いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン⑰第拾伍話『嘘と沈黙』

 第拾伍話、「嘘と沈黙」。使徒は出ませんが人間関係が動きます。主にシンジとアスカ。ちょっと昼ドラだかトレンディドラマだかみたいな空気の回。英語タイトルは"Those women longed for the touch of others' lips, and thus invited their kisses. "日本語訳すると、「彼女達は他人の唇に触れることに憧れ、それゆえキスを請い求めた」……ですかね。辞書通りの翻訳はできても、微妙なニュアンスまでは自分にはよくわかりません。
 キモは"those women"と複数形なところ。ウルトラ身も蓋もなく言ってしまえばミサトとアスカが其々の相手とキスする話、ってことです。昼ドラやんけ。
 なおこれ、挿入BGMのタイトルでもありますが、内容はEDのFly Me to the Moonのアレンジでもあります。ドンピシャでミサトと加持さんのシーンに流れる曲。

 本編。以前も触れましたが、第三新東京市では使徒と戦った跡地が第二、第三芦ノ湖になっています。恐らくイスラフェル戦、サハクィエル戦で出来たもの。
 ゲンドウではなく冬月にキール議長から計画遅延の文句。キール議長は人類補完委員会の委員長であると同時に、秘密結社ゼーレの構成員でもあります。どちらの顔としての苦情か微妙なところですが、この時点では前者でしょうか。
 キール議長がイラついているところは中々想像が難しいですが、後にもゲンドウの解任と冬月への司令交代を示唆するあたり、焦りは確かにある様子。前話でも触れましたが、前回のロンギヌスの槍の入手によって手札が粗方ゲンドウの手の内に集まってましたし。
  ただ……前々回のイロウルの件を見ると、冬月にネルフ司令が務まるかは微妙なところ。

 「アダム計画」について言及。この時点ではリリスもアダムと呼ばれてるので、リリスについての計画であると思われます。前回、槍を刺す行程をこなしていましたし。
 前回のシンクロテストでも登場したダミープラグという単語。そして、全ての計画はリンクしている、ということで、実は「ダミープラグがエヴァンゲリオン、人類補完計画に必要な要素」ということがわかります。これはエヴァンゲリオンの位置づけについて考える上で重要です。覚えておきましょう。

冬月「レイもか?」
 前話のラストで冬月がゲンドウの計画、レイの存在の核心についてはろくに理解してないことがわかっているので、特に何か言う必要はない、というのがゲンドウのスタンスの様子。冬月としてはレイ=リリスではなく初号機を使うのがゲンドウの計画、みたいな認識なんですかね。

 加持さんについて。
冬月「好きにさせておくさ。マルドゥック機関と同じだ」
ゲンドウ「もうしばらくは、役に立って貰うか」
 マルドゥック機関というのは、エヴァパイロットの選出機関。ですが、実態はないダミー組織です。役に立つうちは放っておこう、みたいな感じでしょうか。マルドゥック機関も加持さんも、後にゼーレが計画に直接介入して以降はその役目を終えることになります。
 ちなみに、ここで加持さんを見逃したことで、後に冬月は命を救われます。人間、何が幸いするかわからないものですね。

 京都。
加持「16年前、ここで何が始まったんだ……?」
 16年前、エヴァ世界の1999年は、セカンドインパクトの前年にして、冬月、ゲンドウとユイが出会った年です。当時の冬月とユイは京都大学の教授(准教授?)と学生でした。ここから全てが始まるわけですが……詳細は後々の21話で語られますので、その時に。
 そして、マルドゥック機関に繋がるダミー会社。キール議長の名前が登記簿にあります。世界的秘密結社の首領でも、表の顔はこんなものなのかもしれません。ゲンドウと冬月、キール議長(ゼーレ)の関係を明確にする物証ですね。

