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マリア様はご機嫌ナナメ 17 決戦、そして旅立ち

 僕は早稲田の受験のため上京した。今度は新幹線に乗ってだ。勿論、ヒナコとマリアがくれたお守りを持って。
試験日はとても寒い日だった。でお、頭に血が昇っていたのか僕は寒さを感じなかった。試験を終えた僕はトンボ帰りで新幹線に乗った。手ごたえはまあまあだったが、国公立の試験日まで気を緩めるわけにはいかない。僕は「大阪市立大学」の赤本を出して読み返した。

 家に帰ってまた勉強を再開したが、やっぱり早稲田の結果が気になる。気持ちばかり焦る。そしてイライラする。
翌日、僕は高校を訪ねた。松本先生に会って学費の件のお礼をもう一度言った。
松本先生は学年末試験と来月の高校入試の準備に追われてた。
 「先生、世の中なかなか厳しいもんですね。一緒に受験した人たちの顔を見てると、みんな自信満々やった」
「そうやな、でも進堂も頑張ったんやろ。
頑張ったからそう感じるんや」
「先生、学校の先生の仕事はどんな感じですか。僕も先生と同じように市大にいって先生のような教師になりますわ」
「えらい弱気やな、それとな教師の仕事もヤリガイあるけど。まあ、市大にいったたら、ゆっくり話したるわ。それより初志貫徹やで、早稲田、早稲田、早稲田やで!」
まるで自分が早稲田へいくみたいだった。

 僕はマリアのことが気になって、公衆電話から彼女に電話した。三十分後に万代池で会うことにして、阪堺電車上町線に乗った。過ぎ行く窓の外の景色はとても寒そうだった。

 遊歩道を歩きながら、彼女は僕に、
「どうだった、手ごたえは?」
「自信なくなったわ、回りのみんなの顔見てたら、みんな自信満々やったで」
「えらい弱気やな~そんならウチが温めたるわ」マリアは僕のダッフル・コートの左ポケットに手を突っ込んで僕の手をギュと握りしめた。
「私のことやったら、もう心配はいらんよ。心の整理は出来たし、泣かない自信ははあるで」
「ほんまかよ」
マリアは握っていた手を離し。ポケットから右手を出して、僕の背中をポ~ンと叩いた。
「ほんまや、東京でも江戸でも、何処でも行ってきなはれ」
ワザと大阪弁で言って笑顔を作った。
僕はありがたかった。そして、女は強いな~とつくづく思った。
「でもな、行くまではキス攻めやで。覚悟しといてや」
「分かりました軍曹殿」
僕は直立不動の姿勢で敬礼した。
「ヨシ!」
マリアと僕は一緒に笑い出した。それから僕たちは人もまばらな冬の遊歩道を歩き、時々マリアはキスを要求した。

 結果が来た。
 
 合格

 僕は合格通知と入学手続きの書類の入った「早稲田大学」と印刷された封筒を詰めたカバンを持って本屋に飛んで行った。
カズオさんもタカオさんも僕の両肩を叩いて喜んでくれた。
 その後、、松本先生に報告するために学校に行った。
「やったな」
松本先生は右手を僕に差し出した、僕はその手を両手で握り、
「ありがとうございます」
と答えた。

 マリアに電話した。
「これから会いにいくわ」
「どうだったの?」
「会って伝えたいんや」
 僕はマリアの待つヒナコの家へ急いだ。

 「おめでとう!」
マリアもヒナコもヒナコのママも祝福してくれた。
「やっぱり、カイにはマリア様がついてたな」
ヒナコは泣き笑いで言った。
マリアの目は涙で溢れていた。
「カイのバカ野郎!」
彼女らしい祝福が嬉しかった。

それから、入学手続きや上京の準備、そして高校の卒業式であっという間に時間が過ぎた。

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