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持ってこなかった男について

トリプルファイヤーの吉田靖直さん著書「持ってこなかった男」を読了した。内容は自伝的エッセイで、これまでに連載してこられた記事に加筆修正を行ったものである。
私自身、トリプルファイヤーは聞いたこともあり、ライブも見たことがあった。吉田さん自身のことも知ってはいたが、どういう思想を持って生きてこられたのか本という某体で知ってみたくなり、書籍を購入した。
幼少時から吉田さんの生い立ちや、過去の思い出と共に本は進行していく。私と吉田さんは昭和62年で同学年であったこともあり、当時の出来事として挙げられていたハイロウズのツアーは山形でも公演を行っておりコマーシャルをみていたのはよく覚えているし、大学在学中のインディーズの音楽のシーンのことなど当時のことが吉田さんの目線で書き綴られていた。本というもので紙を通じて表わされる吉田さんの文章は、私の嫌いな世の流行やいい感じのものを把握しつつ、自身の思いや願望のようなものを叶えようということに向かっているがなんだかパチンコやケータイのゲームをやってしまってやらないという、当時の大学生のけだるい退屈だけど何かくぐもった希望やその時期にしかない、お風呂に浮遊しているチン毛のような、何か思いつめてしまうけれども、どうでもいいようなものが内包されているように感じた。
どこに当てはめようとか、自分はこうだというものがあるようでないかもしれないところでそれを当てはめようとしてくるものに、わからないふりをして乗っかり自分を楽しんでいるような風にも見える。
私自身と吉田んさんと重なる部分があり、それがうれしいというわけではないが、何かぬくもりのような、ぬるい銭湯の循環されるお湯のように、チェーン店の安い大根サラダのような安心できるんだが、何か不安になるけれどもたまにほしくなるものがあるように思った。
なれ合いではなく、でも優しくもあってよかった。

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