いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン⑨第七話『人の造りしもの』

 それでは、重工業ジェットアローン……もとい、新世紀エヴァンゲリオン第七話「人の造りしもの」。ストーリーひと段落で息抜き回、と見せかけて、割と重要な回です。

 冒頭、ゲンドウと話す謎の男。まぁ、加持さんなんですが……色々と黒い裏事情が透けて見えます。しれっと「情報公開法」という単語が出ていますが、現実で成立したのは1999年。エヴァの放送当時は架空の存在です。
 内容については日本政府は超法規的権限を持つネルフを煙たがり、あれこれ手を焼いている、みたいなことだと思われます。加持さんはまだドイツに居るはずなので、「例の計画」は今回のジェットアローンとは別件の可能性も大。
 それにしても、この司令室のデザイン、なんだろうな……。

 ミサトのマンション。朝から酒。そして、食事当番制度瓦解のお知らせ。シンジくんもミサトさんへの遠慮がゼロに。自己評価は低いけれど、親しくなれば遠慮が無いのがシンジくん。人によっては「増長」と見えるかもしれません。
 あと、ミサトさんがこの歳まで一人なのは、多分別の原因ですよ……前にちょっと書きましたが。犠牲者(加持さん)も出たことですし、そのうちまた取り上げましょう。
ミサト「これも仕事だから」
シンジ「仕事ですか」
 の後、ちょっと「マズった」という顔をミサト。お互い遠慮がなくなってきているものの、根底にあるのは指揮官とチルドレンの関係です。

 そして、トウジ達三馬鹿の前では取り繕うミサトさん。今回はミサトさんの様々な顔が見られる回でもあります。
 シンジ登校後、ビール二本目。冷蔵庫をビールだらけにするだけはあります。
 そして、シンジの警備引継ぎ連絡。チルドレンは替えの効かないエヴァンゲリオンのパイロット、ということでネルフ保安部(家出回で出てきた人たち)がガードに付いています。家ではミサトさんがその代わり、ということのようです。
 ……旧劇場版で明らかになりますが、ミサトさんの対人戦闘力はヤバいです。ズボラに見えてもお仕事中なのです。……多分。

 そして、進路相談。擬態が完璧のミサトさん。この人気、シンジのクラスは全員母親不在のため、女性の保護者が珍しい、というのもありそうです。

シンジ「エヴァって何なんだろう?」
 ということで、ようやくエヴァの正体という謎を思い出すシンジくんです。そもそも、ここまでの話を思い返してください。シンジくんが使徒と戦って、その合間に家出して、レイの家に不法侵入して、なんかいい話としてまとまったのが今までのストーリです。
 そう、第一話以来の「エヴァってそもそも何なのさ?」という疑問が完全に放置されているのです……! 使徒のサンプル回収シーンでも、明らかに使徒と共通要素のあるエヴァについては全く触れず、使徒と人間の関係性を匂わせて終わりました。エヴァ作っといて使徒が解析不能、なんてあからさまに怪しいですよね……?
 血の匂いのするのに落ち着くエントリープラグについては、多分LCLのせい。LCLの原料というのはネルフ地下の白い巨人、生命の起源リリスから滴れ落ちるで、「リリスから生まれた生命」というのは、だいたいこのLCLから生まれています。シンジくんが落ち着くのは、エヴァ初号機の特性にも関係してそうですが。

 零号機はヤシマ作戦で大破。以後、ドラ●もんっぽいカラーの零号機改に改造されます。エヴァの代名詞、ウェポンラックもここで装備されます。
 使徒の処理について。弐号機(次回登場)について。
マヤ「司令が留守だと、ここも静かでいいですね」
 しれっと爆弾発言をするマヤ。ゲンドウの職場での態度が偲ばれます。

 機上の人のゲンドウ。SSTOがあるなら、この手の超音速機くらいはあるのでしょう。どうやらUN所属機の様子。
 機内で「昨年度出生率またも低下」のニュース。この世界の人類は行き詰ってますよ、というお話です。
 接近する謎の男。
男「サンプル回収の修正予算、あっさり通りましたね」
 多分使徒のサンプルのことと思われる。
 先程も出てきましたが使徒の処理については、前々回を参照。後の話を見るに、「使徒の動力源を修復してエヴァに乗せる」ということをやっているので、その兼ね合いがあるのでしょう。
 米国以外の理事国がエヴァ六号機の予算を承認。エヴァンゲリオン、やっと零号機がモノになったのに、建造計画は随分先まで進んでいるようです。
 ちなみにこの男、中国の関係者らしいです。8号機からは中国も建造に参加、ということらしい。6号機までが第一次整備計画、7号機以降が第二次整備計画、ということでしょうか。
男「ただパイロットが見つかっていないという問題はありますが」
 はい、ここ重要です。後に登場する「ダミーシステム」。それがこの答えです。要は、エヴァンゲリオンを無人で運用するシステム。
 ……と、いうより。本来、エヴァンゲリオンは「無人で運用する」のが終着点で、人間が動かすのは過渡期の産物、という匂いもします。詳しくはダミープラグの話が出た時に。実際、今使徒と戦ってるのも、制式型ではなくプロトタイプとテストタイプですし。

