いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン⑲第拾七話『四人目の適格者』

 大変お待たせしました。第拾七話、「四人目の適格者」。今回は使徒が出ない回です。その割には、後々のための伏線が盛り沢山。相変わらずエヴァは尺に見合わない詰め込みっぷりを発揮しています。

 冒頭、人類補完委員会によるシンジくん召喚を無視し、メンバーのそれっぽい仄めかしにガンガン突っ込んでくるやりたい放題のミサトさん。委員会やゼーレとの相性は滅茶苦茶悪そうです。おかげで、以後ミサトさんは呼ばれなくなります。無敵か。
 ……一応、シンジくんを庇ったようにも見えますが、現在のミサトさんはエヴァやネルフに対する疑念を抱いています。よって、ネルフの上位組織である委員会に接触しようと考えたのかもしれませんね。
 「使徒が人の心に興味を持ったのか?」というのは地味に重要なテーマなので、覚えておいてください。結論から言うと、多分メチャクチャ興味を持っています。また、「エヴァを取り込もうとした」という点も同様です。この後に出てくる使徒は、唯一の例外を除いて人間・エヴァに対して寄生・干渉するものであることがその証左といえるでしょう。
 最終的にその成果は、人の心を完全に理解した使徒、そしてエヴァを操ることのできる使徒、タブリスとして結実するわけですが。彼曰く、人のATフィールドは心の壁、ということで。ATフィールドを介した接触は即ち心のふれあい、ともいえるのではないでしょうか。
委員「(使徒が)単独行動であることは明らかだ。これまではな」
 しれっと重要事項を漏らしています。
 誤報扱いのイロウルは置いておくとして、イスラフェルとかは「単独」扱いでいいんですかねアレ。
 徐々に表に出てきますが、委員会並びにゼーレも結構泥縄で動いているので、発言がどこまで信用できるのか微妙なラインです。

 ゲンドウ曰く、「使徒が知恵を身に付け始めている」とのことですが、これは「人の心に興味を持っている」と同じ意味でしょう。
 そもそも、生命の実を持つ使徒に対し、人間は「知恵の実」を身に付けているとされています。知恵の実がどういうものかは追々考察するとして、両方の実を持つと神に近い存在になれる、ということらしいので、「使徒が人間を知ることで神に近付いている」という見方もできるでしょう。
 ……そう考えると、自己進化で知能回路を形成するイロウルって滅茶苦茶危なかったんですね……

 始まりは日常から。トウジの妹は入院中。怪我は深刻なようです。
 ケンスケが追っかけてる「みょうこう」は、恐らく、こんごう型イージス艦でしょう。エヴァ放送当時の最新鋭艦ですね。

 みたいなことをやってる間に、アメリカ第二支部、消失。前回チラっと触れたように、エヴァ四号機ごとディラックの海に呑み込まれます。ディラックの海については、前回を参照。「消滅」と言っていることから、対消滅反応による爆発ではなく、純粋に取り込まれた模様。
 余談ですが、ネルフは米国に二つ、ドイツに二つ、中国に一つの支部があることが確認されています。
 本編では出てきませんが、エヴァ4号機は3号機と同形式色違いの機体(アメリカ建造なので型番がアラビア数字)。メディアミックスだと結構いろんなところに出てきて、カヲルくんがディラックの海から引きずり出したりして乗ったりします。ドラ●もんの四次元ポケットか。

 そもそも第二支部で何をやっていたかと言えば、後の量産機のためのS2機関の搭載実験です。この事故により、恐らくはゼーレ側の補完計画に遅れが生じることとなります。
 事故の原因は不明、となっていますが、この事故で誰が得をしているかというと、ゼーレとは別の補完計画を持ち、エヴァの独占が可能になったゲンドウなんですよね……。関与については証拠が足りないところではありますが。
ミサト「よくわからないものを無理して使うからよ」
リツコ(それはエヴァも同じだわ)
 リツコさんもエヴァについては理解しきっていないことが伺えます。アンタが作ったんでしょ! 責任持ちなさいよ!

 結果、3号機は日本へ。なんか「エヴァ本体の起動実験だけで爆発の危険がある」みたいな台詞が出てきますが、この情報がシンジくんたち現場のパイロットに伝えられる様子はありません。まぁ、そもそもミサトさんの誤解だから伝えられても困るんですけどね……。
 起動試験にはダミープラグを使う案もあった模様。正直、ダミープラグを使っていればこの後の悲劇は防げたんですが……。どうでもいいですが、「例のダミー」と「レイのダミー」、音は同じですね。

