吾輩はDoomsdayである。ストームはもう無い。

どこで刷られたかとんと見当がつかぬ。何でもストレージという箱の中でカスレアと呼ばれていた事だけは記憶している。
吾輩はその後はじめてデッキになった。しかもあとで聞くとそれはストームというデッキ中で一番偏執な種類であったそうだ。このストームというのはたびたび対戦相手を後手1キルして、ハンデスから先手2キルして、ちょっとゆっくり3キルするという話らしい。
しかしその当時はサバイバルにCTGにMUDがいたから別段恐ろしいとも思わなかった。ただ師範の占い独楽に載せられてデッキトップを引いたとき何だか留めどなく発想が溢れたばかりである。(中略)
独楽を回してしばらくは美しいpileを積んでいたが、しばらくすると非常な速度で環境が変わりはじめた。奇跡が悪いのかプレイヤーが悪いのか分からないが無暗に引き分けができる。大会進行が悪くなる。禁止は免れないと思っていると、B&Rリストが出た。それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分からない。
ふと気が付いてみるとストームはいない。師範の占い独楽が見えぬ。ギタクシア派の調査さえ姿を隠してしまった。(中略)吾輩は再びストレージの中へ棄てられたのである。


初めにお知らせしておくと、このnoteは3回に分けて書かれています(途中で放置されていた為)
2020年6月→2022年8月→2023年2月
時間の経過により最新の状況に沿わない箇所もありますが、そういうものとしてご覧ください。

1.ストームなんてしゃぼん玉


それからも、doomsdayはたびたび長い眠りから醒めようとする。狂乱の実験を得たとき、「暗黒の儀式×3,集団的蛮行,最後の審判」の無限ループを手に入れた。神秘を操る者、ジェイスによって相手を無視して勝てるようになった。しかしこれらはいずれも、あの時代のDDFTを超えるものではなかった。

この時点の話は、私も所属させてもらっているSTORM部の空想「対」ANT読本に少しばかり書かせてもらっている。
今回はその後の話、テーロス還魂記において、エルズペスが死の国から劇的な脱出を遂げたように、doomsdayが海神の神託を受けて再びトーナメントシーンに返り咲いたことの話をしようと思う。


タッサの神託者



このカードは皆さんご存知であろう。昨年に新設されたフォーマット「パイオニア」での真実を覆す者との2枚コンボはあまりにも有名である。しかし、私が「真実を覆すもの」をゲートウォッチの誓い収録当初から「doomsdayマン」と呼び続けていたことはあまり知られていない。4マナのカードとセットで使われるタッサの神託者が、本家本元3マナのカードと相性が悪いはずがないのだ。
※2020年8月、パイオニアにおいてdoomsdayマンこと「真実を覆すもの」は禁止カードに指定されました。

タッサの神託者が公開されたとき私はこうつぶやいた。

「条件が軽くなった」

従来の基本的な条件ではdoomsdayで5枚を積んだ後に「1draw+3マナ」が必要で、これは独楽の時代からずっと変わることのないものであった。
結論から言うと、タッサの神託者によりこの条件は「1draw+2マナ」で良くなったのだ。

まずパッと見、タッサの神託者ならば上の3枚さえ使えば最低限は済む。苦悶の触手ならストームを稼ぐために5枚をフルに唱えることになるし、研究室の偏執狂や神秘を操る者、ジェイスの場合は山を0枚にする必要があるが、神託者であれば山が2枚の時点でもう勝てるのだ。
そして今までのどのフィニッシュよりも神託者は軽い。

まず最初に思い付いたのは
留まらぬ発想から水蓮の花びら×2とcyclingを引き込みタッサの神託者に繋げるプラン

うむ、留まらぬ発想はとても良いカードだが、どこまでいってもコンボパーツでしかなく、平時に使用するには弱い。かと言って意志の力のコストにも出来ない(2枚は採用したくない)。
ではどうするか。予報だ。マナシンボルも緩い(予報と留まらぬ発想が代替しうるという思考は第二の日の出プランを検討した経験が生きた)。

pile(積み方)はこうなる。
1draw+1U
《予報、タッサの神託者、水蓮の花びら、cycling、発掘》

発掘を使わずLEDを使う場合
1draw+1U
《予報、なんでも、LED、cycling、タッサの神託者》

ここで少し気になることがあった…
2マナ払って引いたうちの1枚が花びら?
つまり1マナで落として引けば発掘を唱える用の花びらは必要ない??
こうして予報の代替として思考履きが浮上してきたのだ。

1draw+UB
《思考履き、タッサの神託者、なんでも、cycling、発掘》

とてもクールじゃないか!?