 セカンドインパクトのとりあえずの真相。一般向けのカバーストーリーは、シンジくん家出の回で見た通り。教科書を見ると、「大質量隕石」って言ってるけど、「めっちゃ小さい隕石が亜光速で落下したから相対論効果で大質量」って話みたいです。それ大質量って言っていいの?
 教科書には、その隕石を観測した、というような人も載っています。この辺の話、もしかしたら後で使うかもしれないので、一応。
 なお、教科書に書いてありますが、旧東京はセカンドインパクト後の混乱で新型爆弾(後のN2爆弾でしょうか?)を投下され、廃墟に。日本の首都は海面上昇もあってか長野県松本の第二東京にとりあえず遷都。その後継として名目上作られたのが、第三新東京市……という感じです。
 旧東京は今話で登場します。

 リツコ曰く、人類は南極で使徒と呼称される物体を発見。調査中に原因不明の大爆発を起こした。これがセカンドインパクトの正体、とのことです……が……うん、ギリで「嘘は言っていない」って感じですね!!
 以後も、リツコの発言は「重要情報を隠してるけど嘘はギリギリ言っていない」みたいな台詞が結構見られます。そのせいで説明がふわふわしていることも結構ありますが。科学者としての良心でしょうか。
 そもそも、これが正しいとすると、エヴァと戦ってる時に使徒が大爆発するリスクがあるようにも聞こえるんですが、シンジくんはそれでいいの?
 ……まぁ、要は「世界を護るために戦っているのよ」という話なんですが、その程度の情報はもっと早く教えてやれよ!! もう三体くらい使徒倒してるよ!!
ミサト「わかったわ」
 神妙な顔をしていますが、実はミサトさんは何もわかっていません。リツコはわかってる。

 出張モードの気合の入ったミサトさん。
ミサト「なんかデバって」
 って言ってるけど、普段はシンジくんの家事能力に頼ってますよね……?

 旧東京都心は水没。思い入れのなさ的に、ミサトは東京以外の生まれ育ちなんでしょうか。出身は東京大学みたいなんですが。
 ジェットアローン計画には戦略自衛隊は絡んでいない様子。後の派生作品(※鋼鉄のガールフレンド、エヴァンゲリオンANIMA)を見るに、戦略自衛隊も戦略自衛隊でロボット兵器を作っているっぽいのですが。本編には未登場。エヴァテレビ放送の翌年に発売されたゲーム「鋼鉄のガールフレンド」は、戦略自衛隊のロボット兵器を巡るストーリーとなっています。

 お披露目会。ネルフのテーブルはデカいところに二人だけ。隔離されてるのか、大人数で来ると踏んだのか……。
 ジェットアローンは原子炉を搭載して150日間の行動可能。
リツコ「格闘戦を前提とした陸戦兵器にリアクターを内蔵することは、安全性の点からみてもリスクが大きすぎると思われますが」
 一見もっともですが、ロボットアニメ全般にわたるツッコミだよ!! ガンダムが巻き添え食らってるよ!!
 ……まあ、この五年後くらいに、ガンダムも電池で動くようになりますけど。
 以後、時田シロウとリツコの遣り取りなんですが……基本的に時田さんが正論を吐きまくっています。
 そもそもシンジが来るまでは、ネルフにあるのは暴走しかしない零号機と、起動すらしない初号機という有様……ジェットアローンとどっこいどっこいか、それ以下ですね。
シロウ「まさか、科学と人の心があの化け物を押さえるとでも?」
リツコ「ええ、勿論ですわ」
 ……はい。これ、エヴァの根本原理に纏わる話です。そもそも、現行のエヴァの正体は、アダム・リリスのコピーに「人の心」を制御装置として組み込むことで制御可能にした(※暴走しないとは言っていない)ものです。
 まさにシロウの言う通りの代物なんですよね。なのでリツコの返答も強い断言口調。
 エヴァの修理予算は国を傾ける、と委員会の人が言っていましたが、餓死者が出るレベルな模様。まぁ、エヴァ予算との因果関係は微妙ですが。

