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再録「あのときアレは高かった」〜ああ、憧れのレディーボーデン

「あれ、欲しい!」

そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。

昭和の、子供には「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。

     ◇

今も昔も、子どもにとってアイスクリームは最高の楽しみだ。「これをひとりで全部食べてしまいたい…」。恨めしげに下から見上げる妹を尻目に、何度そんなことを思ったことだろうか。

しかも、このアイスへの「憧れ」は、昔と今では程度が違う。今の子どもたちにとってのアイスが「北海道」ぐらいの到達点だとしたら、昔の子どものそれはほぼ「北極」。(お手伝いなど)相当の努力を重ねないと、めったに到達できない、まさに壮大な夢のようなごほうび(到達点)なのであった。

まずは冷凍の問題である。

1971(昭和46)年当時、現在のような冷凍冷蔵庫は、ちょうど普及が進行している最中だった。私の家にはそんなコジャレたものはなく、安物のシャーベットを作る製氷コーナーがあるだけの冷蔵庫。アイスなんてものはその場で買って食べ、最後にはデロデロになるのが当たり前のものだった。

そんなある日、お金持ちの家に遊びに行き、そこで見たレディーボーデン。それを見た時の感動はすごかった。

こ、こんなものが、食べたい時にいつでも食べられるのか……。

レディーボーデンは、米ボーデン社と明治乳業の共同開発によって、71年に生まれた(現在はロッテとのライセンス契約)。当時の価格は、950円(950ミリリットル)。現代の価格に直すと約2800円である。

その後の経済発展により、瞬く間に冷凍庫は普及。アイスクリームも身近に楽しめるものになった。だが、あの炎天下に見た、まるで幻覚のようなレディーボーデンのたたずまいを、私は一生忘れないだろう。

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