いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉙劇場版第25話『Air』
前回も言いましたが、エヴァンゲリオンの劇場版25/26話、劇場仕様ということでかなり過激な表現が各所に使われています。掘り下げると必然的にエグい話もすることになるので、その辺ご注意を。
それ以外は、もはや多くは語りません。それではエヴァンゲリオン劇場版『Air』、行ってみましょう。
冒頭。常夏の廃墟で立ち尽くすシンジくん。もはや会いに行くべき人は誰も居らず、学校もない今、することはない。カヲルくんは自分で手にかけてしまい、ミサトさんは怖いし、今やレイも怖い(主にリツコさんのせいですが)。ということで、消去法でアスカに救いを求める。
とはいえ、アスカは消耗して入院中。投薬のせいか意識を失っているようです。幾らネルフ絡みの病院とはいえ、シンジくん一人でアスカの病室に入れる時点で管理体制がガバです。
アスカの罵倒や皮肉、シンジくんはスルーしがちでしたが、何だかんだ救われてたということがわかります。
そして、シンジがアスカを異性として意識するシーン、何度かありますが、よりによってここで出てくるのが最悪です。
「シンジがアスカに何を求めているか」ということでもあり、非常にアレ。24話で弐号機をベコベコにした延長でもあります。シンジくんにも厳しいけどアスカにも厳しいアニメ、エヴァンゲリオン。
この辺のシーンで大事なのは、シンジくんの「他者」との関わりにおいて重要なのがアスカ、という点だと思います。ここで何したかは覚えておきましょう。
監視まみれの部屋で自慰にふけるほどアレな状態なのに、ドアをロックする程度の理性はあるのが最悪です。そういう癖(ヘキ)なのかもしれませんが。
シンジ「最低だ……俺って」
自己評価が低いが故、自己批判に走りがちなのがシンジくん。まぁ、これは普通に最低だと思います。
今までの二人はアスカがシンジくんに突っかかる、という形の関係だったわけですが、ここで初めてシンジくんがアスカを求めたという見方もできなくはない。方法は最悪of最悪ですが。
ここで疑問なのは、「この時点のアスカに意識があったのか?」という点。普通に考えると無いんですが、24話では裸で廃墟の浴槽に入っていたりと、仮に意識があっても何もできないような状態ではあります。映像上も、目元を映さないようになっていますし。ちょっと覚えておいてください。
初っ端、衝撃的なシーンから始まりましたが。劇場版では序の口です。
使徒を全て撃退し、ネルフは籠城モード。
日向は補完計画発動まで粘る、と言っていますが、そもそも補完計画の中身をどのくらい理解しているかは謎です。
といわけで補完計画の中身は、群体として行き詰った人類を完全な単体の生命として人工進化させること。ネルフの大本が「人工進化研究所」であるのも、そういうお話。ミサトさんは皮肉めいて「理想の世界」と言いますが。
この補完計画は人類補完委員会が公的に遂行しようとしている内容であり、ゲンドウ(とユイ)の表向きの計画でもあります。
ミサト、この期に及んで「委員会」と言っていることから、ゼーレについては知らないことがわかりますね。
アダムではなくエヴァンゲリオンが計画の重要なパーツである、という点は加持さんも辿り着いている様子。
ゲンドウとゼーレ。既に24話で決別していますが、一応最後の対話の機会。
ゼーレ「ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完はできぬ」
とのことですが。ここで、ロンギヌスの槍についておさらいしましょう。
ロンギヌスの槍は、元々はアダム、リリスの制御装置であり、限りなく不滅に近い生命始祖の唯一の弱点とも言えるモノです。
一種の生命体に近く、多分ですがATフィールド出してる始祖とか使徒とかが居ると、そっちの方にぶっ飛んで行って突き刺さる性質があります。暴走時の安全装置のような存在ではないかと。
オリジナルの槍は、南極、もしくは死海で発見されたアダム用のもの。リリス用の槍は行方不明。アラエル戦で使徒を殲滅した他、恐らくはセカンドインパクト時にアダムをバラバラにした一因とも目されます。
