いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン⑤第参話『鳴らない、電話』

 第三話「鳴らない、電話」。今更ですが、ちゃんと「第参話」って書いた方がいいんですかね……

シンジ「慣れました。悪くないと思います」
 と言いながら、完全に目が死んでいるシンジくん。マップを頭に叩き込んでいるし、二話の最後からここまでに色々あったことがうかがえる。無理してエヴァ乗るから……?
 恐らく、前話の「頑張ってね」に応えた結果だとは思うが、無惨である。
 ただ正直、それでもなんで二話の終わり方からここまで死んだ目になってるかわからないので、実は漫画版だと二話のテンションのまま起こることは変わらず進行します。逆ギレするシンジくんが見られるぞ!

リツコ「通常、エヴァは有線(中略)フルで一分、ゲインを利用してもせいぜい五分」
 エヴァの稼働時間についての話。厳密にはフル稼働での時間は「瞬間、心重ねて」での62秒と思われます。メディアミックスだと面倒なのでだいたい五分で統一。「ゲイン(利得)を利用して」の意味は不明。五倍になっているし、ガンダムの「五倍以上のエネルギーゲインがある!」のパロディの可能性高。
 ただ、これはあくまで「パイロットの意志をエヴァに伝えて動かす」場合の稼働時間。エヴァ自身がその気になれば、これを越えても勝手に動きます。
 ちなみに、インダクションモードは神経接続だけでなくレバー操作を併用する操縦モードのことのようです。

シンジ「目標をセンターに入れてスイッチ」
 次々出てくる目標を銃で撃つ訓練。これは、銃自体への慣熟もありますが、「トリガーを条件反射的に弾ける」ようにする、迷いを捨てるための訓練と思われます。現実世界でもあるやつです。
 まぁ、素人に教える一歩としては適切なんでしょうが、この訓練のデメリットも描くのがエヴァの細かいところ。

リツコ「人の言うことには大人しく従う。それがあの子の処世術なのよ」
 とりあえず割愛。リツコの生い立ち、この言葉の正誤とかは後で。

 ゴミ出しを任せるミサト。まぁ、これくらいなら普通の家事分担の範疇ですが……シンジくんはテンション低め。
ミサト「学校にはもう慣れた?」
シンジ「ええ」
 エヴァでは、シンジくんが第三新東京市に来る以前の生活についてほとんど触れられません。白紙同然。「先生」のところに居た、という情報が既に出てきましたが、これ以上特に情報が増えることはありません。
 普通に考えれば、今までの学校の友達とかと別れているわけで、今話のテンションの低さは学校生活に起因するものなのかもしれません。

 鳴らない、(シンジくんの携帯)電話。この辺のエヴァは割と丁寧にタイトルを拾っていきます。そして、「ヤマアラシのジレンマ」初出(内容は本編を見るかググってね)。実際のヤマアラシは互いのトゲの癖を知っているのでこういうジレンマに悩まされずにくっついてるわけですが、重要なのはこの寓話を考え出したドイツの哲学者、ショーペンハウアーの思想でしょう。
 ショーペンハウアーのペシミズム(厭世主義)は世の中を不幸と非合理に満ちたものとみなていますが、世界とは意識の表象であり、根底には人間の盲目的な生存の意志があるとも説いています。ブディズムにも通じるところのある思想なので、日本人にもなじみが深いかもしれません。
 まぁ、エヴァもこんな話だよね、というお話。

 ケンスケ、トウジ登場。「街中でドンパチやって死人出ないわけないだろ!!」という冷静なツッコミ。に見せかけつつ、戦争を彼方の出来事として楽しむケンスケと、身内に被害を出したトウジの距離感の転換が絶妙。
トウジ「オトンもオジイも」
 トウジの家に母親がいない、という設定。シンジくんのクラスは全員がエヴァパイロット候補なので、母親不在です。

 セカンドインパクトの話をする数学の先生。
 しかし、セカンドインパクト以前の世界を知らない生徒にはウケがいまいち。この辺の生っぽい距離感もいいですね。

 そして、パイロットであることがクラス全員にバレる。スピーディーでいいですね。逆に言えば、「こういうとこに尺使うつもりないから」という話なんでしょうけど……。
 シンジの発言を書き留めるケンスケ。プログレッシブナイフの話。
 そして、教室の隅っこに居る綾波レイ。窓の外を見ている。

先生「その頃私は根府川に住んでいましたが……」
 この辺の話は何度も出てきます。生徒に「また根府川(あだ名)のセカンドインパクトが始まったよー」とか言われてそう。 

