いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン⑳第拾八話『命の選択を』

 第拾八話、「命の選択を」。さて。今回のお話の前に、エヴァとダミープラグの原理について説明&整理をしておきましょう。
 エヴァンゲリオンとは、第一始祖民族が創造した生命の祖たる超存在、アダム&リリスのコピーであり、アダムから生まれた生命、使徒とほぼ同等の能力を持つ存在です。アダムから作られたエヴァについては、人造の使徒とも呼べるでしょう。
 では、使徒とエヴァの違いとは? ここで、エヴァンゲリオン2の情報を引用しましょう。「S²機関と魂がなかったこと」だそうです。そして、エヴァではこれらを電力の外部供給と、人間の魂を封じ込めたコアで補っているわけです。……さて。ここで疑問が生まれます。じゃあ、エヴァのパイロットって何
 前話のゲンドウの台詞を見てみましょう。
ゲンドウ「信号パターンをエヴァに送り込む。エヴァがそこにパイロットがいると思い込み、シンクロさえすればいい」
 つまり、パイロットが乗ってると思い込めばエヴァは動く。そう言っているわけです。現に、エヴァ初号機はパイロットの操作によらず暴走しています。極論してしまえば、パイロットはエヴァ(の中の人)にやる気を出させる要員、とも言えるでしょう。
(注:この辺は初号機特有の性質の可能性も一応ありますが、後に弐号機も暴走の兆しを見せているので、中の人のいるエヴァに共通の性質と考えていいと思われます)
 それを代わりに行うのがダミープラグであり、ダミープラグはパイロットの真似をして人為的な暴走を引き起こす装置、とアタリをつけることができます。

 と、こんなところなわけですが。実のところ、この話には裏があり、もうちょっと事態は複雑です。何故かと言うと、ダミープラグのベースがレイやカヲルだから。
 コイツら、もともとエヴァンゲリオンのオリジナルであるリリスやアダムのボディの持ち主(魂)なんで、その気になればコアを通さず直でエヴァを動かせてしまうのです。コイツらを複製したのが本編のダミープラグ。「正規パイロット(シンジやアスカ)のコピー」ではないことがミソです。
 恐らくこの辺の事情があるので、実はエヴァンゲリオン2ではコアについて「パイロットと神の身体(エヴァ)のギャップを埋める装置」であり、ダミープラグそのものが「エヴァを(コアを介さず)動かす機能を持った人工的な魂」という書き方をしています(括弧内は自分による補足)。こういう事情なので、この捉え方も、多分間違いではないのですが。や……ややこしい……。
 何が言いたいかというと、エヴァンゲリオン2の記述も、一読した通りには信用できないってことです。エヴァンゲリオンは地獄だぜ!! おのれアルファシステム。

 更に、この先の話……「エヴァにパイロットがいることの意味」、「レイ、カヲルを使ったダミープラグ(真)の用途」については、ゼーレの野望と密接に絡むので後々取り扱う予定。前置きはこのくらいにして第拾八話、「命の選択を」本編に移りましょう。

 冒頭から、エヴァ参号機の空輸。エクタ64とネオパン400が交信しています。
 コールサインっぽいですが、「ネオパン400」というのは、富士フィルムが出していたモノクロ銀塩フィルムの商品名です。2018年に販売停止。ネオパンSSも同じブランドですね。同様に、「エクタ64」もエクタクロームというコダック製のフィルムが元ネタ。こちらはエクタ100が数年前に復刻され、現在(2020年)も販売中。
 内容は、航路上の積乱雲を突っ切るという感じ。今週のびっくりどっきり使徒、バルディエル(の中身)は、この積乱雲の中に巣食っていたものと思われます。
 十字架に宙づりって、めちゃくちゃ空気抵抗大きそうな運び方なんですが大丈夫ですかね。

 アスカはミサトを避けている。とミサトさんの弁ですが、フォースチルドレンの正体を知ってしまったのでシンジと顔を合わせづらい、というのもあると思います。
ミサト「シンちゃんにはまだ女心はわからないか」
 ミサトさんにはまず人の心をわかって欲しい。
 そして、またもフォースチルドレンについて伝え損ねるミサト。「ネルフ本部のエヴァはちゃんと動いてるから大丈夫」って、ちゃんと(使徒ブチ破って出てくる初号機)……動いて(暴走する模擬体)……ます(起動試験で暴走する零号機)……?

