いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン⑬第拾壱話『静止した闇の中で』

 第拾壱話「静止した闇の中で」。英語タイトルは古典SF映画『地球の静止する日(The Day the Earth Stood Still)』のパロディですね。ざっくり言うと、宇宙人が平和の大切さを説くために世界中を停電させるお話。最近はジャイアントロボとかでタイトルだけ有名かもしれません。ジャイアントロボのOVA、エヴァより前の作品なんですけどね……
 エヴァのSFパロサブタイといえば最終話が有名ですが、それ以前からやってるよ、というお話。前話の「マグマダイバー」も知性化シリーズの『サンダイバー』が着想になってるとかなんとか。

 あと、今回、エヴァの中でもちょっと特異な回でして……製作スタッフに、スタジオジブリ関係者がゴソっと入ってるんですよね。そのせいか、登場人物とかの顔がちょっとジブリっぽくなってます。昔のアニメだと話ごとに作画にクセが出るのは珍しいことではないのです。

 本編。珍しく第三新東京の街並みや人の暮らしが描かれます。こういうところも、ちょっとジブリっぽいかも。リツコとマヤはコインランドリー通い。いや、ジオフロントにコインランドリーくらい無いのかよ!! おしゃれなバーはあるのに!!
 ……と、今更ネルフ本部の設計に文句を言っても仕方ないです。その本部の設計が、正に今回の本題なわけですが。
 あと、リツコは気に入った同じ服を何着も持ってるタイプっぽいですね。研究者あるあるです(多分)。

 ネルフへの出勤電車で冬月と鉢合わせ。新聞には米国の失業率悪化の記事。セカンドインパクトから14年も経つと、復興も一段落なんでしょうか。失業対策にエヴァンゲリオンを建造する、みたいな話も前に出てきていました(ゲンドウが機上の人のシーン)。

 ゲンドウは雑務をごっそり冬月に押し付けている様子。まぁ、対外折衝とかは、ゲンドウが出て行っても拗れる予感しかしないですからね。適材適所と言えば適材適所。
 第三新東京市の市政はMAGIが行っているらしい。
冬月「三系統の系統のコンピュータによる多数決だ。きちんと民主主義の基本に乗っ取ったシステムだ」
 勘違いされがちなポイントですが、民主主義≠多数決です。民主主義とは国民が政治の意思決定に参加することで、多数決はその意思決定の一手法に過ぎません。というか、そもそもMAGIシステムは「民」じゃないだろ!!
 専門家でも、いや専門家だからこそ、専門分野以外での見識はこんなものなのはリアルと言えばリアル。Twitterとかでもよく炎上してますよね。
マヤ「さすがは科学の町、まさに科学万能の時代ですね!」
シゲル「ふるくさいセリフ」
 こういうところでエヴァンゲリオンは自嘲的な作品です。まぁ、ナディアでもこんなセリフありましたからね……。
 零号機の稼働延長試験。流石にバッテリーが五分しかもたないのは問題らしい。

 零号機の試験はなかなか上手く行きません。初号機、弐号機が(たまに暴走するけど)順調に稼働しているのに比べ、零号機は何かと問題の多い機体です。これも、実は理由があるのですが……。詳細は別の時に。
 改修後のカラーは青。ウェポンラックも付きました。なお、今話が初陣です。改修前の重機扱いといい、初陣がなんか微妙なのは零号機の宿命なんでしょうか。弐号機は逆に、初陣は活躍しますね。

 加持さんを前にエレベーターを閉めるミサトさん。前々回の件があるので当然といえば当然。かなり走って、無理にでもミサトさんと同じエレベーターに乗ろうとした節があります。

 進路相談の面談でゲンドウに電話をかけるシンジ。この辺のシンジくんは積極的なので、ゲンドウに直電もかけてしまいます。でも、この前ミサトさん、進路相談で学校来てませんでした……? 何回も面談あるの?
 以後、シンジからの電話を取り次がないよう命じるゲンドウ。電話自体も不自然に切れます。
 ところで、今回のゲンドウ。この電話のせいで、ギャグ時空から逃げ損ねます。

 ミサトさんのエレベーターも停電。
加持「赤木が実験でもミスったのか?」
 とのことですが、後の話でこの停電、加持さんの工作による可能性が濃厚になりました。ミサトさんと閉じ込められたのは、アリバイ作りもある様子。