 今更ですが、世界の秘密を知りたい加持さんはマルドゥック機関の謎を追っています。マルドゥック機関の仕事はエヴァパイロットの選出。順序的に、アスカにくっついて日本に来たのもドイツでその謎を追っていた関係ではないでしょうか。シャノンバイオが外資系企業である点も、アスカの選出されたドイツとの関連を伺わせます。
 ただ……マルドゥック機関自体は、実はあんまり世界の謎と関係ないんですよね。マルドゥック(マルドゥク)自体もバビロニアの神格で、聖書ベースのエヴァ世界ネーミングとは外れてますし。
 結局、エヴァパイロットの選出はネルフ内部で行われていたわけですが、そもそもレイやシンジが選ばれてる時点であからさまな縁故人事なので……。
 但し、チルドレンの中でも綾波レイだけは唯一ゲンドウのウィークポイントであるため、その辺を叩くのは戦略としては有効なのかもしれません。

 加持さんがバイトにいそしんでいて不在のため、不満なアスカ。この辺、アスカから見ると別の理由があるように見えているかもしれません。詳しくは後ほど。

 レイの雑巾しぼりをガン見するシンジくん。覚えておきましょう。これも綾波レイと水、というモチーフの変形なんですかね……?
 掃除中にチャンバラをやる程度にはケンスケ、トウジと意気投合している様子。

 シンクロテスト中に無駄話をするくらいには、ミサトもリツコも緩んでる様子。余談ですが、女性の初婚年齢はエヴァ製作時から現代までで上がり続けています。当時は30代での結婚はまだ珍しかった模様。
ミサト「明日だからね」
リツコ「そうね、明日ね」
 これ、シンジくんがゲンドウと墓参りしに行くのが明日、という話なんですが、ミサトは兎も角、なんでリツコがそんなスケジュール把握してんの? という点で、ゲンドウとの関係の伏線っぽい。

 シンジとレイ。初期と比べると、滅茶苦茶普通に話すようになってますね。墓参りに行くときの話題チョイスが不安なシンジくん。
シンジ「父さんってどんな人?」
 とまぁ、シンジくんはこの後、父親について理解するため色んな人にこの問いを投げかけます。レイの答えは「わからない」。ゲンドウは他人と己の間に壁を作る人間なので、だいたいみんなわかりません。
 先程の雑巾絞りのシーン、レイも見られていることに気付いていましたが、「お母さんみたい」と言われ、赤面。この辺の眼の動きが細かいです。動揺してます。ただ、「主婦とかが似合ってる」と言われた瞬間、真顔に戻り、
レイ「何を言うのよ」
 のシーンでは表情は映りません。アスカもそうですが、肝心のところで表情を映さない、というのは今話あちこちで見られる演出。
 「母親」という絆・関係性には憧れがあるけど、「主婦とかが似合ってる」は、以前出てきた本人の生き方でもあるエヴァに乗ることを否定された感じがした、という受け取り方もできなくはないです。そうだとすると、シンジくんはまたしてもレイの地雷を踏んでるわけですが、今回は好感度が上がってるので手は出ない。まぁ、細かい演出意図については、絵コンテ集とか見ないとわからないので、結論については保留します。
 とりあえず、アスカは今回キスシーンまでやってるのに、レイはこういうところでヒロインポイントを稼いでいくんですよね……。

 ミサトとアスカの会話。ミサトにとってはアスカはまだ子供。ミサトのラベンダーの香水は伏線ですね。背景のテレビでは痴情のもつれの喧嘩シーン。シンジくんは「父親と会うのが嫌なわけではない」とのミサトの弁ですが、真相や如何に。

 シンジの回想。「帰れ」「よくやったな、シンジ」で、今のところゲンドウの好感度は愛憎半ば、半々くらい、というところでしょうか。レイに父さんのことを聞く等、「父親のことをもっと知りたい」という気持ちはあるようなので、会うのは怖いけど嫌というわけではない、という塩梅でしょうか。というところに、顔を突っ込んでくるミサトさん。
ミサト「逃げてばかりじゃだめよ。自分から一歩を踏み出さないと、何も変わらないわ」
 というわけで、毎度毎度の「逃げちゃダメ」。おまけに今回は、
ミサト「最初の一歩だけじゃなく、その後に続ける事も大切」
 と滅茶苦茶追い打ちをかけてきます。でもこれ、「父親と分かり合う」という前提の話なんですよね!!! 完全にシンジくんに自分を重ねて追い詰めにかかってます。ミサトさんはやっぱりミサトさんだ!