なお、エヴァンゲリオン2によれば、ロンギヌスの槍による封印は失敗し、S2機関の人為的暴走と思われる現象でアダムはバラバラになった、ということのようですが、この辺は26話で取り上げます。
ロンギヌスの槍の本来の機能は生命始祖の封印用であり、要は「覚醒した生命始祖をリセットする装置」と考えられます。リセット対象は始祖より発生した生命(人類、使徒)を含む様子。なので、アダムより発生した使徒に突き刺すと消し飛ぶわけです。
リリスに刺しても成長が止まるくらいで済んでいたのは、リリスの魂がレイとして外に在る状態で、ATフィールドが出てなかったからでしょう。多分。リリスのペアとなる槍については、今のところ情報不足なので保留とします。
問題なのは、なんでロンギヌスの槍がなくなるとリリス使えないのさ? という点。これは恐らく、補完計画の最終段階で生命始祖(orエヴァ初号機)がロンギヌスの槍と融合して生命の樹になるからで……ちょっと説明が複雑なので、26話に回します。「リリスは駄目で、なんでエヴァ初号機だといけるのさ」というのもあります。
ゲンドウ「ゼーレのシナリオとは違いますが」
エヴァ2によれば、ゼーレのシナリオは不滅の神に近い存在を作り出し、其れを使って同時に自分達も不滅の存在となること。補完計画をいわばその建前として使うものだったわけですが。
じゃあ、そもそもの「不滅の存在」はどうやって作るつもりなの? というのが本題です。
委員会としては、エヴァ初号機が不滅の存在となるのは計画外。本来はリリスを完全な存在とするつもりだったであろうことが伺えます。
オリジナルの「完全な存在」のレシピとしては、リリスの肉体+S2機関(生命の実)+人間の魂。ゼーレのなりたい「完全な存在」のレシピは、多分、エヴァンゲリオン+S2機関+人間の魂。
なのですが。問題なのは、この合体をどうやるのさ? という点。エヴァとシンクロできればそれに越したことはないのですが、アダムベースのエヴァとの融合は弐号機で失敗しています。アダムそのものとの融合も、セカンドインパクトで失敗済み。あまりにもリスキー。
多分そこでゼーレが考えたのは、リリスの活用です。元々、リリスから生まれた生命体である人間の肉体を、大本のリリスを覚醒させることでLCLに還元。魂を新たな肉体へ導いて貰う。
やっていることは、使徒が狙っていた「リリスとの接触による人類のリセット」と変わりません。つまりは、これがサードインパクトの内容となります。㉗で触れた、今までの戦いが「サードインパクトの主導権争い」というのも、こういうことです。
正規の「人類補完計画」の場合、集められた人類の魂は一つに溶けあい、完全な生命体へと進化する。「ゼーレ案」の場合、ゼーレの魂だけが新たな器を得る。他の人類は多分滅びる。「使徒案」の場合、人類はみんな滅びる。
こんな感じでしょうか。
なので、アダムベースの存在として新生し、不滅の存在になりたいゼーレにとって、アダム特効の槍は大変邪魔。でも儀式のためにはリリスと槍が必要。
後で掘り下げますが、ゲンドウはアダム・リリスと融合したいので、ロンギヌスの槍はやはり邪魔。
という感じでしょうか。
本編に戻ります。「人はエヴァを使って新たな段階に進むべき」というのがゲンドウ達人類補完計画派の意見。対して、ゼーレの主張はわかりづらいですが、あくまで個として存在し、「神と一つになる」こと。「死」が何を指しているか、というのがわかりづらくなっているポイントなんですが。
「神も人も、全ての生命が死を以て一つになる」地味なポイントですが、ゼーレにとっての「神」は、抽象的存在ではなく「生命」の一つであることを指しています。アダムやリリスも生き物。読み方としては、「全ての生命が死ぬし、今までの神も死ぬけど俺達は神と一つになって新たな存在になる」じゃないかなぁ……。
ここまでのまとめとして、「エヴァ初号機を核として人類みんなで一つになる」のが「人の形を捨ててエヴァという方舟に乗ること」で、ゼーレが考えてたのは、ゼーレだけが「エヴァという神の肉体を手に入れる」ことなので、「お前たちの計画には乗らん」という話なのかなと。
