いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン⑪第九話『瞬間、心、重ねて』

 第九話、「瞬間、心、重ねて」……の前に、前回の補足から。
①「最初の人間、アダムだよ」
 これ、後々から見ると意味不明なんですが、ここまでの情報だけで見ると、「エヴァがいるってことは、聖書でもとになったアダムもどっかにいるのでは? でもエヴァってなんだろうなー」→「あっ、アダム出てきた!最初の人間!?ってことは、アダムから生まれたエヴァも……人間……!?」
 みたいな感じで、「エヴァが人造人間」という結論に至れる導線と思われます。 だからどうした、というお話ですが。

②加持さんエスケープについて
 一応、「アダムが使徒を引き寄せるなら、これもって本部に帰れば使徒も追いかけて本部に向かうかも」という行動の可能性もあります。加持さんの名誉を傷つけたことは……まぁ、今回のセクハラ度合いを見るに、お詫びしなくてもいいかな……

 というわけで、本編。なんでこんな前置きしたかというと、今回、書くことが少ないからだよ!!
 アスカは「傍から見ると人気だけど、近くで見ると性格悪い」という、レイと逆のパターンであることがわかります。前回も少し触れましたが、アスカはレイと真逆の方向性で造形された節があります。つまり、レイと同じでそれらと別に本人の芯があるわけですが……それは後ほど。
 自分の好悪とは別に、ブロマイドは売って儲けるケンスケ。大人。まぁ、法には触れてそうですが。

 そして、レイに絡みに行くアスカ。レイが読んでいるのは、多分生命工学とかの本。ドイツ語です。読書を邪魔されて不機嫌そう。
アスカ「仲良くしましょ」
アスカ「その方が都合がいいからよ。色々とね」
 衆人環視だけど、被ってる猫が外れかけてません?
レイ「命令があればそうするわ」
 要は「命令が無い限り別に仲良くしたいとは思わないわ」ということです。遠回しにお断り申し上げているわけです。ここまで「いわ新」を読んだ方なら、レイは人形っぽいけど別に自分の意志がないわけではないことをお判り頂けていると思います。
 が、アスカはわかってないので素直に受け取ります。
アスカ「変わった子ね」
 と、今はこのくらいで済んでいますが……アスカにとっては「人形」は地雷です。これが最終的な破局を生みます。

 リツコさんを口説く加持さん。完全にセクハラですが、まぁ、もともとこういうじゃれ合いを学生の頃からしてたんじゃないですかね……。
加持「悲しい恋をしてるからだ」
リツコ「どうして、そんなことが分かるの?」
 まぁ、一見なんてことない会話なんですが、リツコはゲンドウと関係を持っているので、本当に悲しい恋をしています。ゲンドウはユイをまだ忘れてないし。
加持「涙の通り道にほくろのある人は、一生泣きつづける運命にあるからだよ」
 加持さんの単なる口説き文句ではあるんですが……同じくゲンドウと不倫してたリツコの母親、赤城ナオコ博士にも左右逆の同じ位置にホクロがあるんですよね……。
 そして、その様子はミサトに見られていたわけなんですが……加持さんは余裕の表情。というか、ミサトの興味を惹くために、見ていることをわかった上で、リツコにコナかけてたっぽいですね。
 加持リョウジ、恐ろしい男……。ちなみに、新劇場版ではシンジくんにその毒牙が向きます。
 なお、加持さんは出向事例により本部残留。ミサト、リツコ、加持は同じ大学(第二東京大学)の出身です。加持さんのお仕事とかはそのうち取り上げます。

 使徒を海上で発見。なお、今回もゲンドウ不在です。理由は特に触れられませんが、なんかラブコメの波動を感じると逃げ出してる気配がする。
 零号機はヤシマ作戦でのダメージが治りきっておらず、まだ修理中。ついでに改修も行っているためか、長引いているようです。出撃は前回に引き続き(?)、アスカとシンジ。
 アスカはまだシンジの資質に疑問を持っている様子。そして、前回に引き続き、独断専行。しかし、この時期の脂の乗ったアスカは強い。白兵戦で使徒を両断するも、分裂した使徒に敗退。
 この分離使徒、イスラフェルですが、サキエルもどうやら機能増幅が可能だった様子があるため、その延長線上の能力でしょう。
 珍しい場面転換。
 地面と海面に頭から突っ込んだ初号機と弐号機。あの……これ、エントリープラグから出られない気がするんですけど……大丈夫なんです?
 N2爆雷で時間稼ぎ。「N参号作戦」とのことですが、弐号はサキエルへの攻撃でしょうか。
 「君達の仕事は?」と聞かれて「エヴァの操縦」と即答するアスカ。彼女のスタンスがよくわかります。

 基本的には親しくない人間に対して従順なシンジくんですが、何故かアスカとは喧嘩してばっかりなんですよね……。
 ミサトさんは責任者なので責任をとるお仕事です。机を埋め尽くす書類の山。第三新東京市はまだまだ使徒が片付け中。「ゲンドウが居たら即座にクビ」とのことですが、実は漫画版だとゲンドウが居ます(展開は同じ)。
 そして、今回の作戦。ミサトさんは加持さんの発案と聞いてまんざらでもなさそうですが……そう、今回の作戦は加持さんの発案なのです。重要なので覚えておいてください。

 シンジとすれ違う「アータ引っ越しセンター」のトラック。多分、アスカの荷物を運んだ帰りの便でしょう。
 というわけで、シンジはレイのアパートに不法侵入しますが、アスカはシンジの部屋を合法的に占拠します。みごとに対ですね!
 あと、アスカも家事能力は高くないので、ミサトさんと共同生活すると……破綻するぞ……!
 日本人の心情は察しと思いやり……とのミサトさんの弁ですが……あの……ミサトさんはそれを持っているんですか……!? まさか、ミサトさんが人の心を……!?