 懊悩するシンジくんの背景でミサトとアスカ楽しそうな会話。こういうのは地味に効く。加持さんの趣味に合わせるのは「それはないっしょ、もはや」とのことですが……?

 当日。ゲンドウとシンジの墓参り。セカンドインパクトで大量の死者が出ているので、それに対応した大規模墓地でしょう。交通の便は悪そう。
ゲンドウ「三年ぶりだな、二人でここに来るのは」
 ということで、第一話の「三年ぶりの対面か」という冬月の台詞が回収されます。三年前は墓参りだったんですね。いや、なんで冬月は墓参り行ったの知ってるの!?
 ちなみに、ユイは初号機内で物理的に溶けて消失したため、遺体も何もナシ。シンジくんは母親の顔を覚えていないようですが、もし覚えてたらどうする気だったんだろう……。母親に生き写しの少女と親しくしている父親、ヤバいよ……。
ゲンドウ「人は思い出を忘れる事で生きていける」
 あ、これ、ゲンドウを理解する上で極めて重要な台詞です。思い出を忘れ、今に立ち向かう。それがゲンドウの生き方という自己言及。
 後に続く決して忘れてはならない事、というのは基本的にはユイのこと。ユイの思い出のためだけに、他の全てを捨てて生きる男がゲンドウなのです。勿論、その中にはシンジくんも含まれています。
 ゲンドウの心中、何度か出てきますが基本的にウルトラ度し難いです。ただ、そもそもゲンドウが己の心の内を語ることを含めて、これはシンジへの歩み寄りとも取れる台詞なんですよね。

ゲンドウ「すべては心の中だ。今はそれでいい」
 とのことですが、ついでにゲンドウの野望について整理してしまいましょう。ゲンドウはゼーレの補完計画を利用して(そもそも補完計画の発案者はゲンドウです)ユイを取り戻そうと暗躍しています。
 ゲンドウの計画の具体的なプロセスについてですが、初手で失敗するので本編からはよくわかりません。例によって本編の描写とエヴァンゲリオン2の情報から推測すると、
・アダムと融合
→更にリリスと融合して神に近い存在になる(ここで失敗)
→ユイの乗り移った初号機と融合
→ユイと再会
 という、些か回りくどい方法になっています。これは何故かと言うと、ユイは自らの意志でエヴァ初号機の中に残っているからです。でも、ゲンドウはもう一度生きたユイに会いたい。最初からすれ違いが生じているんですよね。
 ユイの目的は、不滅の(≒神に近い)存在になり、人類の生きた証を未来永劫残すこと。不滅の存在になろうとしたユイに並び立つには、自らも神になるしかない、という論法なのでしょうか。

 なので、ゲンドウにとって初号機は大事だけどシンジはどうでもいい。というより、シンジを初号機に乗せてることそのものが、ユイを息子に取られてるような状態、ともいえるでしょう。多分愉快ではない(漫画版では、この辺の憎悪がゲンドウの軸になっていました)。
 ゲンドウからシンジへの思いは、なかなか厄介なところですが、基本的には理解不能故の拒絶、と見てよいかと思います。思い出を忘れても忘れても、シンジは付いて回るわけです。旧劇でも「接し方わからん。怖い。近寄らんとこ(意訳)」みたいなこと言ってました。
 そして。そんなシンジくんに、ミサトさんはエヴァに乗ること=父親から逃げないこと、という呪いをかけました。つまり、実のところはシンジがエヴァで戦う(ゲンドウに近付く)ほど関係が決裂する仕組みになっているのです。ミサトさんの罪は重い。
 これを踏まえて、最終的にシンジくんがどんな答えを出すのか。ここ、重要なので覚えておいてください。

