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HPDU 2020のR4のPMへのフィードバック

HPDU 2020の予選4ラウンド目に私がジャッジをしたチームのPMさんから個人フィードバックをお願いされました。大変勉強熱心ですね。

内容としては、どんな価値ディベートにおいてもするべき比較方法とどんなフェミニストムーブメントモーションにおいても話せる内容なので、もしかしたら他のディベーターさん達にも参考になるかもしれないと思い、その方に送ったフィードバックをこうした形でネットに載せることにしました。

ちなみにモーションはTHBT the feminist movement should oppose affirmative action for womenです。

お名前だけ省いてフィードバック内容を載せておきます。

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メールありがとうございます。うまくなりたい気持ちに溢れてて素晴らしいと思います。
今回見させてもらったラウンドでのスピーチは分析とイントロがとても良かったと思います。

以下3つほどアドバイスです!

アドバイス①:分析をしっかり活かすために次の2点を必ずアーギュメントに含める。

[1] 相手チームとの比較をして、相手チームと何が違うのか、どんなことが差なのか説明する

今回PMさんから出てた分析は、a)会社のトップは男性ばかり

b)男性は自分に反対しなさそうな男性を部下にしたがる

c)自分より高いポジションにいる女性を男性は嫌うことがある

d)周りの男性はアファーマティブ・アクションで女性が昇進したりすると努力をせずに昇進したから嫌がらせなどをする

の4つだと思いました。

これに比較を付け加えるとしたら、

a)女性が昇進したり男性の上司や同僚に良い評価をされるのは難しい現状の中、アファーマティブ・アクションのせいで昇進したり採用された女性は余計良い評価を受けるのが難しくなったりそれ以上の昇進が見込めなくなる

b)女性を取り巻く労働環境から心地よく働くための障害を取り除くことをフェミニストは応援するべきなのでadditional reason to receive gender based discriminationにあたるアファーマティブ・アクションに反対するべきである

c)オポはアファーマティブ・アクションのおかげで採用されたり学校に入れることだけでも良いと言うかもしれないが、そもそも現状の厳しい状況下においても能力のある女性は入学できたり採用されたり昇進できているので、そういう女性たちが新たにdiscriminateされうる原因には反対するべきである

とかですね!

[2] 相手のチームもagreeせざるを得ない現状分析やゴールを説明してから、なんで自分たちのほうがそのゴールにより近づけるのか説明する

これも上記の言ってくれていた分析に追加できることを説明します。

a)現代では教育や仕事の環境に女性が参入すること自体は可能です。ただ、参入できても収入が低い仕事にしか採用してもらえなかったり、社会が勝手に決めつける女性が不得意な分野の学問や仕事にはとても就きづらいです。また、説明した通りその教育や仕事の機会にありつけても、その中で高い評価を得たり昇進するのが男性よりも難しいです。この現状分析はオポも賛成してくれると思います。また、そうした職場改善をするべきなのはフェミニストムーブメントとして推すべきことなのもオポは賛成してくれると思います。

b)そうした状況の中、現代の女性が必要なのは、入れた学校や会社の中で男性と同じように評価してもらう社会をつくることです。

c)アファーマティブ・アクションの特徴は、必ずしも評価が高くなくても学校に入れたり、仕事に採用されたり、昇進できることです。これは、何を意味するかというと、評価が足りなくてもいいということです。

d)説明したとおり、すでに仕事や学校にいる女性は男性から評価してもらうことが難しいのに、アファーマティブ・アクションで採用されたりすると反感を買うだけではなく、評価をそもそも受けにくい女性が採用されるので、余計評価や昇進に繋がりにくいです。

e)また、嫌がらせなどを受けることにより、女性自身がせっかくその学校や会社にはいれても、いじめられたりセクハラされることが理由でやめてしまうかもしれません。

f)よって、反感を受けて評価を難しくしたり嫌がらせによりせっかくたどり着けたポジションを諦めさせてしまう原因になるアファーマティブ・アクションは、現代の女性を応援するフェミニストムーブメントとしては反対するに値します