 ということで、「使徒は同時攻撃が弱点なので、連携を強化するためにはトレーニングが必要。時間が無いので共同生活して特訓してね」という、わかるようなわからないような理屈。
 今回の作戦発案者は加持さんなので、いつものミサトさんの作戦とは一味違う。最大の違い……それは、訓練期間があること! いつものぶっつけ本番一発勝負ではないのです! この違いの前には、「なんでツイスターなの?」とかは些細なことです。
 ほんとなんでツイスターなの? 加持さんにツイスターの趣味でもあったの? 

アスカ「嫌よ! 男女七歳にして同衾せずってねぇ!」
 正しくは、「男女七歳にして席を同じゅうせず」です。まあ、後で同衾することになるので一種のフラグでしょう。

 特訓開始。学校も休んでいるので、お見舞いに来るトウジとケンスケ、委員長の二人。「三馬鹿トリオ」はここで初出でしょうか。
 ユニゾンは上手く行かない。で、ミサトさんはレイを連れてきますが……これ、どうもアスカに発破かけるために連れて来たっぽいんですよね。ミサトさんはすぐそういうことをする! 察しと……思いやりは……どこにあるんですか……!

 というわけで、レイに負けて逃げたアスカを追いかけるよう、委員長に詰められるシンジ。委員長とアスカ、この短期間でメチャクチャ仲良くなっているっぽいです。後にアスカがズタボロになった後は、委員長の家に泊まっていたというくらいの親交の深さ。

 声をかけようとするシンジを止めるアスカ。
アスカ「わかってるわ。私はエヴァに乗るしかないのよ」
 シンジくんはそういうこと言おうとしたわけではないと思うんですけど。
 一人で勝手に立ち直り、傷つけられたプライドは10倍返し。というのが、アスカの生き様のようです。シンジくんもほっとした顔。アスカに詰られてる時のシンジくんの表情に今後も注目です。

 というわけで、日常生活の早回し。途中、二人で音楽を聴いているシーンがありますが、これもしかしてシンジくんのSDATですかね……?

 そして、決戦前夜は二人っきり。シンジは「平常心」のランニングウエア。どう考えても平常心では済まない。
 ジェリコの壁。聖書要素ですが、あの……それ、ラッパで崩れるんですけど……?

 案の定、深夜。寝惚けたアスカが自分でジェリコの壁を崩してしまいます。しかも、間違えてシンジの寝床に。当初はアスカに反発しまくっていたシンジですが、一緒に暮らしているうちに思うところがあったのか……キスしようと顔を近づけます。が、アスカが涙を流しながら「ママ」と呟いたことで止めます。
 アスカの母親事情については、かなり後の方に語られます。或る意味シンジ以上に悲惨です。

 一方、加持さんはガッツリミサトさんを狙いに行っています。恐ろしい男だ……! ミサトさんは怒るとモノに当たる性質があるっぽいです。
 焼けぼっくい着火のお知らせ。
 まぁ、加持さんについてはミサトから一方的に振られたことが後から語られるので……。
 変わっていない、というミサトの言葉に寂しげなリツコの表情。

 決戦当日。アスカとシンジの仲も良くなった模様。
 エヴァはフル稼働。タイマー表示上で1分10秒、実際には62秒でバッテリーを使い切る覚悟のようです。
 BGMだけで進行する戦闘、珍しい演出ですがテンポがとてもいい。あ、戦闘中、地味に前に登場だけしたネルフ製のポジトロンライフルが使われていますね。
 イスラフェル、ラブコメの犠牲になって爆散。分離合体という能力はよかったものの、N2兵器による痛手で遅れをとったのが致命打となりました。それなりに惜しい使徒だった……。

 爆心地は後に湖に。使徒との戦いが増える程、芦ノ湖が増えていくシステムになっています。今回のが多分第二芦ノ湖と思われます。
 アスカとシンジは痴話喧嘩。エヴァのそこって電話になってたんですね……。冬月は再び恥をかく。こういうことになるからゲンドウはエスケープしたんじゃないですかね。

 総評として、細かいことはもとより、「一瞬重なった心がまた離れていく」というのは、今後の展開、ひいては人類補完計画の結末に通ずる部分があります。ヤシマ作戦でも触れ忘れましたが、「人の(文明という)光が初号機のもとに集い、それをレイ(リリス)が守る」というのは、人類補完計画の構図まんまですしね。初号機もちょうど長物持ってますし。
 そういうアレコレが、「明るいエヴァンゲリオン」の期間にも込められていたり込められてなかったりします。

 さて、次は第拾話、「マグマダイバー」。エヴァの中でも、一番「明るい」……そして「いい話」だと個人的には思います。余った尺を埋める方法は考えておいたほうがいいかもしれませんが。

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