これで予報と思考履きを使い分けることができる。チャリスや呪文嵌め、聖域の僧院長などの特定の数字をシバくカードへの回答が出来たわけだ。

この3つを現在のdoomsdayの基本形としている。
※この部分は2020年6月に書かれたものですので、現在に生きる賢明なる同志におかれましては思考履きではなく「考慮」を採用されていることかと思います。そして、考慮とLED、綿密な分析、発掘を組み合わせることにより「1draw+U」が最も緩い条件になりました。

しかし自分で基本形と謳っておきながら、これらのpileを使わないことがままある。じゃぁ何を使うのか。早々にdoomsdayを打ってターンをパスする。
なぜか。理由は二つある。

一つは、コアトルオーコウーロにより環境からアグロが締め出されつつあること。
二つは、ストームに依らないこと。
※2021年2月、レガシーにおいて「王冠泥棒、オーコ」は禁止カードに指定されました。


doomsdayの抱える最大のデメリットは、言わずもがな、pay half lifeである。しかし現環境においては序盤から高クロックで詰めてくるデッキが少ない。相手にクロックが無ければライフが半分になったとて何ら心配はないのである。


またストームに依らないのであれば、条件が揃っていなくてもdoomsdayを打ってしまおう。通れば5枚は思いのまま、そのまま1ターンでも2ターンでも返してしまえばよいのだから。 



2.やっぱりストームが良かった


さて、ここまでが2020年6月に書かれた部分である。あれから2年近くが経ってしまった。男子3日会わざれば刮目して見よと言うが、mtgの世界でも2年も放置すれば失踪宣告も同然だろう。
実はDDFTというデッキ自体はこの2年間でそう変化をしていない。アンチカードは増えたが。大きく違うのは、DDFTのもつポテンシャルを最大限に引き出せるPWたちの出現である。
東ではSawatarixが、西では騎士団長N・Aが、他にもDDFTを信じて愛するPW達のトーナメントシーンでの活躍がきこえてくる。
では私はどうなのか。そもそも私はそこまで頭の良い方ではない。得意なのは「上手にやっている感を出すこと」であり、ノリと勢いで突き進むことも多い。エターナルパーティー2012、3-0で迎えたR4にオーバーキルをしようとしてpileミス、そこからズルズル沈んでいったのは未だに苦い思い出となっている。
検討課題が多過ぎて限られた時間内では頭がついていかない。
それでも、私がこの無限に広がる選択肢の樹を75枚に凝縮したようなデッキを10年以上使い続けてきたのは、もとい、それほどまでに愛していたのは、生まれて初めて手にした(当時の呼称でいうと)ギャザである第六版のスターターから出たレアの1枚という「思い出」と、そして何よりも、暗黒の儀式から始動して5枚をきっちり使い切り9stormの苦悶の触手で勝利する、ストーム型DDFTの「美しさ」によるものだ。
いや、美しさと一言で表現してしまうのも憚られる、私には信仰する神はいないが、まさに神の御技、まさに「最後の審判」である。
ストームを捨てたあの日、私の中でDDFTは死んでしまっていたのかもしれない。

ここまで言っておいてなんだが、本当のところ、現実を受け入れられないだけなのは承知している。
100人を超えるような大会でも使用者が自分しかいないという状況、DDFTが名刺がわりであり代名詞であった時代はとうに終わりを告げた。メタの一角を占めるようになったことに嬉しさを感じる反面、自分よりも上手く使いこなす者の存在に醜い嫉妬心を抱いているだけだ。私が成し遂げたかったことを、そして成し遂げられなかったことを彼らは成し遂げた。それを素直に称賛できない器の小さな人間なのである。
そんな私に、頭の良くない器の小さな嫉妬に狂った化物に出来ることは、DDFT対策を語ることぐらいであろう。

3.DDFTを相手にするとき



DDFTを相手にする上で確認しておきたいのは「最後の審判を解決したら死ぬ」ということである。
そしてこれは、なにも対戦相手だけではない。DDFT側は君たちを殺すつもりで最後の審判を打つが、半分のライフと残り5枚のライブラリーで相手を殺しきれなかった場合、死ぬのは自分自身だ。ここを耐えれば、DDFTに勝てるんだからっ!