冬月「人は、生きて行こうとするところにその存在がある」
と、冬月の推し、もといユイの言葉。
あと、冬月、ユイは「自らエヴァに残った」ともここで明言しています。ここが肝で、ゲンドウの野望は「ユイと会うこと」ではあるのですが、「ユイを人間に戻すこと」ではありません。それは、彼女の願いを踏みにじることであるからです(過去にサルベージは試みているようですが)。では、ゲンドウはどうする気なのか? というのを覚えておいてください。
さて、ゲンドウと冬月(とユイ)は、ゼーレの願いを「死へ向かうもの」と見做しているんですが。この理屈だと、エヴァに残ったユイも「生きてゆこうとすること」を止めた存在、ということになるわけです。
では、その真意は何処に? というのが、ラストに向けた問い。
一方のレイ。ゲンドウの眼鏡をバキバキにして旅立つ。これは、レイが「二人目と違う」「ゲンドウに執着を持っていない」ということの現れだと思います。
レイの生まれについては前回取り上げましたが、「二人目」のレイは散り際にゲンドウの顔を幻視するほど、ゲンドウに対する好感度は高かったわけです。しかし、三人目になったことで、ゲンドウへの好感度がリセットされ、本来レイが生まれた意味であるシンジへを想う心が優勢になった。
問題は、ゲンドウの計画はレイを使う(レイが自分に従う)ことが前提になっていた点。多分二人目のレイなら問題なかったのですが……コツコツ好感度積んできたセーブデータを使徒にぶっ壊されたゲンドウくんは泣いていい。
シンジくんのSDATもバッテリー切れ。もう彼には何もする気がない、という表現でしょう。元気があれば電池交換くらいする筈なので。
セントラルドグマからデータバンクをハッキングし、セカンドインパクトの「真意」に辿り着くミサト。「真意」と言ってますが、まぁ、ミサトさんの言うことだしな……。
ちなみに、この端末画面、固有名詞の一部を「ADAM」「SEELE」等に置き換えたGAINAX社史です。気になる人は頑張って読んでみましょう。
ミサト「始まるわね」
世界の謎についてはポンコツですが、戦(いくさ)の予感については超一級のミサトさん。やはり鎌倉武士。
ゼーレ主導と思しきMAGIへの攻撃。既に他の支部はゼーレの手に落ち、本部が孤立しています。ゼーレの目的は、セカンドインパクトに必要なエヴァ初号機の奪取、並びにアダム、リリスの確保と思われます。なので、穏便に進められればそれに越したことは無い。MAGIを制圧すれば本部を取れるのはイロウル戦でも出てきました。
MAGI防衛のために呼び出されるリツコ。今のリツコにMAGI触らせるのは不安しかないですが。
日本国政府はネルフの法的保護を破棄。とはいえ、バックに居るのはゼーレでしょう。ゼーレがここまでの力を持つ組織であることを示しています。
とはいえ、日本政府の持っている情報では「ネルフは人類を滅ぼそうとしている」となっているので、皮肉なものです。
そんなわけで、「世界を護るために」戦略自衛隊が本部に攻めてくる。
ちなみに、装備として装輪戦車らしき車両が出てきますが、製作当時は影も形も無かったものの、20年後、似たコンセプトの車両が16式機動戦闘車として現実の陸上自衛隊に採用されました。或る意味、先見の明がある。
いままで使徒襲来を観測していた光学観測所も次々沈黙。「使徒ではなく人間を相手にする」ということで士気も低いスタッフ。
侵攻される本部。停電回では素人のシンジ達でも侵入できたので、人間に対しては穴だらけなのでしょう。
目標がエヴァの接収ならチルドレンを狙う筈、というところまで読み切るミサトさん。対人戦の方がむしろイキイキしてるまであります。この人、指揮官としては有能なんですよね……
チルドレンをエヴァに匿うことにするも、シンジくんは隅っこで蹲るばかり。
ゲンドウ「冬月先生、後を頼みます」
冬月「わかっている。ユイ君によろしくな」
実は、最後の使徒を殲滅した時点でゲンドウの手に必要なカードは揃っています。では、何故こんなギリギリまで「待っていた」のか?