 冬月は残りの電源をMAGIとセントラルドグマの維持に回すことを命令。全館の生命維持に支障……と言いますが、主に影響が出るのは空調の様子。

 日向はミサトさんの洗濯ものを取りにコインランドリーへ。ここで走っている選挙カーがポイント。日向はミサトさんのことを好いていますが、今は加持さんがいるのでパシリに収まっている模様。

 NERVの自動改札も機能せず。ハッチをこじ開けて発令所に進むリツコ。

ゲンドウ「やはり、ブレーカーは落ちたと言うより落とされた、と見るべきだな」
冬月「原因はどうであれ、こんな時に使徒が現れたら大変だぞ」
 そこ、フラグを立てない。

 府中・総括総隊司令部。今回、出てくるのがいつもの国連軍じゃないんですよね、何故か。戦略自衛隊でしょうか。使徒を観測するも、どうせ攻撃しても効かないし、ということで見守る軍人。いや、こう……色々あるだろ!! できること!!
 あと、「八番目」と言っていますが、九番目です。サンダルフォンの情報は管轄外でまだ回ってないんですかね。
 「JASDF」の灰皿。そう、今回は航空自衛隊が何故か居るのです。戦自に統合された組でしょうか。書き忘れていましたが、エヴァの世界の既存自衛隊は国連軍に吸収され、それとは別に日本政府指揮下に戦略自衛隊がある、という設定です。
軍人「一体ネルフの連中は、何をやってるんだ!」

 ということで、停電で混乱中のネルフ。緊急マニュアルを見るシンジたち。アスカがリーダー、ということですが……本部に一番詳しいのは多分レイなんですよね。

飛行機「こちらは第三管区、航空自衛隊です」
 また航空自衛隊って言ってる!! まぁ……ジブリ時空だから、気にしないことにします。

 ろうそくとうちわで凌ぐネルフ本部。完全にギャグ。
冬月「ぬるいな」
ゲンドウ「ああ」
 暑さで司令と副司令までおかしくなってる……!

 第九使徒「マトリエル」。蜘蛛っぽい外見、足の生えたラーメンどんぶり使徒界の恥さらしの登場です。
 使徒襲来を伝えるため、日向は選挙カーを徴発し、ネルフ本部内への突入を敢行。

 停電の原因は人為的。目的は復旧ルートからの本部構造の推測。
 恐らくですが加持さんが集めたこの情報は、後に彼のバイト先の一つである内務省に流れ、旧劇場版での戦略自衛隊の侵攻時にも使われたと思われます。内部の情報をある程度掴んでいないと、施設内部への突入なんてできないでしょうですし。
ゲンドウ「所詮、人間の敵は人間だよ」
 ほぼギャグの絵面で出たセリフですが、かなり重要です。覚えておきましょう。

 迷子のシンジ組。レイに道案内任せた方がいいと思います。
シンジ「ねぇ、使徒ってなんなのかな?」
 以前、リツコさんから「使徒がサードインパクトを起こしかねないから倒すのだ」という話は出ましたが、使徒ってなにさ? という点は不明のままでした。
シンジ「なんで戦うんだろう」
アスカ「降りかかる火の粉は払い除けるのがあったりまえじゃない」
 正解です。アスカ、真相は知らないけど、正しいことは結構言ってるんですよね。
 使徒と人間は別々の起源を持つ生命体で、使徒は自分達が栄えるために人類の起源であるリリスに接触、リリス起源の生命(含む人類)をリセットするサードインパクトを起こそうとしています(エヴァンゲリオン2より)。まぁ、何考えてるかわからん使徒もいますが(エヴァンゲリオン2より)。
 要は、根底にあるのは一種の生存競争、ということです。まぁ、そもそもなんで使徒が目覚めて襲ってくるかといえば、セカンドインパクトの時に人類がアダムを目覚めさせ、ついでに爆散させちゃったからなんですけど。
 この話は、それだけで「いわ新」一回分以上なので、本編の話が終わった後でセカンドインパクトスペシャルをやろうと思います。

