さみしさに病みそうな日

 世界から遮断された、こんな小さな私でも、誰かの夜を思うことができるし、いつかの記憶を愛することができる。果てしなく暗い足元につまずきそうになっても、花瓶に挿したたった一輪の花が枯れそうになっても、そんなのとはまた別に、慈しむことができる。ひとりは寂しい、人間は孤独と闘い続け生きてゆくものだし、寂しいと認めてどこかの誰かを羨むものだ。私だって隣に誰かいて欲しい。それが叶わないから、夢を見るのです。酒に溺れて夜に紛れて、手を伸ばしたって届かないものを、切実に求め続けるのです。寒さは心の病、自分では治せない、薬のない病。足元のヒーターだって無理に皮膚をじりじり焼くだけで、果たしてどんな役に立っているのかも、誰も説明できない。お香の煙が天まであがる頃、やっと振り返って笑えるのかもしれない、それまでは、寂しさを抱いて、愛して、無意味な熱と夜に身を焦がせばいい。いつかの私がそれを待っている。

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