ヘヴィメタルガチ勢が解説するMÖRK BORG

最近Twitterで目にするMÖRK BORGというTRPGが気になったので、自分もPDF版のルールをDrive thruで購入してみました。
なんでもそのゲームの触れ込みが"A DOOM METAL ALBUM OF A GAME."(ドゥームメタル・アルバムのゲーム)とのこと。

自分は高校生ぐらいの頃からヘヴィメタルを聴くようになり、27歳である現在も基本的にはヘヴィメタルを聴いているので、メタラー歴はおよそ10年ぐらいになります。

MÖRK BORG自体はそこそこ話題ですが、ゴリゴリのメタラー目線の話題があまりないなと感じたので、自分なりに解説などできたらいいなと思ってこの記事を書いてみることにしました。

……と言いたいところなんですが、残念ながら自分はドゥームメタルはメインで聴いているジャンルではないので正直あまり自信がないです。
(自分がメインで聴くジャンルはメロディックデスメタル・インダストリアルメタル・ブラックゲイズ辺りがメインです。)

とは言っても「メタルはまったく聴かないよ」って人よりは知っているはずなので頑張って解説してみたいと思っています。

そもそもドゥームメタルって何?

ヘヴィメタルと言えば、BPM高めでギターピロピロでツーバスがドコドコ言ってるイメージが強いんじゃないかと思います。

ですが、ドゥームメタルはそんなヘヴィメタルの中で、ゆったりとしたテンポやダウナー感が特徴的なヘヴィメタルのサブジャンルの一つです。

最も有名なバンドとしてはブラック・サバスが挙げられると思います。
(ジョジョの5部に出てくるスタンド名として有名ですね)

ヘヴィメタルのサブジャンルは非常に多彩であり、細かい分類も全て含めると50種類は優に超えていると思います。これらは音楽的特徴に留まらず、宗教・哲学・民族的な価値観やカウンターカルチャー的な思想を大きく反映することもあります。

このルールブックを購入し、真っ先に読んだのは"Music that helped"の項目でした。自分が元から知っていたのはだいたい3割程度で、それ以外はマジで誰やねんという感じです。後から調べた情報もありますが、基本的にはドゥームメタルブラックメタルのどちらかに属しているバンドが記載されているなという印象です。

これはゲームの世界観としても非常に納得できるものだったので、音楽的な視点を絡めてMÖRK BORGの世界観を探っていきたいと思います。

ドゥームメタルについて

とりあえずヘヴィメタルそのものが誕生した経緯については全てすっ飛ばして、ドゥームメタルというものが生まれ、一つの音楽ジャンルとして確立されていった経緯について話していきたいと思います。

ドゥームメタルの成り立ちは、前述したブラックサバスの1stアルバムであるBlack Sabbath/黒い安息日を起源としているとされるのが一般的です。この作品の時点で、遅いテンポヘヴィな音を強く意識した楽曲が多く収録されています。

歌詞においても終末破滅を題材としたものが多く、MÖRK BORGの絶望的で黒く陰鬱な世界観として色濃く反映されています。

ルールブックのMusic that helpedに記載されている中では、Electric Wizardが最も著名なバンドではないかと思います。ということで、Electric Wizard の Funeralopolisという曲の歌詞をピックアップしてみたいと思います。
(歌詞は自力で和訳しているので結構ガバガバです)

Funeral planet, dead black asteroid
葬儀の惑星、死んだ黒い小惑星
Mausoleum, this world is a tomb
霊廟、この世界は墓標だ
Human zombies, staring blank faces
人間は生きる屍、何もない貌を見つめている
No reason to live, dead in the womb
生きる理由などない、子宮の中で死んだ

とまあこんな感じで、陰鬱で暗~い単語がひしめき合っており、まさしくMÖRK BORGの世界観に近いことがよくわかります。

他にはドローン・メタルと呼ばれるドゥームメタルからさらに派生したサブジャンルがあり、ルールブックに記載されている中ではEarthSunn O)))がこのジャンルに該当します。

実験音楽的な側面も持っているジャンルであり、人間が音楽として認識できるギリギリの音が沢山聴けるので、一見(一聴?)の価値があります。

しかし、MÖRK BORGに含まれる悪魔的・冒涜的な部分についてはドゥームメタルを構成する要素としては薄く、どちらかというとブラックメタル的な思想になると思うので、次はそちらについて解説します。

ブラックメタルについて

ブラックメタルの起源はスラッシュメタルバンドであるVenomの2ndアルバム、Black Metal/ブラック・メタルがその起源とされています。

それに他のグループが追従する形で少しずつ1つのジャンルとして形成されていきました。現在ブラックメタルも様々な派生ジャンルが存在しますが、共通している要素としては、よりノイジーで高音域なギターサウンドや、唸り声や金切り声を多用したボーカルが特徴として挙げられ、ドゥームメタルとは真逆の方向性で進化していったサブジャンルになります。