 ATフィールドの話。そもそも、前回のヤシマ作戦、使徒を倒したのはエヴァというより、戦自研のポジトロンライフル日本中の電力でしょうが!! そりゃ時間の問題だわ!!
 前話ではATフィールド関係なく使徒を倒せる兵器。そして、今回はエヴァ以外のロボット兵器まで出てきます。エヴァは使徒を倒すために存在するというけれど、じゃあ、何故「使徒を倒すのがエヴァでなくてはならないのか?」
 答えは後ほど。

 モノにあたるミサト。
リツコ「自分を自慢し、誉めてもらいたがっている。大した男じゃないわ」
 ゲンドウと不倫中の人が言うと説得力が違いますね。
 あ、エヴァのセリフブーメランを考慮すると、その……大丈夫です?
ミサト「なんであいつらがATフィールドまで知ってんのよ!」
リツコ「極秘情報が駄々洩れね」
 ……さて、なんでなんでしょうね?
 ここで、第一話を思い出してください。

 そして再び司令室。UNのお偉いさんを前に、
冬月「やはりATフィールドか?」
ゲンドウ「ああ、使徒に対し通常兵器では役に立たんよ」
(エヴァ1話&『いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン③』より)

 ……お判りいただけましたでしょうか。
 漏らしたのはお前のとこのトップ(&不倫相手)だよ!!!!
 おあとがよろしいようで。

ミサト「諜報部は何やってるのかしら?」
 こたえ:JAのプログラムを書き換えています。
 プログラム画面に「kozaic(こざいく)」って書いてあったりしますね。
 ジェットアローン起動。「完成披露」と言うからには、完成しているのでしょう。そしてリツコは微妙な表情。工作のことを知っているからでしょう。

 そして、ジェットアローンは小細工によって暴走。会場を踏み潰していきます。
 まぁ、たとえ暴走の危険がないとしても、市街地&観客席の方向いて歩かせるなよ!! 海の方とかにしろよ!!
ミサト「奇跡を待つより捨て身の努力」
 まともに聞こえますが、捨て身の努力するのが大抵本人以外なんだよな……。今回は例外ですけども。ホントに捨て身するからなミサトさん……。

 ジェットアローンを止めるため出撃するエヴァ。輸送機のパイロットは日向です。地味にSTOL性能が高いエヴァ輸送機。補助ロケット使ってる気もしますが。
 なお、この状態の初号機を「F装備」と呼称しています。これ、後のゲーム等で出てくる「F型装備」と被ってるんですが、F型装備はゼーレを欺くためにナンバリングをかぶせたという設定のようです。

 こんなことで呼び出されるシンジくんも災難ですが、ミサトさんを手で運びながら走ってJAを追いかけ、JAを押さえながらミサトさんをJA後部に取り付け……地味に動作難度が高いと思うんですが、シンジくんはぶっつけ本番で難なくこなします。すごい。

 そして、人為的工作によってプログラムが書き換えられており、パスワードは無効。ミサトの努力と無関係に、JAは停止します。
 ……あと、地味にミサトさんの手押しでシリンダーちょっと動いてるんですけど、どういうことなの……? 怖い……。

リツコ「あのバカ」
 今回の騒動の原因は、リツコさんがミサトさんに情報を共有しなかったことですよね!?
 そして、ミサトさんを見直すシンジくん。滅茶苦茶ハシャいでます。

 見直した直後にいつものミサトさん。険しい顔のシンジ。
ケンスケ「他人のおれたちには見せない、本当の姿だろ? それって家族じゃないか」
 とのことですが、ミサトさんはミサトさんで、わざとハシャイでる節もあるんですよね。根底では、やってるのはお仕事ですし。どこまで地なのかは保留としましょう。ミサトさんの実体は、そのうち加持さんが語ってくれそうです。
 それに……そもそも、他人の「本当の姿」とかあるの? というのは、作品のテーマに絡むところ。

 さて。少し本編より離れますが、今話で生まれる「使徒を倒すのはエヴァじゃなきゃいけないのか?」という疑問について。
 答えから言ってしまえば、エヴァンゲリオンは使徒と戦う、というより、後に登場する人類補完計画のパーツとして必要なのです。使徒と戦うのは、あくまで表向きの理由。
 巨大ロボというより、御神体としてエヴァを作らないといけない。だから「他の使徒に対抗できる可能性」をネルフは潰して回っているわけです。
 ちなみに、本編での時田シロウの出番はこの話だけですが、ゲーム「エヴァンゲリオン2」では、旧劇場版の戦いに参戦した時田シロウとJA改がエヴァ量産機をボコボコにする展開があります。
 ……まぁ、JA改は置いておくとしても、エヴァは本質的には兵器ではない、とすら言えるでしょう。

 ということで、この辺を完全に勘違いしたキャラが次回登場します。
 次回、「アスカ、来日」。



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