理由としては、「リリスの覚醒待ち」「アダムの定着待ち」「レイの代替わりを不安視していた」等、色々考えられますが、決定打には至りません。ただ、本部占拠が時間の問題となったため、このタイミングで計画を発動するしかなくなった、というのは間違いなくあるでしょう。ゲンドウも多分余裕はない。
エヴァ旧劇場版、ゼーレもゲンドウも見切り発車やプランBを多用するため、筋がわかりづらくなっている部分もあると思います。
ミサト「無理も無いわ。みんな人を殺すことに慣れてないものね」
明らかに「慣れてる」貴方はいったい何者なんですかミサトさん!!!
そして侵攻を遅延させるため、通路全部にベークライトを注入する決断。仮に、動けない生存者が居ても生き埋めです。命を切り捨てることにマジで容赦がない……
それでも、シンジくんは自分で助けに行ってしまうあたりに、ミサトの二面性があります。一面は鎌倉武士、もう一面は家族という偶像を求める少女、そのアンバランスさを「大人のお姉さん」というメッキで包んだ劇物が葛城ミサト、と呼べるのではないでしょうか。
戦況は、第二発令所に押し込まれるくらいに悪化。オペレーター陣も「銃の撃ち方」は知っていても、人を撃った経験は無い。彼等も20代の若者、恐らく新卒でネルフに入って数年くらい。まさか人間相手に戦う羽目になる、とは思っていなかったでしょう。まぁ、それと数歳差で鎌倉武士と化してるミサトさんには一体何があったのか、という疑問も生じますが。
ゲンドウ「やはりここに居たか」
別にレイと待ち合わせしていたとかではなく、現地集合だったことが伺えます。居なかったらどうする気だったんだよ!!
ハンドガンで兵士三人を制圧するミサトさん。小銃に怯みもせず突っ込んでくるこの人、何……? こわ……
そして、シンジくんの前で壁の染みを増やすミサトさん。命を助けるためとはいえ、これ以上シンジくんのトラウマ増やしてどうする気なんですかミサトさん!
ミサト「ここから逃げるのか、エヴァのところに行くのかどっちかにしなさい」
この期に及んで「逃げる」という選択肢を用意するのが、ミサトさんなりの精一杯の優しさ、という感じがありますね……。
ミサト「あんたまだ生きてるんでしょ! だったらしっかり生きて、それから死になさい!」
ミサトの鎌倉武士価値観が炸裂している。でもこれ、ユイの思想にも通じるところがあるんですよね……。よく見ると、同じ話がいろんなところで出てくるエヴァンゲリオン。
冬月「構わん! ここよりもターミナルドグマの分断を優先させろ!」
冬月としては、人命やエヴァよりゲンドウの計画成就を優先させる模様。
戦略自衛隊も攻めあぐねた結果、本部施設の天井をN2兵器で破壊。そこに誘導弾をしこたま撃ち込むことで地上施設を破壊する手に出ます。戦車等を地下に下ろすルートは限られるでしょうし……。
ミサトさんの事情解説。ミサトさんの説明なので、話半分に聞いておきましょう。というか、むしろ、台詞の真偽を確認していきましょう。
1.「使徒ではなくエヴァシリーズでサードインパクトを起こす」→○
ゼーレが言っていました。「エヴァシリーズ」と言っていますが、実際にはエヴァ初号機になります。なので、実は正解かは微妙なライン。
2.「セカンドインパクトは人間に仕組まれたもの」→○
正解。正確には、仕組まれた内容と偶発的事象が混ざっていた感もありますが。
3.「セカンドインパクトは、ほかの使徒が覚醒する前に、アダムを卵まで還元することで被害を最小限に食い止めるためのもの」→△
起こった事象としてはそうなんですが、発端はゼーレが勘違いして、要らんちょっかいをかけたことと思われます。他の使徒が目覚めたのは、アダムに呼応したのか、それとも放っておいてもいずれ目覚める運命だったのかは不明。恐らく前者と思われます。
使徒の覚醒については、そもそもの第三使徒の襲来タイミング的に「エヴァ零号機の起動実験に反応して覚醒した」という解釈もできなくはありませんが、確証には欠けます。
4.「人間も、アダムと同じ存在であるリリスから生まれた18番目の使徒」→?
