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あの日のために野となれ山となれ

たった一度でいい。
魂が震えるほどのよろこびを味わったのなら
その人生には生きる価値があるんだ、と。
どこかのニーチェが言っていた。

いつか行ったオホーツク海の朝日が
脳裏で眩しく燃えている
マイナス14度の真冬の中
朝4時に目覚ましをかけて
這うように部屋を出た

海の上では体感マイナス20度くらいで
風が冷たくて到底船先に立つことは難しい
それでも朝日を見ようと
流氷が流れていないかと
船の外に出た

その日も次の日も流氷が見れなくて
どこかに流氷来てないの?
ってツイッターで流氷の目撃情報を探すと
斜里町の方にあるとやらで
紋別から斜里町まで車ぶっ飛ばして行った


斜里町のどこか

人生で初めて見た流氷
思っていたより小ぶりの氷たちで
思っていたのとはちょっと違ったけど
でもそれが生の流氷なんだろう

関西の気温10度が寒くて寒くて
耐えられないのに
マイナス14度は逆に熱い
自分の中の知的好奇心が燃える

お金のことはなんとかなるよな
連休とあわせて有給とろうとすると
社長からちょっとにらまれるよな
なんか言われるだろうな
でもまたお金は稼ぐし
仕事は別で取り返すから
この燃える感情の行き場をやってあげてください

縁もゆかりもない場所で
特によく耳にする土地でもないけど
真冬の折には必ず行きたいオホーツク
魂が震えあがるほどの情景をまた見たいのです

自分の主張を正当化させるような
そんなことばかりを逡巡させて
真冬のオホーツク行きの航空券を
静かに予約したのだった

社長からの圧力なんて
あとは野となれ山となれ
ちゃんと頑張るから

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