ファッション的にもコープスペイント(死化粧)を施すバンドが多いことも特徴的です。(デトロイト・メタル・シティのクラウザー様とかを思い浮かべていただくと分かりやすいと思います)

宗教的思想として反キリストという要素が少なからず存在しているジャンルでもあり、この辺りの話も非常にややこしいですが、基本的にはサタニズム(悪魔崇拝)とペイガニズム(土着宗教)のどちらかに分類される感じです。
(バンドメンバーが実際にそのような宗教的価値観を持っているか、もしくはバンドのプロモーションの一環としてそのようにしているかは問いません。サタニズムを謳っているブラックメタルバンドのメンバーでも実際にはキリシタンであるというパターンはわりとあります。)

ただし、ペイガニズム的な思想のヘヴィメタルはペイガンメタルという個別のサブジャンルとして分類されることが多いです。

実際、MÖRK BORGのルールブックに記載されいるバンドはペイガンメタル系は少な目ではありますが、世界観的には少なからず影響を受けているのかなぁという印象を受けます。

そしてブラックメタルとして最大の転機となったのが、ルールブックにも記載されているバンドのMayhemDrakthroneおよびブラックメタル・インナーサークルのメンバーを中心として実際に起きた事件です。

ちなみに、この話を題材とした映画も昨年公開されました。個人的には生涯のベスト映画TOP10に入るレベルの作品です。

ざっくり内容を話すと

「バンド活動のキャラ付け的なノリとしてヤバイ奴を演じていたらマジでヤバイ奴が加入してしまった」というもので、結構ショッキングな内容です。

MÖRK BORGの世界観とは直接的な関係はあんまりなさそうなので詳細は割愛しますが、実際に起きたとは思えない狂ったエピソードの連続なので興味のある方は色々調べていただくと良いかと思います。

MÖRK BORGの世界にあるPalace of the Shadow KingなんかはMayhemの中でも著名なアルバムであるDe mysteriis dom sathanasのアルバム・アートワークをなんとなく想起させます。

画像1

このゴシックホラー的な世界観は間違いなくMayhemなどのブラックメタル系バンドの影響を強く受けていると感じられます。

グラインドコア(ゴアグラインド)について

ここまでドゥームメタルとブラックメタルについて話をしていきましたが、グラインドコアというジャンルについても話をする必要がありそうです。

実はルールブックにはグラインドコア(およびゴアグラインド)に直接的に属するようなバンドはMusic that helpedに記載されていない(と思う)のですが、ルールブックに載っているイラストが無駄にグロかったり、いきなり心臓の実写の写真が使用されたりというのはゴアグラインドのセンスそのものであると個人的には解釈しています。

Wikipediaにも記載されていますが、グラインドコアはNapalm Deathというバンドが起源であるとされています。

余談ですが、Napalm Deathの楽曲の一つYou Sufferという曲は世界一短い曲としてギネスに認定されており、あのトリビアの泉でも取り上げられたのでご存じの方も多いかもしれません。カラオケでも歌えます。

一応Music that hepledの欄にCathedral,With the Deadというバンドが記載されているんですが、これは過去Napalm Deathに所属していたLee Dorrianが立ち上げたバンドなので、これもグラインドコアの影響を受けていると感じた理由の1つです (この2バンドはどちらもドゥームメタルバンドですが)

そして、おそらくNapalm Deathで最も有名なアルバムがこちらです。

画像2

MÖRK BORGのイメージカラーも黄と黒、モノクロのイラストなので、デザイン的にもある程度こういったアルバムから影響を受けたんじゃないかという話です。(この話には一切根拠はないですし私の推測でしかないので、話半分でお願いします。裏を取るつもりも特にないです。)

そして、そこからさらに悪趣味な方向に派生していったのがゴアグラインドという音楽ジャンルです。ゴア(Gore)は血だまりとか血の塊みたいな意味の英単語で、動画や画像を貼るだけで方々から怒られそうなものばかりなので、興味がある方だけご自身で検索していただければと思います。

CarcassやCannibal Corpseあたりを調べると、私の言いたいことがなんとなく分かるんじゃないかと思います。

総括

あまり話を広げすぎないように自重しながら書き進めていったので、最終的には結構少なめの文字数となってしまった気もしますが、こんなところで動画を締めくくりたいと思います。MÖRK BORGの世界観の理解の一助になれば幸いです。(実は自分はこのTRPGでまだ遊んだことないです、なので同作品自体の理解度の方が足りていない可能性がめっちゃあります)

最後に、本記事はメタルとか全くわからんという人を対象に書いた記事であり、細かい話をすると本当にキリがないので、明確には間違っている部分もある可能性があることをご承知おきください。

私の知識が不足している部分も多々あったと思います。ご意見やご指摘があれば後日修正するかもしれないのでよろしくお願いします。

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