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発声訓練のエビデンスという話

改まって、少し乱文を。


0.ボイストレーニングにエビデンスはあるのか?

まず、エビデンスとは、というところですが。

一般的には複数の研究が同じ結果を指し示すことを証拠と考える。

『医療情報をわかりやすく発信するプロジェクト』より

広辞苑でも何でも引けば良いものでしょうが、ネットでパッと見つかった範囲では上記の通りと思う所です。

ボイストレーニング、と言うと範囲が広いと言われましたし、そこは個々人の何やかんやにもよるかと思います。
個人的にはボイスボーカルとでトレーニングの区分けをしているつもりですが、ここではより明確に発声訓練を区切りましょう。

また、更に絞るならここで言う発声訓練メロディのような音声移動を含まないくらいの、より狭い範囲での話でも良いと思っています。

0-100で語るものでは無いのは大前提として、ですが。

2008年と古い情報によるシステマティックレビューのようなものですが、結論としてここでは、有意に改善は得られるものの決定的なエビデンスは無いとしています。

中身をしっかり精読しないと語り切れないところは棚に上げておきますが、ただ言ってしまえば十数年前で10件しか対象になっていない、というところも注目すべき点では無いかな、と思っています。

情報の古さはありますし賛否は承知の上ではありますが、現状では発声訓練におけるエビデンスは弱い、と考えております。
知っている範囲でエビデンスレベルの高い近い分野の手技ってパーキンソン病etc向けのLSVTくらいです、発話明瞭度だけど。
VFEとかはどうだか、あまり詳しくはありません。

1.≠科学的根拠に基づいていない

世には科学的を掲げる諸々がありますが、それらはエビデンスを欠くか、という所ですね。
結論としては、決してエビデンスを欠くわけでは無く、むしろ科学的は科学的で差し支えないと思います。

あまり明るい分野では無いですが、音声学を中心とした諸学問と歌唱発声の因果関係は大いにあります。
また、Vocologyという発声科学の分野も勃興しており、流れとしては発声訓練を支持する背景は固まっていっていると予想します。

有識者の方と意見を交わした際、エビデンスレベルの話になりました(というかこちらから吹っ掛けたような形ではありますが)。

発声科学として、ミックスボイスetcは徐々にエビデンスレベルが高まっていることは違いないと予想します、あくまでもよくdigれていないので予想ですが。
ただ、ここで気を付けたい事と言いますか、「ミックスボイスの原理」が判明していっているだけで、「その道のり」である発声訓練に対するエビデンスは強くなっていないのではないか?という点です。

ゴールや関連領域から推測され得ることを中心に発声訓練も構築されると予想しますし、それ自体は効果的であるとは思われます。
これはまさに、科学的根拠に基づいているからこそ出来る再現性の高さに違いないのではと考えます。

2.発声訓練にエビデンスはあるのか?

しかし、その訓練手技自体に関してエビデンスは正しく構築されていっているのか?という問題があると思っています。

一般的には複数の研究が同じ結果を指し示すことを証拠と考える。

『医療情報をわかりやすく発信するプロジェクト』より

再度確認しますが、エビデンスと言うならば上記のような状態と思います。

ことボイストレーニングの範疇における発声訓練において、複数の研究が実現されていないという事実があると思うわけです。
研究には数が要るわけで、ケースレポートの積み重ねから徐々に一般化が図られて行き、結果的にエビデンスレベルが高まると言えるのでは無いかと。

ここに関してはメソッドがビジネスとして成り立っている側面は大きいと思います、情報価値を高めることがブランディングの側面を帯びるのかなとも予想しますので。
中身が良いものでも、広く見られ検討されないことには「エビデンス」という観点では低いままの「専門家の意見」の域を出ないままにならないか、と思う所です。

チラチラPubMed見ながらやってましたが、ここまでやってエビデンスの獲得、と思う所であります。
Estllがやはり…と思う所です。
ジャーナルのIFは2.3とかだったので、アカデミックシーンから見るとまだまだまだなんでしょうが、IFついているジャーナルに載っているので凄いです。
確か国内学会誌では付いてこないものだったと記憶しています、英語が出来んといかんのですな、あまり詳しくも無いですが。

話を戻しますと、エビデンスを築く流れは来ていると言える所ですが、じゃあ国内ではどうか?という感じです。
海外メソッドの大御所がやってくれれば良いだろう、とするならそれはそれでとも思います。

3.気にかかったこと:悪いボイトレ

意見交流をする中で、「知識のないボイトレは危険な可能性がある」ようなことを聞きました。

肌感ではわかるのですが、何をどうすると具体的にどうなってしまうのかというのは正直知らない所なのです、お恥ずかしながら。

STをしている範囲ではありますが、音声障害に対する治療において明確な禁忌事項ってそう思いつかない所です。
声帯麻痺の方へ気息性を高めそうな裏声をしてどうする等あれど、有効な手技が推奨されている程度です、教科書は。