 ダミープラグ。エヴァンゲリオンの自動操縦システム。子供に操縦させるよりは人道的ですが……
リツコ「ただの機械です」
 説明をするときのリツコさんの顔は一切映っていません。怖い。ダミープラグの原料は赤木家にとって因縁浅からぬレイのクローンボディ。「レイがフェイクの存在である」と言いたいようにも見えますね。
 あと、「人の心、魂のデジタル化はできません」これも重要な台詞なので覚えておいてください。エヴァにおける「魂」って何なの? というのは、なかなか重要なポイント。キーワードは「ガフの部屋」です。

 一方のゲンドウは、魂云々に興味はなく、エヴァのオートパイロットとして使えさえすればいい、というスタンス。あくまで実利優先ですね。わかりやすい。
 初号機と弐号機にデータを入れておけ、とのことですが……リリスベースの初号機はともかく、アダムベースの弐号機でダミープラグが使えるの? というのは、ちょっと疑問の残るところ。事実、弐号機に仕込まれたダミープラグが使用されることはありません。劇場版では量産機がダミープラグで駆動していますが、あれはカヲル君ベースのものです。
 ダミープラグ、実は計画上で重要な位置を占めるようなのですが、魂の話と合わせて詳細はそのうち。

 相変わらず運び屋扱いのUNですが、前回、弐号機が海路で襲撃されたため、今回は空輸にした模様。そのせいで、積乱雲の中にいる使徒に感染するわけですが。これ、放置していた場合どうなってたんでしょうね……。巨大化して本部を襲ってたのかも。

 ダミープラグ、初号機や弐号機にはデータを入れるけど、起動試験に使うには危険、という判断。実戦配備されてるエヴァより起動試験の方にダミープラグ使わない? と思うのですが、多分、初号機や弐号機のダミープラグも、ゲンドウ的には使うつもりはあんまりないのでしょう。
 計画上の重要要素でもあるので、「開発進んでますよ」というアリバイ作りもあるのかもしれませんね。

 エヴァのパイロット、チルドレンについて。何故かわからないけどエヴァは思春期(セカンドインパクト後の生まれ)の少年少女には動かせない、おまけに母親の魂(の一部)をコアにインストールする必要がある、ということで、パイロットの素養がある子供は限られる。なので、シンジくんのクラスに纏まって保護されています。よって、前にも言いましたがクラスみんな母親がいません。
 なので、「コアの準備」については……何をやってるのかよくわかりませんが、多分ろくでもないことなんでしょう。ゲンドウ的には初号機以外のエヴァはどうでもいいので、人選も興味ナッシング。
 「上がっていいぞ」と言われたレイ、自然な笑顔を見せています。外では無表情キャラなのに……そしてそんなレイを見つめる赤木博士。怖い。

 アスカのお弁当はシンジくんが作っている模様。ただ、三人分のお弁当を用意するスーパー中学生、シンジくんにも限界はある様子。
 「夫婦喧嘩」と言われる程、アスカとの喧嘩も日常茶飯事。レリエルの件でガタつきはありましたが、人間関係はまだまだ大丈夫な模様。シンジくんは相変わらず、アスカ相手だと喧嘩できるんですよね……。我々はそういうところにLASを感じてしまう……。

ミサト「フォースチルドレンが見つかったの?」
 ということで、この時点のミサトさん、チルドレンの選定プロセスについては何も知らないことが伺えます。
ミサト「赤木博士、『また』私に隠し事してない?」
 前の隠し事(多分バレた)が気になります。心当たりが多すぎる。
リツコ「仕方ないわよ、候補者を集めて保護してあるのだから」
 この台詞、ちょっと覚えておいてください。
 あとミサトさん、「アスカはエヴァに乗ることにプライドかけてるからいい」と言ってますけど、ポッと出のパイロットでそのプライドに罅が入るところまでは考えてない様子。シンジくんとの関係は保護者兼上司だけど、アスカに対しては良くも悪くもプロフェッショナル同士、という感覚が透けて見えます。
ミサト「(シンジくんに)これ以上辛い思いは、させたくないわ」
 それを!! 貴方が!? 言うんですか???
 ミサトさんは、きれいごと云々の前に、無責任な言動を改めて人の心を慮って欲しい。この、ミサトのどっちつかずのスタンスのせいでシンジくんは余計に苦しんでる感があります。まぁ、エヴァってそういうアニメなんですが。

 トウジはレイにプリントを届ける係。プリントの一枚目、避難訓練に纏わるもののようですが、エヴァパイロットに避難訓練、いらないよな……。委員長はトウジのことが好きですが、なかなか上手く行かない。シンジくんが代わりに同行。

 特に躊躇なくレイの部屋に足を踏み入れるシンジくん。「プリントを郵便受けに入れても見ない」等知っていることから、既にレイの部屋に何回も来ていることが伺えます。何してたんですかね……。
 掃除する暇がないらしく、汚部屋化している。このところ、セントラルドグマで謎容器に入る仕事(?)が忙しいみたいなので、無理ないでしょう。それをシンジくん、勝手に片づけ始める。やっぱり、シンジくんは本編に出てないところで部屋に来てるっぽいですよね……。前回勝手に私物に触った結果、どうなったか覚えてます?