どちらの方法でも共通しているのは相手チームとの相違点を説明することです。そうするとジャッジは片方のチームに投票すると可能になる世界がもう片方のチームに投票すると起こりうる世界と何が違うのかわかりやすくなり、どっちに投票するか考えやすくなります。また、方法2であるように、相手チームとの共通ゴールなどを示しておくと、「そのゴール達成にはどちらのチームに投票するべきなのか」を比較しやすくなります。

アドバイス②:フェミニストムーブメントが反対すると何が変わるのか話す

フェミニストムーブメントは理想を掲げるだけではなく、活動家グループとして社会を変えることにコミットしています。なので、今回のモーションにおいても、フェミニストムーブメントがアファーマティブ・アクションに反対すると社会にどのような変化が起きるのか話せます。例えば以下のようなことが言えると思います。

a)そもそもアファーマティブ・アクションを推奨し実施してきたのはフェミニストムーブメントなので、フェミニストムーブメントがこれに反対することでアファーマティブ・アクションの実施ケース自体も減ると思われる

b)アファーマティブ・アクションは性差別を以て性差別を制しているので、性差別に反対しているフェミニストムーブメントとして今までnecessary evilとしてやむを得ず推し進めてきた。しかし、ジェンダー差別を禁止する法整備などが進んだことで女性が教育や有償労働に参入すること自体は可能になってきているので、もう必要がない。

c)そうした環境の中での上の役職や評価が高い女性が少ないのは、アファーマティブ・アクションでは解決できる問題ではないし、上記にもあるようにcounterproductiveな場合も大いにある。

d)よって現状のジェンダーにまつわる差別的にアファーマティブ・アクションは手法として必要ないしcounterproductiveなので、反対するべき。そして、反対してどんどんアファーマティブ・アクションの実施例も減らしていくように社会に働きかけるべきである。

e)フェミニストムーブメントは時代ごとに短期的なゴールや課題設定を変わりゆく社会に合わせて変えることによって、社会変革に成功してきたので、今までと同じように社会の変化に合わせてアファーマティブ・アクションには反対するべきである。

f)仮にすぐには全てのアファーマティブ・アクションがなくならなくても、反対し始めることが社会の変化のきっかけになるし、フェミニストムーブメントに賛同している人たちによって現行のアファーマティブ・アクションは実施されているので、フェミニストムーブメントがリーダーシップをとり、もうそれは必要ないという理由で反対しはじめないと社会は変わらない。

こんな感じで社会とフェミニストムーブメントのつながりや、これまでフェミニストムーブメントがやってきたこと、そしてジェンダー差別の変移などを話すことによって、今必要なフェミニストムーブメントはなんなのか、そしてアファーマティブ・アクションがそれに適しているのかが説明できます。

アドバイス③:今回のように政策モーションではなく、とある立場からの価値モーションの場合、after this motion is adoptedなどのフレーズは使わないようにする

どうしてもジャッジをしていて気になったのは、そうしたフレーズでした。このモーションはアファーマティブ・アクションを廃止するモーションではないので、ガバにvoteしてもアファーマティブ・アクションはなくなるかわかりません。なので、なるべくこうした価値モーションにおいては、現状vsアフタープランという比較のしかたよりも、ガバの世界とオポの世界を比較するようにして、フレージングでもそれを意識しましょう。In our pradigm, in our world, in the government/opposition’s worldなどと言い換えるようにするとジャッジは「お!ちゃんとモーションに関連性の高い比較をしているな!」とか「ちゃんとこのモーションにおける証明責任を果たそうとしてるな!」と思ってくれるようになると思います。

アドバイスは以上です。質問があったら気軽に聞いてください!またいつか大会や練習でお会いできることを楽しみしています。

HPDU全国大会お疲れ様でした^^

めい

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