 これは妄想の類ですが、ダミープラグが完成すれば、シンジをエヴァから降ろせるんですよね。そうすれば、エヴァと無関係の父と子として、もしかしたら和解が叶うかもしれない。そんなルートも、もしかしたらあったのかもしれません。

 と想像を逞しくしたところで、本編。墓場にVTOLで乗り付けるなよ!! シンジくんはここから歩いて帰るんやぞ!! おまけに、VTOLにはレイが乗ってるし……。レイはシンジくんの方を見てますね。
 先程、「人は思い出を忘れる事で生きていける」とゲンドウは語りましたが、一方で「私はこれまでの時間と、他の人たちとの繋がりによって私になったの」とテレビ版25話で綾波レイは語ります。思い出を忘れようとする男と、思い出を求める少女。決裂は自然の成り行きだったのでしょう。

 シンジくんは意を決して「今日は楽しかった」と告げますが、ゲンドウの反応は「そうか」と淡泊。眼鏡が光ってて表情も読めませんね。

 楽しい(?)お墓参りが終わり、シンジくんはチェロを弾きます。なお、シンジくんの趣味は後から生えることがあり、新劇では天体観測も趣味になっています。
 アスカ曰く「そんなの持ってたの?」とのことですが、ホントにそうだよ! 家出の時もチェロ持ってた様子はなかったし……。
 それはともかく、シンジが何故チェロを続けたのか。
シンジ「誰もやめろって言わなかったから」
 というシンジくんらしい回答なのですが、それに対するアスカの返答。
アスカ「やっぱりね」
 ということで、かなりシンジくんのことを理解していることがわかります。前話でようやくレイに興味を持ったのとは大きな違いですね。あと、いつもみたいに罵ったりもしない。なお、デートは途中ですっぽかして帰って来た模様。

 ミサトさんと加持さんとリツコさんは、バーで結婚式の三次会。
 ミサトさんに「逃げるなよ」と言う加持さん。逃げられたことがある模様。
加持「浮かれる自分を抑えようとして、また飲んでる。今日は逆か」
 逆にすると、単に「飲んで浮かれてる」になる気がするんですが? 酔ってます?
 加持さんはリツコさんにはマメ。ただ、アルバイトはバレてる模様。
リツコ「ホメオスタシスとトランジスタシスね」
 ホメオスタシス(恒常性)というのは生物が体内環境を維持する機能のことです。体温を維持したり、体液の濃度を維持したり、みたいな機能ですね。ただ、トランジスタシスというのは聞き覚えナシ。酔ってます?
加持「男と女だな」
 酔っ払いの会話。
 さっさと切り上げて帰るリツコ。ミサトと加持を気遣ったようにも見えます。ということで、ミサトさんから遅くなるという電話を受けるシンジとアスカ。

 路地裏で吐くミサトさん。それを背負う加持さん。
 「変わった?」と聞かれたら「きれいになった」と褒め、別れ話の嘘には気付かない振りをし、この辺の加持さんの返答、パーフェクトコミュニケーションです。凄いです。
 以前も触れましたが、ミサトさんは嫌いな父親と向き合わなかった、逃げ出してしまったことがトラウマになっています。その結果、交際する男性にまで父親の面影や役割を求めてしまった。それに気づいてしまったミサトさんは、加持さんの前からも逃げ出した、というのが別れた理由の様子。
 あ、地味に葛城博士がネルフ(当時は人工進化研究所)に所属していたことが言及されていますね。覚えておいてください。
 使徒に復讐することさえも、父の呪縛から逃げるための行為と語るミサトさん。結果、シンジくんや加持さんに多大な迷惑が掛かっているわけですが、
加持「葛城が自分で選んだ事だ。俺に謝る事はないよ」
 それでも、こう返せる加持さんはすごい。
ミサト「シンジくんと同じだわ! 臆病者なのよ……」
 とシレっとシンジくんの評価が酷いことを言いますが、一方のシンジくんはきちんと父親と向かい合い、自分の気持ちを言葉に出しています。もう、ミサトさんとシンジくんは違う道を歩き出しているのです。
 ミサトのシンジくんへの自己投影から始まった共同生活は、或る意味、ここで終わりを迎えたとも言えるでしょう。