 ミサトの留守中は加持さんが面倒を見てくれるそうですが、もう常時加持さんがいた方がいいんじゃないかな……。
 そして、ケンスケはとうとう「エヴァに乗せてくれ」とミサトさんに直訴。(無駄に)情報通のケンスケでもトウジがチルドレンに選ばれたことを知らないことから、チルドレン選出については機密レベルがかなり高いことが伺えますね。あと、エヴァの原理についても知らない様子(この辺はエヴァンゲリオン2のPSP版で掘り下げられます)。

 案の定、情報共有のできてなさをリツコさんに詰られるミサト。当然オブ当然。
ミサト「(シンジくんが)恐いのよ。時々、何考えてるのか分からないし」
 何考えてるかわからなくて恐いのはミサトさんの方だよ!!! むしろ常時だよ!!!
ミサト「彼が自分で言いだすかもしれないわ」
 とうとう他人、というか本人に望みを託しはじめるミサト。仕事してくれ!
 トウジは妹の治療のためエヴァに乗る模様。浪花節。

 当のトウジは気もそぞろ。せめてもの慰めである日常の夫婦喧嘩イベントが無いことに不満を漏らす。アスカは三バカに会いたくなかった、だそうで、やはりシンジやトウジと顔を合わせるのが気まずかった様子。ミサトさん……自意識過剰では?

 というわけで、大変珍しいレイとトウジの会話ですが。
トウジ「お前が心配しとんのはシンジや」
 トウジが滅茶苦茶図星を突いたせいで、即修了。トウジがパイロットに選ばれたことで二人の関係が変わるのでは、という不安をレイが抱いた、と取ることもできますが、レイにそんな器用な想像ができ……できるのか……?
 お弁当を余分に作ってきたヒカリに、この辺の様子はばっちり見られていましたが。

ミサト「あたしをここまで待たせた男は初めてね」
 加持さんの往時の苦労が偲ばれます。
 あと、授業をサボり、シンジを殴ったことを後悔するトウジ。

 ヒカリとアスカの恋愛相談。「義務で一緒にいるだけ」と言いますが、シンジのことになるとやたら饒舌なアスカ。「ナイーヴそうに見えるけど鈍感でバカ」「人との付き合い方を知らない」、酷い言われようですが、トウジ程ではないにしろ的を射ていると思います。
 エヴァの例の原則に照らすと、「人との付き合い方を知らない」とかは自己言及臭いですが。それでも、アスカとヒカリの友情は人間関係がギスギスする中での癒しと言えるでしょう。まぁ、この後アスカの方がどんどん壊れていきますけど。
 好きなところはやさしいところ、と聞いて思わずギャグ顔。

 ミサトのマンションで流れてるのも、メロドラマの愁嘆場。
 三号機パイロットの件についてはぐらかすアスカ。そういえば、ヒカリの相談に乗りながらも、トウジがパイロットに選ばれた件については恐らく一切口にしてないんですよね……。女の友情……。
加持「こんな時は早めに寝ちまうのが一番だ」
 シンジとアスカの不和を察して。

 何故かシンジくんと雑魚寝する加持さん。アスカは隣の部屋なのか、それとも自室なのか……。
シンジ「僕の父さんってどんな人ですか?」
 久々の、自分の父親について聞いてみたシリーズ。しかし、加持さんからは答えは得られません。代わりに得られたのは、人と人とは分かり合えない、だからこそ理解しようと努力することが面白い、という含蓄あるお言葉。
 伊達に、あのミサトさんと付き合っていないわけですが。前回の通り、シンジくんにとっては父親はもう「楽しいこと」の構成要素ではなくなっています。
 そうして、父と母のこととか、仕事のこととか、なんとなく「わかった」、「わかってしまった」けど、それでも尋ねてみたのがそもそもの加持さんへの問いなので、この辺の問いの答えはシンジくんの中に既にあるものを言語化した形とも言えるでしょう。
 加持さんのこの辺の台詞はエヴァ全体のテーマとも関連しています。現に、一番近くにいる副司令ですら、ゲンドウのことは完全にはわかっていないことが後から判明します。
加持「男と女の間には、海よりも広くて深い川がある」
 これ、元ネタは長谷川きよしの「黒の舟唄」だと思われます。加持さん、昭和の男。
 21世紀生まれのシンジくんには、いまいち通じなかった様子。

 さて、エヴァ3号機の起動実験。実験場はネルフ支部のある松代地下。ケイジはこのために作ったんでしょうか。人員の中にはアメリカ組っぽい集団もいます。
ミサト「エヴァを4機も独占か。その気になれば世界を滅ぼせるわね」
 一瞬、ミサトをチラ見して話題を逸らすリツコ。ミサトさん、機密については殆ど何も知らないんですけど、たまに勘が鋭い。

 この期に及んで知らないシンジくん。トウジがどんな顔でエヴァに乗っているのかは、一切描かれていませんね。

 3号機、パイロットのシンクロが成立した時点で暴走します。積乱雲で寄生された使徒にボディを乗っ取られた模様。あと、「使徒と(アダムベースの)エヴァの接触ではサードインパクトは起きないっぽい」というのが、今回のわかるポイント。それはそれとして爆発はする。
 ちなみに、今回の寄生使徒、ゲームでは掃除で除去されることがあります。

