味    未了義:世俗のものごとを説いているか、言葉通りに受け取ってはいけない経典の意味)
についての善説の精髄」をお坊さん達が読経する声を聞いたり、
僧院のにぎやかなイルミネーションを眺めたりしたものである。
一種のお祭りだ。

大師像も、数日前から目にすることが多い。
目鼻立ちのはっきりされたお顔で微笑んでおられる像が多いが、
真っ白く揃った歯並びを見せて微笑んでおられる大師もおられ、
何だかハッピーウェルカムな様子。

以前授業中に、ある先生が話しておられた大師のご様子は、
シリアスなご様子であったが。

その時先生は、文殊菩薩についてお話しされていた。
文殊菩薩も、複数いらっしゃるか、性格が一定でないというお話であった。

ツォンカパ大師が直接文殊菩薩とコンタクトされる以前は、
ラマ・ウマパという方を通して、文殊菩薩と質疑応答をされていた。
大師ご自身がお目にかかることができなかったので、当時文殊菩薩と直で対面されていたラマ・ウマパを通して、教えを受けていたのだそうだ。

このラマ・ウマパはニコニコと良くしゃべる闊達な性格だったらしく、
文殊菩薩も明るく口が軽い(良くしゃべる)方だったそうである。

一方、ツォンカパ大師はシリアスで、黒っぽい顔(先生の言葉。落ち着いた、苦みばしった顔、という意味)であったのか、
文殊菩薩も重々しく、あまりしゃべらないタイプであったと、
先生が言っていた。

そのイメージが強すぎて、歯を見せて笑っている大師像を拝顔した時、
正直いって、少し違和感を感じた。

ともあれ、
「そのようであることも、我々にとって無上の御恩がある、ジェ・ツォンカパ御自身のお考えである故である。」
とお坊さん達が朗々と唱えるように、
大師の出現は本当にありがたいことであった。

現代までの沢山の著作で説かれていることも多いけれど、
筆者も常日頃感じている大師の「スゴイところ」を、一つ記したいと思う。

大師は、
内容を表す項目も無く、ただひたすら並列に並べて説かれた論書に、目次を付けた方である。
これがスゴイ!

ご存知の方も多いと思うが、現在我々がお目にかかることのできる、多くのサンスクリット原典の訳書は、章の区切り以外、

「この部分の主旨はこれである。」というはっきりした項目分けや、
問答をするにあたり考察される主語の違いや、
背理の違いなどを明らかにする言葉は殆ど記されていない。

著者と当時の読者は、恐らく『自分で解るでしょ?』と思っておられたのだろう。

恥ずかしながら自分で解らない筆者は、
もしこの文字列を読むことができたとしても、
論書の著述内容の大きな流れはどうなのか?
主語(基体)がそのままで、問答内容がどう変化するか?
主語(基体)が入れ替わった時に、問答内容がどう変化するか?
など、俯瞰的に見ることも、ポイントをつかむことも、助けが無ければ不可能だろうと思う。
助けがあっても難しいのだから。

「ジェ・リンポチェ(ツォンカパ大師)がいなかったら、俺達は終わりだ。」

とは、まさしくその通りである。

更に、ご自身がご存知のことを、分かり易く説かれる執筆術にも長けている。
言葉にも、時々厳しい部分が現れもするが、意地悪さが無い。
特に晩年の著作には、後続者に向けられたしみじみとした優しさが感じられる。

大師が亡くなられた後、信奉者がある占いをして、
当時、大師が中国の五台山で法を説かれている、というお告げを得たという。
大師は亡くなられた後も、姿を変えながら、
縁のある人々へ法を説き続けているのだろう。

知恵の足りない筆者ではあるが、
何時か何処かでお目にかかりたいと、
心底思う。



DECHEN
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