ポケットいっぱいの夢
これを書き始めたのは12月27日だが、年末は塾のバイトが詰まっており忙しく、ちまちまと続きを書き足してようやく今日に至る。いつの間にか年を越してしまっていた。そんな調子で、自分の心の深い所に潜る時間的余裕がなかったので、今回は自分の好きなものの一つについて書いた。
ところで、エッセイを書き始めて早くも、自分について深く掘り下げることの面白さと重さが分かった。忙しい時は重たい文章を書くのが負担になりそうで、実際にしんどいのかはさておき、じっくりと自分に向き合う時間があるときに書くべきだろうなと思ったので、今回は息抜きだ。1クール毎週放送のアニメで言う所の温泉回であり、野球回である。ちなみに温泉回は良いとして、突然本編と関係ない野球が始まる回も息抜きだと自分は思っているのだが、人によっては反論されそうなラベリングかもしれない。もっとも、野球回は好きだし、ちゃんと見たら実は本編の流れを反映している試合展開で、無関係ではない場合もあるのだが。
閑話休題。
今回のタイトルは最初、「ポケットには夢がいっぱい」にしようかと思ったが、交響詩篇エウレカセブンの劇場版のタイトルに寄りすぎたので少し手を加えた。エウレカセブンも好きだが、本題とは関係ないので。
多くの作品を知ることは人生を豊かにするが、自分で何か創作する際に、「このタイトルやキャラクター、世界設定や話の展開は既に存在する〇〇のパクりになるからやめよう。でもそうするとゼロから生み出す才能の無い自分には何も作れないんだよな。」という思考になり、がんじがらめになってしまう点では、作品を多く知りすぎない方が生きやすいのかもしれない。
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本題。
『ポケモン』が好きだ。それはもう、とんでもなく。ポケットモンスターという作品の全ての側面が大好きだし、古今東西あらゆる創作物の中で一つだけ選び、その世界に入ることができるとしたら、迷わずポケットモンスターを選ぶだろう。
ポケモン、ポケットモンスター、と聞いて、黄色いネズミの姿しか思い浮かばない人も多いだろうから、まずは概要を説明する。
ポケットモンスターは、今でこそアニメやグッズ、カードゲームやアーケードゲーム、果てはハリウッド映画にまで進出している作品だが、全ての元は家庭用ゲーム機で遊べるRPGだ。
1996年の『赤/緑』の2作同時発売を皮切りに、2019年発売の最新作『ソード/シールド』まで(リメイク作品除く)、何作も続く大人気シリーズ。
基本的なゲーム内容は、主人公のトレーナーが、世界中にいる「ポケモン」と呼ばれる不思議な生き物と出会い、捕まえて仲間にしながら、悪の組織と戦い、その地域ごとのリーグへの挑戦資格となるバッジを各地で集めて、リーグチャンピオンを目指すというものだ。
ゲーム本編が人気を博すにつれ、アニメや漫画、スピンオフ作品など幅広く展開されていき、今では日本を代表するコンテンツの一つとなっているが、自分が好きなのはこれら全てを含めた『ポケモン』という作品そのものだ。ゲームだけでも、アニメだけでもなく。(そういう人も多いし別に良いと思うが。)
もう少しゲーム本編について詳しく話させてほしい。
まず主人公(プレイヤー)は、最初の手持ちとなるポケモンを、草・炎・水の3タイプから一匹選ぶことになる。ポケモントレーナーである主人公は自分の身一つで野生のポケモンや敵トレーナーが繰り出すポケモンと闘うことはできず、野生(のポケモン)を捕まえるにしても最低一匹は手持ちがいないと何もできないので、新人トレーナーは博士から一匹もらって旅を始めるわけだ。
この博士というのは、世界各地でポケモンの生態などの謎を解明するため研究を続けている人で、基本は主人公が10歳になり(ポケモントレーナーとして自分のポケモンを持つことができる年齢、おそらくこの世界の決まり事だと思われる)、この人の研究所に行って最初の一匹をもらうところからゲームが始まる。そして、より強いポケモントレーナーになることと並行して、博士の作ったポケモン図鑑の完成の手伝いのため、より多くのポケモンと出会い捕獲することが旅の目的に加えられる。
ポケモンはモンスターボールと呼ばれるカプセルで捕まえ、6体まで手持ちに入れる事ができる(それ以上捕まえたポケモンはボックスに預け、必要に応じて手持ちと入れ替えられる)。
ポケモンは4つまで技を覚えることができ、一匹ごとにニックネームを付けることもできる。
捕まえたポケモンたちには「HP(体力)」や「こうげき」「すばやさ」などの能力値があり、基本的には野生や敵トレーナーのポケモンを倒してレベルが上がると能力値も上昇し強くなる。
しかし、隠された要素として、
①ポケモンの種類ごとに固有の能力パターン(ライオンとウサギの違い)、
