Thrill me

職場の同僚にご縁を頂き、観劇がかなった話題作。とはいえ大きな舞台作品に疎いもので、話題作だと知ったのは観劇直前でした。

面白かった。たった2人の役者とピアノ1台で紡ぐ100分間はあまりにもスリリングで、物語に引き込まれ、気がつけばあっという間に終わっていました…。
劇場サイズは、普段自分がよく出向く劇場とあまり変わらないサイズ。居心地の良いサイズ感です。ですが、…誤解を恐れずに言うならば、役者様も演出も、舞台セットも超一流。ただただ圧倒されました。

静謐で、無駄をそぎ落とした上質な空間。そこで紡がれる物語はショッキングで、観劇後もしばらく後を引いていました。
人が人に対して抱く小さな憧れがいつの日か大きく育ち、名前のつけようもないモンスターに変わってしまう…。それを「愛」と呼ぶにはあまりにも醜く自己中心的で、けれど「恋」と呼ぶにはあまりにも自己犠牲的で重すぎる。
男女の物語ではなく、登場人物を「私」と「彼」という2人の男性にすることでこの感情の強烈さが強調された気がします。一方で、同性愛をテーマにした作品ではありますが、扱われる感情は至って普遍的でもあり…。
こんなに強く誰かに固執したことも、誰かを手に入れたいと思ったことも、「狂わされてもいい」と思ったこともない。つまり未知の感情のはずなのに、どうして「わかる!」と思ってしまうのだろう…。不思議でなりません。
「私」から「彼」にむける嵐のような感情。「彼」が手のひらの上で転がしていると思っていた「私」、実は何もかも計算通りに事を成し遂げ、とうとう「彼」を手中に収めてしまう…。今思い出してもとんでもない衝撃を受けたストーリーです。無駄なものを一切取り除いて、それこそBGMもピアノ1つに絞って届けられる、核心だけで勝負する舞台、圧巻でした。
(個人的に好きなのは「彼」が少年を殺めにかかるシーン。今回2階席での観劇でしたが、客席にまで緊張感と不気味な高揚感が伝わってきて、鳥肌が立ちました。)

さて。私は普段、いわゆる小劇場と言われるジャンルの演劇が好きで観ているのですが…。今回の作品は有名スポンサーがついているような、大きな作品でした。チケットは発売開始3分でソールドアウト、役者様もテレビや芸能界に疎い私ですら知っているような、超実力派俳優様達…。
今年の夏、推しを含めた役者様3人で紡ぐミュージカルを観劇しましたが、今回の作品も条件としては同じ…。そんなことを考えての観劇です。正直にいうと、自分が普段見ている作品とのレベルの差に圧倒されました。
演出もスタイリッシュで無駄がない。100分というコンパクトな時間の中で、見事に緩急をつけたストーリーは観客を飽きさせず、早い展開なのに観客を置き去りにして独り善がりにストーリーが進んでいくこともない…。ミュージカルナンバーは歌うのがとても難しいと思うけれど、役者様の安定感が抜群で、どの曲も耳に心地よい。
素直に、ただただ感動しました。

そして、推したちに会いたくなりました。

何故なんだ笑
これだけ上質な作品を観劇し、最初に思ったことがこれです笑。推しの芝居が見たい。

私の推したちの演技力や表現力はもう本当にすごい。何度感動させられたかわからない。それでも、ちょっと悔しいけれど、今回の作品に出演されているような方とはレベルが違う…。セリフを噛むことこそなくなったけど、ミュージカルナンバーを聴いて「難しそうだな…」と感じてしまうこともあるし、殺陣やダンスを見て「丁寧だな、一生懸命練習してきたんだな」と微笑ましくなることもある。…まだまだ伸び代たくさんです笑
でも、やっぱり推しの演技が観たい。どこまでもまっすぐで飾り気のない、身一つで挑む推しの演技が観たい。たまには苦戦したり、上手くハマらなかったりする時もある…当日券が捌けなくて大変な時だってある。でも、そんな彼らの演技が、舞台が大好きなんです。
それが「推し」ってことなんだろうな、と痛感しました笑

『Thrill me』この舞台自体も、この舞台を観劇して感じたもことも含めて、非常に充実した観劇体験になりました。素晴らしい作品でした。

『Thrill me』(尾上松也×廣瀬友祐)
2023.10.21(土)昼
高崎芸術劇場 スタジオシアター

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