R6予備民訴 再現答案

第1 設問1
1:L₂によるかかる主張は弁論準備手続終結後に為されているから、理由の説明が要求される(174条,167条)。そして、弁論準備手続(164条)の制度趣旨は、争点・証拠を事前に整理することにより、円滑迅速な訴訟手続きを実現することにあるから、「理由」(174条,167条)は当該主張を提出することがやむを得ない場合に限られると解する

(1)L₂は弁論準備手続完了前に相殺の主張をしなかった根拠につき、自己の債権を犠牲にするものである旨主張する。

たしかに、相殺の主張とは、相手方の請求に対して、自己の相手方に有する権利を犠牲にしてまでも請求棄却を求めるという点で実質的には敗訴という性格・特徴を有するといえる

(2)次にL₂は基準時後における相殺の主張が許容されていることからすれば、弁論手続終了後において主張することも許容されると主張する。たしかに、相殺の上記性格・特徴、判決が出るまでは勝敗の結果は分からないこと、及び相殺の抗弁については既判力が発生してしまう(114条2項)からすれば、口頭弁論終結前において相殺の抗弁を主張できないこと自体は期待しがたいと言える。そのため、口頭弁論終結よりも前の時点である弁論準備手続中において相殺を主張すること自体は期待できるとは言えない

(3)したがって、L₂の主張は「理由」として妥当である。

2尤も、時機に遅れた攻撃防御方法(157条)として認められないのではないか
(1)「訴訟の完結を遅延させる」とは新たな証拠調べが必要となり判決を出すのが遅延されることを言う。
L₂の相殺の主張により、裁判所は新たにXY間の貸金債権の存否や返還期日などの証拠調べをする必要がある。そして、L₂のかかる主張は結審が予定されていた口頭弁論期日においてなされたものである。そのため、裁判所による新たに証拠調べが必要となり、判決を出すのが大幅に遅れることになると言える。そのため、「訴訟の完結を遅延させる」にあたる。
(2)では「故意または過失」が認められるか。
ア:確かに上記の通り、相殺の抗弁自体は実質的な敗訴といえるため主張期待可能性があるとはいえない。
イ:しかし、相殺の抗弁で主張するのは貸金債権300万円である。かかる債権を相殺の抗弁として主張することで、これが認められれば300万円をYはXから受け取ることが出来なくなるという不利益があるものの、相殺は簡易迅速な決済機能を有するため、XY間の清算が円滑に実現できるという利点が無いわけではない。そのため、実質敗訴であるにしてもYの被る不利益は決して甚大であるとは言えない。そして、Yは伝統工芸芸術家たるXから頻繁に工芸品を購入していたのだからXY間では取引が活発になされていたため、簡易迅速な清算関係の維持は重要であったと言え、今後もXと継続して取引をすることは工芸品の価値に鑑み相殺による簡易迅速な清算の要請は強かったといえる(XYの関係や取引内容に着目して今後も取引続けることが重要なものだったと言えるんだから、むしろ相殺の期待可能性とかいうよりもさっさと相殺を主張して清算させることのほうが重要だったと言えるんじゃないの、というようなことは書いたのでないよ面はほぼ同じはずだが再現答案の様な比較的まとまった書き方はしてないはず。記憶が…)。
また、L₂の主張する貸金債権については相殺適状にあり弁済期も到来していたのだから相殺の主張をすること自体も不可能だったとは言えない。
そうだとすれば、L₂はL₁の言うように仮定的抗弁としてでも相殺の抗弁を上記口頭弁論期日よりも前に主張することが可能であり、かつすべきであったと認められる。他方で、L₂は上記期日において主張してしまっているので少なくとも「過失」がある
(3)そして因果関係も問題なく認められる
3以上より、L₂のかかる主張は時機に遅れた攻撃防御方法にあたり、裁判官はこれを却下すべきである。なお、174条に基づく理由についての判断と157条における時機に遅れた攻撃防御方法にあたるとするのは一見矛盾するとも思えるが、弁論準備手続の上記趣旨からやむを得ない理由があるかは当該主張の性質から判断すべきであるのに対し、157条は訴訟上の信義則を由来とするものであるから、訴訟の経過など具体的な事情を加味して判断されるべきであるので、矛盾するものではないと考える
第2 設問2
1かかる主張は訴訟告知による参加的効力(53条4項、46条柱書)であると考えられる。もっとも、かかる効力が及ぶためには補助参加の利益がAに認められることが必要である。

(1)補助参加制度(42条)の趣旨は、訴訟の結果につき法的地位に不利益な影響を受ける者を訴訟手続きに参加させることでかかる者の地位を保護する点にあるから「利害関係」とは法律上の利害関係を言う

本件ではYに対して売買契約に基づく代金支払い請求を提起し、本件訴訟においては代理権の授与及び表見代理の成否が主要な争点となっていた。そのため、本件訴訟でXが敗訴すればXはAに対して無権代理に基づく損害賠償請求(民法117条1項)を提起し、Aは責任追及される可能性があると言える。そのため、Aは本件訴訟につき法律上の利害関係を有すると認められる

(2)次に、上記制度趣旨につき、かかる地位につき不利に考慮されるのは判決主文中の判断(法114条1項)に限らず、判決理由中の判断につき主文を導くのに必要不可欠な事実であっても認められる。そこで「訴訟の結果」とは判決主文に包含されるものに限らず、判決理由中の判断につき主文を導くのに必要不可欠な事実も含まれると解する。

ア:まず、本件訴訟において判決主文に包含されるもの(法114条1項)は売買契約に基づく代金支払い請求権の存否であって、代理権授与の有無及び表見代理の成否はこれに含まれない。
イ:しかし、上記訴えにつき、請求原因事実は①法律行為,顕名,先立つ代理権の授与及び②法律行為,顕名,表見代理成立の根拠事実とされ、そのうち、XY間では代理権の授与及び表見代理の成否が主要な争点となっていた。そのため、本件訴訟の判決につき、上記売買代金債権の存否を導くためには、かかる主要争点についての判断は必要不可欠であったと言える。
そのため、かかる主要争点は判決理由中の判断のうち判決主文を導き出すのに必要不可欠であったと言える。よって代理権の授与及び表見代理の成否の判断「訴訟の結果」にあたる

2次に、本件ではAに対して訴訟告知がなされ(53条)、また46条各号該当性もうかがわれない。では、参加的効力はAに及んでいるのか

(1)参加的効力の正当化根拠は、補助参加により手続保障の機会が与えられていたことに対する自己責任である。そして、補助参加の利益は上記の通り「訴訟の結果」につき法律上の利害関係を有する者であれば認められるのだから、補助参加による手続機会の保障は「訴訟の結果」につき与えられていたと言える。そのため参加的効力は「訴訟の結果」につき及ぶものと解する。

(2)上記の通り、代理権の授与及び表見代理の成否は「訴訟の結果」に該当する。したがって、かかる事項に参加的効力が生じている。

3したがってAの主張はかかる事項と矛盾するものとして参加的効力により排斥されるべきである
以上


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