 暴走したエヴァの後始末。冬月も戦自の介入を気にしています。アメリカ第二支部の消失でピリピリしている部分もあるのでしょう。
 そんなこんなで、とりあえず空輸で現場に放り込まれてから状況説明を受けるシンジくん。ミサトさんがいないと、直前の無茶ぶり……もといブリーフィングすらナシでエヴァに詰め込まれて放り出される様子。
 仕事しろ、って言ったけど、一応仕事してたんですね、あの人……

 珍しいエヴァの遠征ですが、電源ケーブルはその辺の高圧線から引いてる模様。

 野辺山で移動する3号機こと、バルディエル。「ワリゴー」の文字が映り込んでますが、イギリスの地名では? 意図不明。
 プラグの強制射出を試みるも、プラグが網に引っ掛かって飛ばない。パイロットの無事が気になります。

 バルディエルに瞬殺される弐号機。描写すらなく完全に沈黙。このよくわからん敗戦で、アスカのメンタルが本格的にボコボコになりはじめます。
 弐号機の時はおまかせモードだったのに、零号機にはちゃんと指示を出すゲンドウ。しかも、パレットライフル装備の零号機より、バズーカ装備の弐号機の方が先に接敵してる。お前……。
 バルディエル、零号機を前にして異常な跳躍。ATフィールドの斥力を使っている感もある。

 さて、バルディエル。弐号機は放置プレイだったのに、零号機には侵食を試みています。ここ、もしかすると重要なので覚えておいてください。
 神経接続をカットせず侵食部位を破棄した零号機は戦闘不能。不手際なのか、それともシンクロカットした場合、ATフィールドが消失して更に侵食が進む危険があったのか。
 いずれにせよ、エヴァ二体を瞬時に失う指揮。残った初号機に「『お前が』倒せ」と圧をかけるゲンドウ……。お前……。

 一方、レイとアスカが倒されてるのに「人が乗ってるんじゃないの」と冷静なシンジくん。
 バルディエル、特殊能力は腕が伸びることくらいなのに、純粋に強い。

 人が乗っているものとは戦えない、というシンジを詰るゲンドウ。
 この辺、親子のスタンスの違いが強烈に出ています。ゲンドウは、御存じの通り、自分の目的のためにはあらゆるものを利用するタイプ。
 せめて、エヴァがもう一機生き残ってたら、後ろから組みついてエントリープラグぶっこぬくとかできそうなんですけどね……。ゲンドウの指揮が悪い。

ゲンドウ「お前が死ぬぞ」
シンジ「人を殺すよりはいい!」
 一瞬、ゲンドウの目元アップ。この刹那、ゲンドウは何を思ったのでしょうか。しかし、少なくとも。ゲンドウは死に瀕した息子と向き合おうと試みた、ということだけは事実なのです。まぁ、シンジくんは基本的に鈍感だし、何より死に掛けてるので、こんな親父のデレを気にする暇ないと思いますけど!!

 息子の意志は固く、このままでは初号機も息子も失うかもしれない。というところで、ゲンドウは(多分やむなく)ダミーシステムの使用を決断します。

 ダミーシステムによって起動した初号機は、暴走時同様、バルディエルを圧倒的力で締め上げる。この後の執拗に殴りつる攻撃等は暴走時の挙動と似ているんですが……今回は、相手をバラバラに引きちぎっていく点がちょっと違います。敵のベースがエヴァだからなのかも。
 そして、最終的にはエントリープラグを握り潰してしまうわけです。この辺、テレビ版だと「こうなる前に止めろよ!!」感があったのですが、劇場版ではバルディエルのコアらしき部分がエントリープラグにある、という描写になっていますね。

 ダメ押しでお弁当をつくる委員長の姿。
 ミサトさんは負傷するも生存。血液型AOなんですね。
 地下ケイジは米国第二支部のようなクレーターになってますが、破壊範囲は狭そう。バルディエルはここから這い出したのか、跳躍して飛び出たのか。使徒による破壊の跡が人類の過ちによるものより小さいというのは皮肉ですね。
 加持さん、ミサトさんに会いに真っ先に飛んで行ったんでしょうか……と思ったら、「君よりは軽傷だ」とのことで、どうも先にリツコに会っていたみたいです。なんかもう凄いよ加持さん。
 ミサトは今更ながらに「シンジくんに何も話してない」と後悔をします。

 当のシンジくんですが……こんな状況でもミサトの無事を気遣えるあたり、いい子です。ただ、
「人を殺してしまった……(自己嫌悪)」→パイロットの生存確認→「生きてた!(ぬか喜び)」→トウジでした→絶叫
 と、見事にぬか喜びと自己嫌悪の繰り返しでダメージが入る構成。このアニメ、シンジくんにやさしくない(自明の事実)。

 というわけで、次回「男の戦い」。色々とターニングポイントになる回です。第1話と対になるシチュエーションで、シンジくんは果たして何を思うのか。必見です。

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