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サタニックラブ殺人事件


★サタニックラブ殺人事件 
 こちらは思春期以降もゴスを引きずるというより、むしろズブズブにはまっていく話です。
 前回のゴスラブ殺人事件が2006年、こちらの事件の方はその前の2001年に起こった事件です。
 1990年ドイツには、サタニズム、ヴァンパイアカルチャー、そしてネオナチなどが入り混じったゴスムーブメントが発生していました。

 ダニエル・ルダはこのゴスカルチャーにどっぷりはまっていきました。メタルを聞き、人間の血を吸ってみたいという妄想にとりつかれていきます。小動物の虐待や、放火などの繰り返し10代前半から警察に何度も捕まりました。人に触れられることを極端に嫌い、ハグや握手などを避けました。狼男、吸血鬼、モンスターに惹かれていきました。また14才のころからサミュエルというサタニックな精霊を見るようになりました。さらに大人になったらいつか大量殺人をしたいという夢を持っていました。そしてアントン・ラヴェイが書いたサタニックバイブルを常に読みこんでいました。また1930年代のナチ思想に似たNPDナショナルデモクラティックパーティーという右翼思想に傾倒していました。ネオナチバンドのフライヤーやチケットを配ったりしてナチ活に精を出しちゃっていたのです。

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 実際には80年代のイギリスのクラブシーンを中心にブームになったゴスカルチャーはこれらの右翼的ナチ思想やサタニズムには基づかない、音楽やファッションに根付いたものでした。
ダニエルはブラッドサッキンググフリークスというバンドに加入しました。同じタイトルのトロマの映画があるので、影響されたのかもしれません。しかし長続きはせず、ダニエルはたったの3か月で首になったか、やめたかしたそうです。ExhumedのTシャツを着ている写真があるのでデスメタルとかブラックメタルとか好きだったみたいです。そしてこの頃から悪魔や精霊ではなく、サタンの声が直接聞こえるようになったと言います。彼はサタンに選ばれし者で、生贄を地獄へ運んで来いと指示されるようになります。
彼はある時、音楽雑誌Metal Hammer メタルハンマーの友達探し欄に、こう書きました。

我は黒髪の吸血鬼、同じように全ての物や人を憎んでいる暗黒のプリンセスを探している。一緒にこの世からおさらばしよう。 

この広告に返事をしたのがマニュエラでした。
幼少期のマニュエラは比較的いい子でしたが、13歳ごろからだんだんゴスっていき、ついに道ばたで赤の他人に突然かみつき、親に精神病院に連れていかれます。自殺してサタンの生贄になることを夢見る少女でした。14才の時、ヘロインのオーバードーズで自殺を図りましたが、未遂に終わりました。そして16歳で家出しました。ハンノーバーに少し住んだあと、イギリスへ渡りました。当時ロンドンには大きなゴスシーンがあったからです。スライムライトというゴスバーには、Bite Partyバイトパーティーという人を噛んだり噛まれたり、血を飲みあったりするのが好きな人が集まるパーティーがあったそうです。彼女は血を飲み、髪を黒く染め、ゴスファッションに身を固め、墓地を徘徊したりしました。それでどうやって生活するのと思われるかもしれませんが、一応ゴスの読者モデルとして雑誌に載る他、ホテルのメイドとして昼間は仕事もしていました。

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しかしそのホテルが冬季は数か月閉まってしまうので、スコットランドへと移動しました。そこのゴスグループは深夜にこっそり墓地に集まり、実際土葬された遺体を掘り起こしたりもしていたそうです。マニュエラは死体のそばに横たわり一晩過ごすことを夢見ました。そしてある夜我慢できなくなって一人でこっそりと墓地へ行き、一晩を過ごしました。そこで彼女は臨死体験をし、サタンの声を聴き、ゴスグループとつるむことはもう意味がないと悟りました。スコットランドのアイルオブスカイで、ハウスメイドとして働き、そこでトムに出逢いました。