②同じ種類でも個体ごとに固有の能力差(群れの長のライオンと下っ端ライオンの違い)、
③さらにはトレーナーの育て方による能力の違い(人間で言うと足を速くするか腕力を鍛えるか)、
といった3つのステータスが存在する。
隠された要素と書いたが、これら3つのステータス(種族値、個体値、努力値と俗に呼ばれ、まとめて三値と言う)は、ゲームをプレイする中で目にすることはできず、その合計としての能力しか分からない。さらに、普通この話はポケモンのゲームをやり込みまくった廃人しか知らず、公式には存在しないものとされている。
ならばなぜこんな能力値について説明するかと言うと、これがポケモンを好きな理由の一つだからだ。
どんな種類のポケモンを探すか、どんな個体と出会うか、どう育てるか。また、どんな技を覚えさせるか、どんなニックネームを付けて可愛がるか。全てが自由。
自由に、自分好みにカスタマイズできるゲーム性という意味でも好きだが、自分にとって本質はそこではなく、『ゲーム上の単なるデータではないリアルな生き物の要素がある』ということが好きだ。
そう、ポケモンは生きているのである。
少なくとも、そう感じさせるほど愛を持ってディテールが作り込まれており、アニメなどゲーム本編以外でもしっかりと表現されている。
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『生き生きと存在している』こと以外にもう一つ、ポケモンを好きな理由として大きなものがある。
『捕まえたポケモンは単なる戦闘の駒でも、飼っているペットでもなく、仲間であり友達であり相棒』だということだ。
これは特に毎週放送されているアニメやその他展開される映像作品で表現されることの多い世界観であり、ゲーム本編を含め、ポケモンは登場人物の一生に深く関わる存在として、人間と対等に描かれている。伝説のポケモンなど一部、人間よりも強く上位の存在のような立ち振る舞いをするポケモンもいるが、少なくとも人間より下の立場の生き物として扱われている作品は無い。
ポケモンにはポケモン同士で話す言葉(ピカチュウの「ピカピカ、ピカピ!」など)があるが、人間の言葉を理解し意思疎通ができる。トレーナーを信頼していなければバトルでも言うことを聞かないし、トレーナーも力づくで従わせることはできない。
このことの良さといったらない。何より自分と異なる種族の生きものと本当の意味で心を通わせることができるなんて夢のようだ。
Twitterなどで見かけるイラストで、ポケモンをペットのように扱うものも多いが、それなら犬や猫を愛でればいい。ポケモンに首輪やリードを付けるなど言語道断で、所謂「解釈違い」というやつだ。
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ここまで好きな理由を2つ書いたが、百聞は一見に如かずということで、ポケモンの世界に興味を持った人のために、最高のアニメ作品を紹介しておく。
全7話プラスおまけの、『薄明の翼』というアニメで、ポケモンファンからも高評価の嵐、僕も大好きな作品だ。全部通しで1時間弱にまとめた動画が公式から出ているので、是非。ポケモン世界は何でも魔法のように上手くいくファンタジーではないが、ドキドキするほど夢と冒険に満ちた世界がリアルに描かれている。
https://youtu.be/haWm-PDTykI
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「子供の頃はポケモンやってたけど今は分かんないな」と言われることがある。
「大学生にもなってポケモンか」と趣味を幼稚扱いされることもある。
自分も、子供にしか響かないコンテンツというものはこの世に存在すると思う。ただ、それは知識や経験の少ない子供にとって多くの作品の良さを理解できないからと、子供の水準に合わせた結果、大人には物足りないものになる場合があるというだけだ。そしてそういうコンテンツがあるおかげで子供の文化的土壌が作られていくのだから重要なことだと思っている。
しかし、それは作品について深く知った上で判断してほしいとも感じる。
ポケットモンスターは、ゲームの奥深さ(物語の重厚さや対戦の難易度)、アニメや漫画で描かれる世界観の作り込み、公式が設定するターゲット層の広さ(特にグッズ展開など)、どれを取っても老若男女が楽しめるコンテンツなのだ。決して子供のためだけのものではなく。
と、好きなものについて語っていたつもりが、気づいたら難しい話になってきたのでこのあたりで終わろう。
好きなものと、それを好きな理由をたくさん語れば、その人の内面が浮かび上がると思っているので、『好きなもの語るシリーズ』はいずれまたやる。たぶん。