当然、DDFT側は君たちの抵抗に対する備えを5枚の中に組み込んでくる。
打ち消しを予想すれば、打ち消しや魂の洞窟を既に盤面にある置物やヘイト生物には、バウンスや除去をもみ消しや忍耐を構える相手には、ハンデスを…
5枚を自由に積むことが出来るが故の対応力の高さ、しかしこれは、解決時にプレイヤーが予測した範囲に限られる。
つまり、DDFT側の想像を超えることができれば、そこに勝機がみえるのだ。
もちろん、こちらの妨害への回答を積みながら同時に勝ち筋にもっていく最後の審判という至高のソーサリーを絶対に通さないという気概は必要だが、全てのデッキが打ち消しを使えるわけではない。そこで私から一つの提案をしたい。

土地を狙え

実のところDDFTはかなりマナ基盤がシビアなデッキである。総量の問題もさることながら色の問題も頭が痛い。
条件が1マナ軽くなったことで界隈が大騒ぎするのはそれだけマナの総量がカツカツなことの裏返しであるし、ANTと似たドロースペルの構成をしながらアンシーを4積む点がBBBのあとにUUを要求する色拘束の激しさを物語っている。

フェッチから持ってこられた1枚目のアンシーを不毛せよ!


DDFT側がpileを組むときに

1draw+U
《考慮、綿密な分析、LED、水蓮の花びら、タッサの神託者》

というpileが一番条件が軽い。相手が1ターン目にこちらに干渉してこられない場合、4回マリガンしても土地、暗黒の儀式、最後の審判からターンパスして2キルを決められる。
しかし、私は意志の力や目くらましを採用する現代DDFTにおいてLEDを砕くリスクをとても嫌っている。最後まで打ち消しを構えていられないからだ。置き型の打ち消しを十何年と探し求めているが、未だに出会うことができないでいる。
なお私には、エターナルパーティー2014の会場で行われていたデッキ診断コーナーに当日1-4した相殺入りのDDFTを持ち込んで、猫山さんを限界まで困らせた前科がある。



話が逸れてしまった。というかまた半年ほど時が経ってしまった。
時は2023年2月。こんな私もいつのまにか所帯を持つことになり、4月からの新生活の準備に追われている。
自己満足のために書き連ねていた駄文のことなど、私生活の喧騒に紛れて失念してしまっていた。
思い出したきっかけは、とある対談式noteにて「デュアルランドに依存しているため、血染めの月はききます」と騎士団長殿がおっしゃっているのを目にしたことだ。
そうだ!土地を狙うんだよ土地を!!!

上の1番軽いpileやさらに上の基本形を見てもらうと分かることだが、積み込まれる5枚には基本的に余分がない。始動するキャントリップ、複数枚ドロー、マナ、5枚目を引き切るためのサイクリング、神託者…5枚と生み出されたマナをきっちり使い切って勝っている。
この中で相手に合わせた妨害札と入れ替え易いのは「マナ」の部分であろうか。例えばpetalを強迫におきかえるとすると、petalから生み出されるはずだったUと強迫のBを余分に用意すれば良いということになる。
えるしってるか。じゅもんをとなえるにはマナがかかる。

マナを余分に用意することを考えよう。現代DDFTは必要最小限にマナファクトを絞っている。ストーム型時代にはおよそ考えられなかったが、今の主流はpetal3LED1の計4枚である。その当時はLEDを1枚減らして3にしただけで異端と詰られたものだ。
そうなると、マナファクトには頼りにくい。今や陰謀団の儀式まで採用されており黒マナは出しやすいが、青マナはそうはいかんざき。やはり土地に頼るしかない。

