きょうだい ~続・弟

弟の話を始めます。

兄とは7歳離れている弟。俯瞰で見ても、三人きょうだいの中で、一番可愛らしい顔つきをしていました。大人たちから特に可愛がられていたように思います。

私が母親から理由も分からず叩かれていたり、傷んでいるおかず、真っ黒に焦げているトーストを母親から手渡され、食べるように促されているときも、母親の傍でその様子をじっと見ていました。私が父からもらったお土産のお菓子も、母親から受け取って食べていた弟です。どういう気持ちで私を見ていたんでしょう。きっと、それが家族として当たり前だと、受け止めていたかも知れません。

私が母親の財布からお金を盗んでいたのを、弟から真似されたことがありました。そればかりか、お向かいの目の悪いおばあちゃんのお財布からもお金を盗んでいたようです。おばあちゃんのお金が無くなったときは、一番に私が疑われました。でも、おばあちゃんは私ではないことを、キッパリと否定されました。高額のお金が無くなった訳ではありませんでしたが、おばあちゃんは大変なショックを受け、あまり私たちと関わろうとしなくなりました。弟はどんな気持ちで、おばあちゃんの財布からお金を盗ったのか理解は出来ませんが…なんとなく、目の悪い人をからかうような、或いは舐めてかかるような狡猾さを感じました。

私のことは姉ではあるけれど、どこかぞんざいに扱って構わない存在に考えていた節がありました。言葉からも態度からも、それは感じ取れました。それでも、弟は一番年下だから面倒みなければという責任感も一応持っていて、弟がいなかったら、家族の中に私の味方がいなくなるような気もしていて。

そんな考え方も、私が高校生になった頃には消え失せましたが。

傍目には仲良く見えただろうと思います。でも、弟は兄とはまた違う脅威の存在でした。信用させておいて、奈落に突き落とすようなことをしました。身の危険を感じさせられました。

血の繋がりの濃さは、絆の濃さではないことをつくづく考えます。むしろ、そこに拘るから苦しむのだろうと思います。心の繋がりは霞のような曖昧なものに思えますが、これこそが絆の基なのだろうと最近は考えさせられます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?