 殴られるシンジ2hit。
 見下ろす綾波レイ。非常招集だからって走って行くのがちょっと面白いですね。この辺は、シンジに会えてちょっとウキウキしているのかもしれない。
 綾波については次話以降死ぬほど考えるネタが出てきますが、長くなるので今回は割愛。

 そして、第四の使徒、シャムシエル登場。収納されるビル。基礎工事がどうなってるか気になる。
 避難所のラジオ画面。前回、「避難範囲が広い」と書きましたが、どうやら今回も東海地方を中心に関東・中部地方全域に特別非常事態宣言が出ているようです。

 発令所。碇司令不在。余談ですが、碇司令は使徒襲来時に不在のことが多いです。全体を通してみると、いわゆる「明るいエヴァンゲリオン」の時期はほぼ不在になっています。理由は説明されたりされなかったり。「いい話」の時の謎の不在、今回もその類でしょう。
冬月「税金の無駄遣いだな」
 おまいう。
 この時期は、委員会からの要請でエヴァンゲリオンを出動させているようです。まだ命令系統が整備されていないのでしょう。

 自分の欲望のために詭弁を弄するケンスケ。或る意味大人。新劇のゲンドウ的な意味で。

 どうしてエヴァに乗ってるのかわからないシンジくん。答えは後ほど。
 「目標をセンターに入れてスイッチ」訓練の弊害で、反射的にトリガーを弾き続けるシンジくん。三週間(入院期間込)はこのくらいが精いっぱいなのでしょう。
 そして、使徒の反撃。「目標をセンターに入れてスイッチ」のような反復訓練の効用として、行動をルーチン化し恐怖心を殺すこともあります。それが破られれば、怯えて当然。

 さて、唐突ですがここで第四使徒シャムシエルの解説。飛行能力とビーム鞭を持った使徒です。あれ……サキエルの持ってたビームは?
 しかも、どうせなら飛行能力でエヴァを振り切ってビーム鞭で地面を掘ってセントラルドグマを目指せばいいのに、何故か初号機を襲ってきます。しかも、武器がビーム鞭しか無いので地上に降りないと戦えない。せっかくの長所を自分で殺しに来ています。アホの子です。ざんねんな使徒図鑑の1ページ目は君に決まりだ。
 ……最大限好意的に見ると、サキエルの敵討ちに来たのかな……それはそれで問題があるんですが。
 完全なる余談なんですが、自分は「使徒の攻撃で切れたアンビリカルケーブル」を「使徒の鞭」と長いこと勘違いしてました。

 さて。トウジとケンスケがエントリープラグ内へ。「エヴァは現行命令でホールド」とかやってますが、パイロットが脱出するとATフィールドが消える仕様の筈なので、お互い特にATフィールドを使わずに戦っているっぽい。
 シャムシエルどうした!! 君はそれでも使徒なのか!!
 ……さて、大事なのは「異物(パイロット以外の人間)をプラグに入れると動作に不都合が出る」です。第八話くらいまで覚えていてください。
 鳥居とエヴァの対比が巨大感が出ていていいですね。
 ちなみに、省略されたトウジとケンスケがエントリープラグに乗り込んだ方法ですが、確か設定上、どっかに縄梯子がついてた筈……

 そして何故か、どう考えても撤退した方がいいタイミングでシャムシエルに立ち向かうシンジくん。
シンジ「逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……」
 そう、彼が何故殴られてまでエヴァに乗ったのか? 何故使徒に立ち向かうのか?
 それは、ミサトさんがかけた「逃げちゃダメだ」の呪いがまだ生きているからだったのです。全然ええ話とちゃうやんけ!!
 胴体を貫かれても止まらない初号機。壮絶。プログナイフの訓練はしている描写は無かったので、完全に破れかぶれの突撃でしょう。武器の名前も曖昧だったし。それで使徒を倒せてしまうんだから、恐ろしいものです。
 そして、シャムシエル死亡。残骸はほぼ完全なサンプルとなり、自爆までしたサキエルくんの努力を完膚なきまでに無にします。
 余談ですが、新劇だと北極で捕虜になってる第三使徒(サキエルではない)が居る上、死ぬと液状化する仕様なのでシャムシエルくんの名誉は守られます。使徒にやさしい改変。

 雨の日の学校。窓の外を見るレイ。シンジくんは登校せず。
 ケンスケはなんでシンジの電話番号知ってるんだよ!! と思いつつも、トウジはシンジに謝罪の電話をかけるわけですが……シンジくんは出ない。
 ということで、今回はここまで。次回、シンジくんの行方や如何に。

 まぁ、次回予告で「自分の心を克服できず、ミサトからも逃げ出すシンジ」って言ってるんですけどね!
 ……うん、正直ミサトさんから逃げ出すのは間違ってないと思うな!

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