ミサトさん、ゼーレの存在も死海文書も知らないので、多分この辺はミサトさんのオリ設定なんじゃないかな……カヲルくんの発言と合わせて「第18使徒 リリン」と言われたりもしますが。そもそも、人間は他の使徒とは在り方が違うので……。
ただ、他の使徒が別の人類(生命)の可能性であり、この戦いの意義が生存競争だった、という点については合っていると思います。シャムシエルサンプルを調べた時の「使徒が人間に近い信号を持っている」という話は、ここに掛かってくるわけです。
「別の可能性」のところでレイやカヲルのカットインが入りますが、コイツらは使徒というよりは始祖の方なんだよな……。
総じて、「最終決戦前の真相開示」にあるまじき情報確度。セカンドインパクトの真相については、「実際何があったか」というとり、「ミサトさんがそこに何を見出したか」という、父との関係の決着の話でもあります。以前に言及しましたが、加持さん曰くの、「人間の真実」がミサトさんにとっては「父は人類を救おうとして散った」というストーリーだったのでしょう。
ただ、ミサトの父は兎も角、ゲンドウ(とユイ)が人類を救おうとしていた、という点については真なので、複雑なところ。
しかし、あちこち凹凸ありつつも、「エヴァシリーズを消滅させる」という生存ルートに辿り着くミサトさんは、流石です。まぁ、無限に復活するんですけどそのエヴァシリーズ。
日本政府としては「ネルフは人類全てを消し去る人類補完計画を進めていた」という、合ってるんだか合っていないんだか微妙な情報に踊らされている様子。「自らを憎むことのできる生物は人間くらいのもの」、ゼーレの言う「贖罪」と合わせて解釈してしまうとミスリードが起きてしまうので要注意です。おとなしく「日本政府はこんな感じで踊らされてるんだな」と見ておきましょう。
旧東京、今まであまり出てきませんでしたが(JAの回くらい?)、封地になっている模様。
N2兵器の熱も引き、戦略自衛隊は本格侵攻を開始。そのさ中、「死ぬのはイヤ」と呟くアスカ。その思いにエヴァ弐号機は応え、アスカはエヴァの中の母親の存在に気付きます。
ちなみに、復活シーンで持ち上げているのはネルフの艦艇です。
アスカはプロフェッショナルなので、「人間を殺すなんて……」とか悩んだりしません。バルディエル戦でも、瞬殺さえされなければ良い働きをしたことでしょう……。
しかし、「ATフィールドは母の愛」というのが、アスカにとっての「真実」だった様子。果たして、それが正解なのか。
「アスカは無事」に、微かに反応を示すシンジくん。
ケーブルはATフィールドの防御範囲外なので、攻撃すれば普通に切れる模様。エヴァ、兵器としては弱点が多いです。それでも大暴れする弐号機、もはや「怪獣」とでも呼ぶのが適切な気すらします。
1万2000枚の特殊装甲、どういう枚数カウントなのか地味に気になります。1万2000自体は、ガイナックス作品で割とよく出てくる数字。
そして、エヴァシリーズを投入するゼーレ。
待ってれば電源切れるのでは? とも思いますが、ジオフロントには予備電源くらいあちこちに設置されてるのかもしれません。あと、暴走するかもしれないし。