 アスカとレイ、どっちか決められないシンジくん。アスカが押し切る。結果、
アスカ「使徒を肉眼で確認」
 ということです。このセリフ、地味に後でも出てきます。

 ゲンドウはエヴァの発進準備。生存のためのバイタリティが高いのがこの男の特徴です。

アスカ「あんた、ちょっと贔屓にされてるからって、なめないでよ!」
レイ「なめてなんかいないわ。それに、贔屓もされてない。自分で分かるもの」
 アスカとレイの衝突。
 アスカ側がちょっかいをかけているのは、いつもレイがすまし顔……要は「人形みたい」だから気に入らない、という話でしょう。表情を変えないから嫌悪を抱いてしまう。
 対して、レイの言葉は多分本心でしょう。「なめてない」というのも。無視はするけど舐めてはいない。「贔屓もされてない」はゲンドウについてでしょう。そもそも第一話、怪我だらけの状態でエヴァに乗せられそうになったりしてますし。計画遂行のために必要なピースだから大事にされてるけど、それ以上ではない、みたいな話でしょうか。
 新劇でもアスカのレイへの見方は変わらず「えこひいき」と呼ばれます。

アスカ「ファーストって恐い子ね。目的のためには手段を選ばないタイプ。いわゆる独善者ね」
 とのことですが、いつものセリフブーメラン原則で言うと、手段を選んでいないのはアスカの方ですね。レイの陰口で印象を下げる作戦。かわいげがある。

 土地勘のあるレイが先頭に立ったことで、シンジ達はあっさり発令所に到着。最後はアスカがダクトを蹴破ったみたいですが。

リツコ「碇司令はあなたたちが来ることを信じて準備してたのよ」
 だそうですが、どうなのかな……。

 スピーカーでの意思伝達。人力で発進するエヴァンゲリオン。
 今回はいつもの射出リフトが使えないので、通路を匍匐前進で移動。なお、今回は補助バッテリーがついてエヴァの稼働時間がちょっと伸びています。再びシャッターを蹴破るアスカ。

 マトリエルの武器は、ATフィールドを貫通する溶解液。これで装甲を溶かし、本部に侵入するそうですが……。地道!めちゃくちゃ地道! ラミエルのシールドマシンの方がマシなレベル。アスカが足を滑らせ、シンジがどうにか食い止める。こういうのもラッキースケベって言うのかな。

 アスカの作戦、一機が盾になり、溶解液をせき止める。もう一機がライフルを回収、更にもう一機がライフルを受け取って射撃。ライフルが溶解液で溶けてないといいですね。

 アスカは盾を希望。理由は前回でシンジに借りができたから。アスカのロジックだと「自分が危険に身を晒せばシンジへの借りを返せる」という思考っぽい。普通にお礼言った方がいいと思いますよ! そもそもシンジくんは貸とも思ってない気がしますが。

 改修された零号機は一味違う。なんと、ウェポンラックにブースターが付いているのです! ……これ、どうも初号機や弐号機には無い装備っぽいです。使用シーンは今回とあと一回くらい。地味。

 マトリエル、ライフル斉射で死亡。なんという紙装甲……。もしかすると溶解液袋が体内で破けて自分を溶かした、とかそういうオチなのかもしれませんが。
 まぁ、もし地上で戦っていたら、溶解液をまき散らして接近を阻む厄介な敵になっていたのかもしれません。いや、ライフルで死ぬならどのみち同じか……。

 一方、エレベーターではミサトさんが別のピンチを迎えていた。最近のエレベーターには防災用の使い捨てトイレがついてたりすることがありますが、そこはまぁ、居住性無視のネルフ本部ですね。
マヤ「不潔」

 丘の上、プラグスーツのまま寝転ぶシンジたち。あの、プラグスーツのまま山登りを……?
レイ「人は闇を恐れ、火を使い、闇を削って生きてきたわ」
 哲学、とアスカは評しますが、レイの中の人は大地母神リリスさんなので、リアルに見てきた可能性もあります。
シンジ「だから人間って特別な生き物なのかな。だから使徒は攻めてくるのかな」
アスカ「あんたバカぁ? そんなのわっかるわけないじゃん」
 しかし、この連載は「いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン」なのです。先程、人間と使徒の由来について語りましたが、基本的に現在の地球上に生息している生物はリリス由来です。その中で、なんで人間が「特別」なのか?
 決定的な答えではありませんが、生命の始祖を目覚めさせ、その力をも手中に収めようとした傲慢が、正に特別と言えるのかもしれません。なので、「人間が特別な生き物だから使徒が攻めてくる」というのは、ある意味正解でしょう。その切欠は決して伝承上の出来事ではなく、セカンドインパクトに端を発すると考えられます。

 というわけで次回、ミサトさんが使徒スレイヤーとなった過去、即ちセカンドインパクトの一端が語られます。
予告「みんなで見てね」
 サービスはどうしたんですかミサト(?)さん!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?