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トム・レパードは全身をヒョウ柄のタトゥーで覆われ、当時世界でもっとも多くのタトゥーを持つ男としてギネスに載っていた人物です。孤独を愛する彼はそこで一人ひっそりと暮らしていました。町には月に一度だけ食料調達のためにおりてきます。二人の年の差は大きかったですが、ゴスの師匠と弟子という関係でしばらく一緒に暮らしました。マニュエラもトムの真似をして自分の歯に動物の牙を装着しました。
彼女は6ケ月後にドイツの家族の元に帰りました。彼女の家族は彼女の見た目や昼間は寝て夜だけ起きているという行動などが受け入れられず、彼女はまたすぐ家をでました。
 そこでメタルハンマーに掲載されていたダニエルのアドをよみ、二人は墓地で待ち合わせをしました。お互いすぐに恋に落ち、墓場デートを繰り返しました。ふたりはよく小動物の死体を生贄として持ちよりました。トサツ所で血を買い、二人で飲んだりもしました。#サタニックカップルゴール ですね。やがて二人は同棲をはじめ、壁を真っ黒に塗り、ドクロや悪魔の絵でかざりつけ、棺桶で眠りました。マニュエラはダニエルの胸にナイフでペンタグラムの傷をつけました。ダニエルはサタンの声を聴き、それにしたがいハロウィンの日にマニュエラにプロポーズしました。ふたりは6月6日に結婚しようということになりました。そして一緒に自殺して、永遠にあの世で一緒になろうという話で盛り上がりましたが、二人は地獄にいくには殺人をおかさなければならない、人間を殺してサタンに生贄としてささげないといけないと思うようになりました。

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殺人は結婚から一か月後の7月6日に実行されました。生贄に選ばれたのは、ダニエルの職場での知人33歳のフランクでした。明るく社交的な性格で人に好かれ、また人を見た目で判断しないため、ゴスなダニエルやマニュエラにも優しく接していた人物でした。マニュエラは母親にわたしはもうすぐ自殺しますという内容の手紙を出し、7月6日彼らはフランクをディナーパーティーに招待しました。パーティーといいながら、フランク以外誰も来ません。二人はCannibal Corpse  カンニバルコープス を流しました。93年にリリースされたHammer Smashed Face  ハンマースマッシュドフエイス でした。おもむろにダニエルは立ち上がり、別室からハンマーを取り出すと、背後からフランクの頭に振り落としました。マニュエラもナイフをつかむとフランクに刺しかかりました、この時も頭の中でサタンのやれ!という声が聞こえたそうです。彼女はフランクの体を66回刺しました。二人は息絶えたフランクの血を飲むと、死体のそばで初めてセックスしました。

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 しかしだんだん不安になってきました。サタンが訪れ何かアクションを取ってくれると信じていたのに、まったく何も起こらないからです。生贄がもっと必要だと感じました。
7月9日、手紙を受け取ったマニュエラの母は心配し警察と共にマンションを訪れました。彼らが見つけたのはマニュエラではなくフランクの遺体でした。壁には血で15人の名前がずらりと書かれていました。名前の横には『よかったね、あなたは次に殺される』と書かれていました。15人の人々は警察の保護を受け、3日後にダニエルとマニュエラは逮捕されました。

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 ダニエルは殺人を犯してチャールズ・マンソンより有名になりたかったと語っています。
2002年1月裁判所ではマニュエラは頭の横を逆十字型に剃り上げていて、ふたりはカメラに向かってメロイックサインをしたり、反省する様子は見られませんでした。
 診断の結果、ふたりとも精神病と判断され、マニュエラは13年、ダニエルは15年の刑になりました。二人は離婚し、自分より早く出所するマニュエらが許せなくて、2017年、ダニエルは彼女を殺そうと計画したりしましたがもちろんうまくいきません。マニュエラは出所、ダニエルは現在も服役中です。CAT 【デスラジオ E97 2021年4月30日配信】



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