いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン③第壱話『使徒、襲来』

 第一話、「使徒、襲来」。基本的には時系列順に解説していきます。
 冒頭から見ていくとわかるが、東海地方~関東中部全域に特別避難警報が出ている。初回だから、というのもあるが、後々の話における避難範囲がせいぜい第三新東京市全域であることを考えると、かなりの広域に渡るだろう。
 水没し、無人化した都市。線路を走ってる男。あれ……? 最近新海誠作品で似たような絵面見ませんでした?
 街に乗り捨てられた車の少なさが、人口の少なさを表している。世界観の表現がとてもうまい。

 そして、主人公登場。シンジが見ているミサトさんの写真。明らかに正気ではないブロマイドみたいな写真(キスマークつき)に騙されがちだが、重要なのは直後の綾波が一瞬出てくるシーン。
 シンジを見つめるレイ(=リリス)の構図は、作品を通して幾度も登場し、EoEのラストにも出てくる重要ポイントだ。 リリスはシンジのことを見続けている。何で? 答えはそのうち。

 第三使徒サキエル。使徒一番槍である。一番槍だけあって、なかなかの猛者。現にエヴァンゲリオン2とかで第一話以外でコイツが出てくると結構苦戦する。ネルフ本部のリリスを狙い、リリスと融合することで現行生命のリセットを狙う正統派使徒である。後々出てくるチャランポランな使徒どもは彼を見習ってほしい。
 ゲンドウは「15年ぶりだ」と言っているが、別に「15年前に使徒が襲ってきた」というわけではない。「人類が使徒と接触するのが15年ぶり」くらいの意味だろう。人類が南極でアダムを発見し、セカンドインパクトが起きたのが15年前なのだ。

 ミサトさんのドラテク。ミサトさん、地味に能力がおかしい。

 そして再び司令室。UNのお偉いさんを前に、
冬月「やはりATフィールドか?」
ゲンドウ「ああ、使徒に対し通常兵器では役に立たんよ」
 と囁き合う二人。はい、ここ重要です。具体的には第7話あたりで出てきます。

 N2地雷の攻撃で再生する使徒。「生命の実」の効果……と思われるが、エヴァも本気出せば再生できるので、よくわからない。
 ミサトさんは車趣味に大金をつぎ込んでいることがわかる。彼女が金欠気味なのは多分このせい。そして、「国際公務員だから(バッテリーをパクってもいい)」ミサトの倫理観が垣間見えるシーンである。ただ、日本でも戦中世代の倫理観はこんな感じだったりするので、セカンドインパクトという極限状況下で育ったが故だろう。

冬月「予想通り自己修復中か」
ゲンドウ「そうでなければ単独兵器として役に立たんよ」
 使徒は正体不明の生体兵器、というカバーストーリーがあるっぽいので、それに沿った発言と思われる。さっきATフィールドのこと漏らしてなければ完璧だったんですけどね。

シンジ「……父さん」
 幼いシンジが駅のホームに放置されているシーン。10歳以下くらいだろうか?
 しかし、冬月いわく「三年ぶりの対面か」ということなので、三年前に会っていることがわかる。え……マジで!?どんな顔して会ったの!?

 「来い 碇ゲンドウ」と書いて塗りつぶした父からの手紙。サイン色紙か? お前、これと怪しいブロマイドでよく来ようと思ったな!?
 ……というのは置いておいて、「わざわざ塗りつぶした手紙を送ってくる」というのは、結構はっきりした拒絶の表明と見てよいだろう。ざっくり言うとイジメである。ゲンドウも「必要だから呼んだ」と言っているので「必要じゃなかったら呼ばねーよ!」ということである。
 はっきり書くが、ゲンドウはシンジを疎んでいると見て良いだろう。しかし、シンジくんはそもそもゲンドウのことをよく知らないので完全に「嫌い」まで振りきっていない。正直、ゲンドウと出会わないほうが幸せだと思う。

ミサト「嫌いなのね、お父さんが。私と同じね」
 大事な台詞。出会って数分でミサトさんはシンジくんに自分を重ねてしまっている。これが後の名台詞(?)に繋がる。
 なお、「私と同じ」という、他人を自分と同一視する台詞はエヴァを通して出てくるが、結構な割合でただの自己言及であることが多い。
 他人を完全に理解することはできない。従って必然、「他者への言及は自己紹介」となる。これもエヴァに見られる基本原則なので、覚えておくと良いだろう。

シンジ「ほんとにジオフロントだ!」
 謎の台詞だが、多分さっき渡されたマニュアルに書いてあったのだと思われる。シンジくんはちゃんと渡されたマニュアルを読むいい子。