エヴァ量産型、ダミープラグに「KAWORU」と書いてあるので、渚カヲルベースのダミーの模様。つまり、カヲルくんの予備肉体はある。でも、カヲルくん自身が復活した様子はない。やはりゲンドウの持っていた本体に魂が移動した、と考えるのが自然ではないでしょうか。
ミサトさんは最大でも3機のエヴァで頑張ってやり繰りしてたのに、ゼーレは九機も投入。
アスカ「エヴァシリーズ……完成していたの?」
アスカも存在自体は知っていたようです。
というわけで、「エヴァシリーズ」はエヴァンゲリオンというよりは、この九機を指す呼称の模様。ゼーレも「エヴァ」と「エヴァシリーズ」は区別しているような、していないような。
冬月、ゼーレがネルフ本部でサードインパクトを起こすつもりなことに気付きます。エヴァシリーズは使徒と戦うためではなく、「サードインパクトの儀式用」のエヴァンゲリオン、という意味合いがあるわけですね。S2機関搭載型のため無限に再生する、正に「不滅の肉体」。
一時とはいえこれを圧倒できるアスカ、本調子なら凄まじい技量です。
ミサトさん、シンジくんを庇って負傷。
この期に及んで、自分を否定するシンジくんに、ミサトさんは本音をぶつけます。
シンジ「アスカに酷いことしたんだ」
とのことですが、24話ビデオ版での加持さんの死を告げた件なのか、それとも劇場版冒頭での乱行なのか。
自分に価値がないから、何もしない方がいい。と言うシンジくんに、「自分が傷つくのが嫌なら、何もせずに死になさい」と言うミサトさん。ミサトさん!?
しかし、ミサトさんの本領はここからです。
自分が嫌いだから他人を傷つけることを通して、自分を傷つける。多分「傷つけることで、一番自分が傷つく他人を傷つける」という話でもあり、シンジにとっては冒頭のアスカがそうだった、という話でもあるでしょう。
そして自分が嫌いでも、傷ついても。それは自分が選んだことで、自分で決めて選んだことに価値があると説きます。
他人だから、とシンジが突っぱねれば、他人がどうとかではなく、何もしなかったら、自分がシンジを決して許さないと返す。以前に書きましたが、シンジくんの判断基準、多分「叱ってくれるかどうか」なので、此処で漸く、ミサトはシンジにとっての家族になった、と捉えることもできるでしょう。
ミサト「今の自分が絶対じゃないわ。後で間違いに気づき、後悔する。あたしはその繰り返しだった。ぬか喜びと、自己嫌悪を重ねるだけ。でも、その度に前に進めた気がする」
はい、この台詞。重要です。先程の「自分で選んだことに価値がある」エヴァのテーマそのもの、と言っても過言ではないでしょう。
論旨としては、さっきの「自分で選んだことに価値がある」という話なのですが。前に進めた「気がする」、というのが踏み込んでいます。本当に価値があるのかは、わからない。でも、それを決められるのもまた自分、というお話。
だから、もう一度エヴァに乗って、自分の答えを出して欲しい、シンジと送り出す。そして、それが終わったら帰ってきて欲しい、と、ロザリオを託す。
ミサト「約束よ」
ここまでで済めば、ミサトさん、本当の意味で「大人」で済むんですが……
ミサト「大人のキスよ。帰ってきたら続きをしましょう」
ミサトさん!? とうとうやっちまいましたねミサトさん!? 都条例違反!