ボイトレシーンに比し、対象が異なることを加味してもSTの音声治療は遅れている側面は強いです。
他方、遅れている背景は明確なエビデンスが取れていかないからでは?とも予想されます、あくまでも予想。

SOVTEだったか覚えていないですが、喉頭にリラクゼーションかける系の訓練も過緊張な発声に有用であって麻痺には適応外みたいな、そういったものだった記憶があります、余談ですし別の手技だったかもしれません。

ボイトレシーンで、明確に発声障害を引き起こし得る何かがハッキリしているのであれば、それこそまとまった情報として表に出してほしい所であるなと思います。

勉強不足と言われればそれまででしょうが、相対的にアンテナを張っている寄りの現役言語聴覚士の自分も知らないことを大多数のSTは知らないです。
そのボイトレにおける禁忌事項(相対にせよ絶対にせよ)があり、それが音声障害に繋がる可能性が考えられるのであれば尚更…と思います。

因果関係を示して、治療法を実施することで逆説的にと言いますか、帰納法的に問題を提示しようと思えば出来るのでは無いかなと思います。
それが1例では無く、どんどん積み重なって行けば医学シーンにも影響を与え得るでしょうし、音声治療で泣きを見てボイストレーニングへ駆け込む人も減るという所では無いでしょうか?と。
無論、駆け込まれた側だったSTなり医療職ができる事・すべき事は大いにありますし、こちらはこちらで努力が必要です。

音声衛生上、そのように重要なことが周知されていないのは何故か、あるいはされているとしてその拡散力が無いのは何故か。
また、それ自体はエビデンスが構築されようとしているのか、気になる所です。

4.「エビデンス」が全てか

エビデンスしか言わないじゃないかと苦言を呈されそうですが、エビデンスの獲得を目指すことは大切だと思います。

明確で客観性の高い根拠を獲得していかないと、研究規模が大きくならないのでは無いかと思うわけですね。
ここで言う研究は即効性のある何かというより、基礎的な研究のイメージではあります。

エビデンスの獲得はそのコンテンツにおける社会的意義を高める有用な手段と思っています。
別に研究らしいことまでしなくても出来ることは多いですし、どうとでもなるんでしょうけどね。

個人的にですが、デスボイスのエビデンスの獲得を目指しているのは社会的な価値を高めたい側面があります。
あの発声メカニズムが少し拓かれれば、発声科学にも音声医療にも音響工学にも何か影響を与えられるのでは無いか?と思うわけです。
そうするとですね、意義がある研究となればその先に繋がって、もっと研究出来るわけですよ、お得でしょう?

大事なことではありますが、エビデンスは絶対的な根拠になり得るわけでは無いとも思いますが、少なくとも多方から専門家に突かれずにいるより余程固い事実になれると思っています。

コンテンツの社会的価値を高め、国から資金を捥ぎ取る、その手段と思っている節はあります。
そう簡単な話では無いと思いますし、まぁ金にならない道だなとは思うんですけど、より事実に対して真摯に向き合うならこれかなと思うので。

それに、先行研究があると後追いが続いてくると思うんですよね。
生きている間の富の獲得より、22世紀まで研究される土台を何か投げつけられないかと足掻いている所存です、誰か変わってほしいです。

5.終わりに

発声訓練のエビデンス、というところで書き殴りました。

ご意見の中に、ケースレポートを集める上での倫理的問題・課題や広く目に触れることの危険性などのお話も聞き、盲点も多かった所ではあります。
言ってしまえばボイストレーナーであるなら民間資格ですからね、何なら何も無くても名乗れるので。
他方、言語聴覚士等の国家資格で行われていることを流用しようとしていたわけなので、色々と違ったなと思いました。
それは知識量による所のむらより、立場的なものやバックグラウンド的な所が非常に大きいかなと。

また、意見を交わす中でも複数の面で価値観の違いを感じた所でもありました。
これは推測するにですが、どのシーンに身を置くかもとい師事した人の考え方による所なのかな…とは思います。

あと、素直に改めて音楽というか芸術関連に対する疎さが露呈したなぁと思いました。
その辺りの素養があればバンドマンをしているか、それこそボイストレーナ
ーを順当にしている道も大いにあったと思います。

事実確認にとらわれまくった結果です、まぁでも他でいないポジショニングではあると思うので、多様性ということで。

コツコツと、何年かかるかわかりませんけども、工学的な見地から言語聴覚士がデスボイスの研究をするの実現目指して善処します。

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