ミサト「父親そっくりなのよ、可愛げのないところとかね」
 あの父親と似ている、とかとんだ罰ゲームであるが、エヴァにおいてシンジとゲンドウを照応させてみるとなかなか面白いことがわかる。ただ、ゲンドウが自分語りを全然しないため、非常にわかりづらくなっている。
 ……あと、さっき書いた原則があるので、ミサトの自己言及でもあるのだろう。ミサトはシンジを自分に重ねているし。

 「初号機は一度も動いたことない」というが、多分リツコの発言なので、リツコがネルフ入所後の話と見るのが妥当か。起動してないとは言っていない。

リツコ「探してものってないわよ」
 これからエヴァに乗せようという人間に重要情報の乗ってないマニュアルを渡す所業。それを一生懸命読むシンジくん。
 油断するなかれ。シンジくんいじめは既に始まっているのだ。

シンジ「これも父の仕事ですか」
ゲンドウ「そうだ」お前この距離でよく聞き取れたな!?
 ……と言いたいところだが、盗聴機くらい仕込んでそうな気もする。ゲンドウだし。

「レイはエヴァとシンクロするのに七ヶ月もかかった」
 たぶん重要だけど、ちょっとわからない台詞。レイはリリスの分身なので、その気になればすぐにエヴァくらい動かせそうだが(カヲルくんはすぐに動かしているし)……

ゲンドウ「乗るなら早くしろ。でなければ帰れ」
 「帰る」という選択肢を用意するあたり、有情である。ていうか、別に帰ってもいいし、帰ったほうが多分いい。ロボットアニメのお約束的な雰囲気で視聴者にはそう見えないあたりが非常に巧妙である。そして、「早く決めないかなー」みたいな様子で見つめる整備班。

ミサト「乗りなさい」
 非道。ミサトさんはネルフ側の人間だし、使徒に復讐もしたいので、エヴァーが動いてくれないと困ります。
ミサト「駄目よ逃げちゃ、お父さんから。なにより自分から」
 はい、ここが非常に巧妙です。「エヴァに乗る」という話を「お父さんと自分から逃げない」という話と巧妙に接続しました。現実世界でもたまに見られる詭弁です。
 このへんは、エヴァに乗せるために言った、というより、少し前の台詞でミサトがシンジに自分を重ねていたことが影響していると考えるべきでしょう。ミサトは父と向かい合えなかった結果、父の面影を見つけては逃げることを繰り返しているからです(その犠牲者が加持さんです)。
 この呪いが、シンジ(そして巡りめぐってゲンドウも)を苦しめることになります。

 病床のレイを叩き起こすゲンドウ。
 よく「ゲンドウはレイをひいきしている」という勘違い(作中人物も勘違いしている)がありますが、贔屓してたらこんな扱いしないだろ!! シンジくん詰め込んでエヴァ動かすわ!!
 「死んでいるわけではない」というわけで、計画上必要なパーツだけど、死んでなければいい、くらいの存在であることが一話の時点で示されているわけです。こういうことするから裏切られるのでは……
 ……なお、新劇は新劇で「レイを初号機に乗せるのはリスクが大きい」ということが後で言及されるので、このくだりは完全に茶番です。

 レイ登場。実はこのシーン、運命の再会なのですが、詳しくは後で。

 勝手に動くエヴァ。要するに「エヴァはその気になれば自分で動ける」というお話です。計算高いゲンドウがなんで素人のシンジをエヴァに乗せようとしたか、の答えがここにあるわけです。要はエヴァをやる気にする要員。

シンジ「逃げちゃダメだ」
 親の顔より見たシーンですが、ミサトの台詞を前提すると見え方が変わります。ゲンドウもレイを使おうとしてたし、逃げると思ってたっぽい。
 ゲンドウも、まさか、ここまでして逃げないとは、と内心思っているのかもしれません。
 こういう土壇場でのガッツがシンジくんの長所でもあり、彼を不幸にしている点でもあると思います。生きるって難しい。

 そして、いきなりLCLで水攻めされるシンジくん。ちなみに、シンジくんはカナヅチです。シンジくんいじめに余念がないアニメ。
ミサト「我慢なさい、男の子でしょ!」
 ミサトさんはまたそうやって要らんこという……

冬月「碇、本当にこれでいいんだな」
 に微笑むゲンドウ。
①シンジが辛い目に逢ってるのが楽しいから
②初号機が勝手に動きシンジとシンクロしたことで、初号機の中にユイがいることを確信したから
 どっちかな……

ミサト「シンジくん、死なないでよ」
 ミサトさん、どの口で……

次回予告「ミサトの傲慢は、彼を自分が救おうと決心させる」
 予告で自分(?)に傲慢って言われてるじゃないですか!!!!
 といわけで、次回もミサトさんが過ちを犯します。

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