土地を狙え

DDFT側は、こちらが用意していそうな対策をある程度想定してから動く。当然要求マナは増え、土地を並べてくる。そこを攻める。

再度確認するが、最後の審判を解決するとどちらかが死ぬ。DDFT側は、自分の死に方が見えていればそれを回避しようとする。例えば「行ってもターン渡して不毛されたら詰むな」と思えば、ターンを渡さなくて済む or 不毛で詰まない条件を揃えにゆくものだ。ここでえいっ!とブッパできる人はたぶんもっと他に相性の良いデッキがありますよ。

土地は狙われる

土地は1ターンに1枚しか置けない。pileを応用すればするほどかかる時間が増える。
DDFT側にこれを意識させられれば、1ターンぐらいの猶予はまず生まれる。マナもカードも要らないTime Walkだなんて、こんなのアジアの公序良俗に反していないか?。そこを起点にライフを詰めるもよし、さらなる対策を用意するもよし。

4.おわりに


ここまで書いておいてなんだが、実は最後にDDFTで大会に出たのがいつだったかもう思い出せない。つまり、これはストーム型の亡霊に取り憑かれた哀れな老害の妄想の垂れ流しであり、実際の効果を保証するものではない。エアプもいいところである。しかし、脳内ではいつだって自分こそが最強なのだ。


ここまで読んでくれた暇なお客様のために、もう少しは有益な?話もしなくてはならないと思い、唐突に私のメインにおけるプレイ指針を書いておこうと思う。カツ丼の三つ葉ぐらいの存在感の話になる。もちろん脳内である。

メインはDoomsdayを打って勝つしかない。なので、第一目標はDoomsdayを通すことになる。
その上で、基本的にはターンを渡したくないため、Doomsdayを打ってそのまま勝てるプランを目指す。

プランA

1draw+UU
《留まらぬ発想、cycling、水蓮の花びら、水蓮の花びら/魂の洞窟、タッサの神託者》

プランB

1draw×2(ダブルキャントリップ)
《LED、留まらぬ発想、水蓮の花びら/魂の洞窟、タッサの神託者、なんでも》

プランC

渦まく知識・1card
《cycling、留まらぬ発想、LED、水蓮の花びら/魂の洞窟、タッサの神託者》


あと1draw+LEDというのもそのまま勝てるプランになるが現代DDFTにおいて1枚しか採用されないLEDが手札にくることは少ないかもしれない。

おおむねこの3つのプランを目指すが、ご覧のとおりドローがわりと重要になっている。コンボを揃えるためのドロースペルがコンボパーツにもなるのだ。そのため渦まく知識で最後の審判を探しにいく行為が勝ちに近づいているとも遠ざかっているとも言えない状況もよくある。
難しい。
このプランに辿り着けないとき、ドローが足りない、マナが足りないといった阻害要因を解決してくれるのが「ターンを返す」という手段である。次のターンになれば土地は起きるし自動的に1枚引くこともできる。
しかしどうだろう?ターンを返す余裕があるなら、そもそももう1ターン条件を揃える猶予はあったんじゃなかろうか?
自分のライフは12、場には相手の裏返ったデルバー。最後の審判を解決してターンを返したところ、相手のトップから稲妻で死んでしまった。もう1ターン粘ればいけたかもしれない(12から殴られて9、返しの最後の審判で9から切り上げて4。稲妻1発なら耐える)。
難しい。
なお、最後の審判が見つからない、あるいは打っても通らない日はもう諦めよう。
もし初手に最後の審判があればそれだけでキープして良いぐらいだ。暗黒の儀式もセットなら失禁してしまう日もあるだろう。本当に良いんですかそんなにサービスしてもらっても??

最後に、真剣にDDFTについて知りたいのであれば、こんな駄文よりも某ほくとの対談の前後編を読むべきである(2023年2月21日現在、前編のみ)。騎士団長が簡潔に言語化して分かり易く解説してくれている。シェオルドレットほんま強いよね。

次は有料付きで雇用保険の賢い受け方でも書こうかな…
あなたの5枚に幸多からんことを

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