確かに、「女」としての部分もミサトさんの一部ではあるのですが、こういうダメ押しするからシンジくんに怖がられるんですよ……。
そして、ミサトさんが最期に口にするのは、アスカに言われた家のカーペット。ペンペン。加持さん。どれも、ミサトの家族になったかもしれないもの。そうであったかもしれないものの話でもあるのでしょう。話に上がらない辺り、父親の呪縛からは「真相」を知ったことで解き放たれた、と言えるのかもしれません。
ここでの注目ポイントは、死の直前、レイの幻影がミサトのところに現れていること。ここ、重要ポイントなので覚えておきましょう。
エレベーターの中で泣きじゃくるシンジくん。それはもう、原液100%のミサトさんの生き様をぶつけられれば、幾ら精神が死に掛かってようと涙を流すくらいの情緒は戻るってものです。シンジの感情は、多分「悲しい」を通り越して、もはやぐちゃぐちゃでしょう。
ミサトさんの言葉がどのくらい響いたか、については次回。
アスカは量産機と戦い続けていますが、エレベーターを降りたシンジくんが目にするのは、ベークライトで固められた初号機。そして、病院のシーンで願った通り、アスカの罵倒を耳にする。
情緒はぐちゃぐちゃだし、アスカは復活してるし、エヴァには物理的に乗れない、ということで立ち尽くすシンジくん。
ゲンドウの前に現れるリツコ。MAGIの自律自爆によってゲンドウと心中を試みますが、カスパーの裏切りによって失敗。娘より男を選んだのか、と相変わらずMAGIを母親に見立てているリツコですが。
MAGI、母の遺産でもありますが、同時にリツコにとっての「自分」ではないかとも思います。
ゲンドウがリツコに口にした言葉は描写されませんが、漫画版では「愛していた」となっています。恐らく、それに類する言葉だったのかなぁ、と。ただ、「ユイを愛しているゲンドウが口にするのはおかしい言葉」でもあるので、映画では描写していないのでしょう。
余談ですが、作中通して、ゲンドウの本来の目的や立ち位置が巧妙に隠されていたり、過去の描写が避けられたりと、ゲンドウのキャラについてはかなり丁寧に扱われている節があります。
最期、自分を見下ろすレイの幻影を目にするリツコ。これだけだと、非常に皮肉な結末なんですが……。ミサトさんの時も出ていたのが気になりますよね。詳しくは次回。
エヴァシリーズを全機撃破するも、ロンギヌスの槍・レプリカが突き刺さり、行動不能になる弐号機。ロンギヌスの槍は独立した生命体なので、自律稼働しても不思議ではありません。しかし、放っておくと多分、使徒のコピーである量産機の方に突っ込んでいってしまうので封印されていた、という感じでしょうか……? そもそも何でゼーレには邪魔なロンギヌスの槍をコピーしてるのさ、とか、何に使うものなのさ、とかは次回。
S2機関の力で復活するエヴァシリーズと、暴走の兆候を示す弐号機。
ここでアスカが右腕と左目にダメージを負ってるのは確認しておきましょう。
あと、なんで量産機がエヴァ食ってるのさ? について。ダミープラグ稼働時の初号機も似たような挙動だったため、エヴァが本能のままに動くとこうなる、とも考えられます。あと、シンジくんの自我にダメージを与えたい、というのもあるのかもしれません。詳しくは次回。
アスカが撃破された今、最後の希望であるシンジに助けるマヤ。しかし、シンジくんは体育座り中。
シンジ「だってエヴァに乗れないんだ。どうしようもないんだ」
しかし、その声に応えるように動き出す初号機。
シンジがそう望んだから。先程のMAGIの話でもありましたが、エヴァを動かしているのが「母親の意志」なのか、「シンジ自身の意志」なのか、というのは押さえておきたいところ。アスカは「母の愛」という解釈でしたが果たして。
そして、本部のピラミッドを吹き飛ばし、遂に起動するエヴァ初号機。
なんで翼生えてんの!? OP回収!?
となるんですが。この状態のエヴァ初号機、セカンドインパクトの時のアダムと同じ状態と言えるでしょう。
恐らくは、レイがオリジナルであるリリスに還ろうとしていること。リリスの覚醒に反応しているのではないでしょうか。
次回取り上げますが、リリスの覚醒が(使徒案以外の)サードインパクトで前提になっている節もありますし。
そして同時に、ゲンドウ達は「初号機が動き出す」のを待っていたようです。
というわけで、漸く初号機の登場ですが、時すでに遅し。鳥葬になった弐号機を目にしたシンジの絶叫が響き、26話へ続きます。
以上。
次回、いよいよエヴァで一番わからんポイント、「サードインパクトについて」の解説です。