 現実を直視し、自分に絶望するミサトさんを「もういい」となだめ続け、唇を塞ぐ加持さん。ここで流れてる曲がサブタイトルの"Those women longed for the touch of others' lips, and thus invited their kisses. "ですね。

アスカ「ねぇシンジ、キスしようか?」
 唐突ですが、このへん、アスカ視点だと、憧れの加持さんは何故か不在を繰り返した後、ミサトと朝帰り(予定)。これはもうミサトとデキてると思います。
 一方自分は、つまらない男とデート途中ですっぽかして帰ってきてしまう。そんなところに、同居で好感度が上がったシンジ君の意外な一面を見てしまい……という辺りでしょうか。
シンジ「恐かないよ! キスくらい!」
 アスカからの徴発には、相変わらず対抗してしまうシンジくん。
 結果、だんだん変色するシンジくんと、洗面所に逃げ込むアスカ。ここも、アスカの表情を敢えて映してないですね。

 帰宅した加持さんから、ラベンダーの香水の香りがすることで、ミサトとの関係を悟ります。まぁ、ミサトを抱えて帰ってきてるんだから、匂いくらい移ってても不思議はないんですが……これが決定打になった、ということなのでしょう。
アスカ「あんたとキスなんかしたからよ!」
 とシンジに八つ当たりするアスカ。

 翌日。レイは学校を休み、アスカは何故か口元を隠すゲンドウポーズをしてますね……。可愛げがある。
 レイはゲンドウの前で謎の水槽に浸かっています。多分にSFオマージュ要素が強いですが、恐らくダミープラグ用のデータ収集装置と思われます。

 そして、ターミナルドグマ深層で加持さんを問い詰めるミサト。
ミサト「特務機関NERV特殊監査部所属加持リョウジ。同時に、日本政府内務省調査部所属、加持リョウジでもあるわけね」
加持「バレバレか」
 と、加持さんは言っているんですが……実は、ゼーレの手先というもう一つの、或る意味最大の顔についてはミサトさんは言及していません。その顔があるからこそゲンドウに見過ごされているわけですが。そもそもミサトさんはゼーレの存在自体を知る由もなく。
 扉の先にあるのはリリス。ですが、
加持「セカンドインパクトからすべての要であり、始まりでもある。アダムだ」
 さて。加持さんは自分でアダムを運んできたわけで、この巨人(リリス)とアダムが別物であることは当然知っています。つまり、完全にミサトさんに対して嘘を教えているんですよね。なんで?

 推測ですが、ゼーレやリリスは、ネルフ内部でもかなりクリティカルな機密と考えられます。故に、それを知れば、消される可能性も跳ね上がるんですよね……。というわけで、加持さんはミサトさんをなるべく真相から遠ざける方向に誘導しようとしていたことが伺えます。

 ミサトさんが後に掴む「セカンドインパクトの真相」も、起こったこと自体は間違っていなくても、実際の真相からは程遠いと思われるものでした。具体的には、セカンドインパクトの原因部分には言及せず、彼女の父親たちによって世界は守られた、と解釈させるようなものでした。こうして嘘をついてでも、彼女を父親の呪縛から解き放とうとしたわけですね。加持さん、デキる男。
 そうして加持さんは死して尚、ミサトさんを真相に近付けないことに成功し……そして結果として、視聴者はミサトさんの言動によって混乱に叩き込まれるわけです。

 というわけで、ゲンドウの嘘。アスカの可愛げのある嘘。加持さんの大人の嘘と、嘘にまみれた回でありました。「嘘と沈黙」の沈黙はキスのことですかね。そろそろ人間関係が軋みを上げはじめますが、まだギリギリで明るいエヴァンゲリオン。シンジくんのメンタル基準で言うと絶頂期。

 次回、「死に至る病、そして」。世にも珍しい調子に乗るシンジくんが見られます。やっぱり今回のキスの影響なんですかね……?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?