 トウジと笑顔で話すシンジくん。親しくなると、結構キツいことも言うタイプな模様。確かに、好意を向けられた瞬間バグってた序盤の頃とはずいぶん変わりました。
 トウジ曰く、「人のために何かできるのは余裕があるから」ということで、初期のシンジくんには余裕が無かった、という分析。的確です。
 こういう風にシンジくんを客観視できる同年代キャラは大変貴重です。しかも、このままだとエヴァパイロットという同僚にもなるわけで……そんなトウジが居たら、シンジくんもきっと真っ当な道に進んでくれることでしょう。居れば……ね……。

 裸を見られても動じないレイも、シンジくんが勝手に部屋を片付けると赤面する模様。羞恥の基準が相変わらず独特。
レイ「あ……ありがと」
 この台詞、重要なので覚えておきましょう。

トウジ「エヴァのパイロットって変りもんばっかりやな」
 エヴァのお約束、「他者への言及は自己言及」……というか、これは単なるブーメランですかね。インガオホー。
 この台詞に対するシンジくんの反応は描かれませんが、「トウジも結構変わってると思うよ。ジャージで関西弁だし」くらいは言ってそうな気がします(勝手な想像)。

 レイはゲンドウに感謝を口にしたことがなかった。色々な解釈ができますが、レイが自分の扱いを当然だと思っていたのか、ゲンドウのすることは、レイのためではなくゲンドウ自身のためであることを見透かしているのか。前の「贔屓なんてされてない」という自己評価(11話)と合わせて考えると気になるところです。

 冬月とゲンドウの問答。テーマは「街」についてですが、それを通した自己言及にも見えます。ゲンドウは敵だらけですし。こういうやりとりが、ゲンドウの心情を推し量る材料になります。キーポイントは、本人に「弱い」「臆病者」という自覚があるところでしょうか。
ゲンドウ「敵だらけの外界から逃げ込んでいる臆病者の街さ」
冬月「(前略)それもよかろう」
 冬月、ゲンドウを甘やかすなし
 第三新東京市、ようやく完成しますが、次の次の使徒には素通り同然でジオフロントまで突破を許し、零号機の自爆によって壊滅します。いいところがまるでない……!

 大方の予想通り、ゲンドウにとっては四号機はどうでもいい。S2機関は将来的に必要かもだけど必ずしも現物は要らない様子。
 「死海文書に無い事件」ということですが、いま新⑯で触れた通り、死海文書はアダム・カドモンに至るマニュアルみたいなものなので、「マニュアル通りやっても失敗することもある」くらいのニュアンスでしょう。ゲンドウの野望は死海文書とはあまり関係ないことも伺えますね。

 マヤに迫る加持さん。マヤの側もまんざらでもないのか適当にあしらってる感じなので、以前の「潔癖症」については、リツコの自己言及の側面が強い感もあります。
 いいところでミサト、襲来。形振り構わず加持さんにアダムとマルドゥック機関について尋ねます。チルドレン選出はネルフ(ゲンドウ)の意志、シンジくんの学校を調べろ、ということなのですが。
 リツコさん、既に「候補者を集めて保護しているんだから」とそれらしきことを漏らしてるんですよね……。ミサトさんが本気で秘密に迫るなら、リツコさんに吐かせるのが一番早いと思います。多分消されるけど。

 加持さんの方は、マヤ、ミサト、シンジくんと三人斬り。シンジくんも、険しい顔しながらも結局加持さんにホイホイついていってしまうので、なんというか、もう凄いよアンタ……!
 「安心している相手だと遠慮がない」とシンジくんを評する加持さん。彼もまた、シンジくんを客観視できる(アンドそれをシンジくんが聞いてくれる)大人の一人です。トウジもそうだけど、このアニメだと、それって要するに退場フラグなんですが……。

 加持さんはスイカに異常な執着を持っています。テレビ版だと「なんで?」という辺りがわかりづらいんですが、新劇場版だと「セカンドインパクト前の世界」に対する執着、という感じで補強がされています。そうじゃないとミサトさんがスイカに負けたことになるし……。

 「辛いことから逃げたい」という意識が強いシンジくんですが、「楽しいこと見つけたかい?」という問いには答えられません。この時点で、「父さんから褒められること」は、シンジくんにとって「楽しいこと」ではなくなりつつある模様。覚えておきましょう。
 それを聞いた加持さんは、シンジくんのスタンスを否定することなく、「辛い経験」の価値を肯定します。ただ、こんないい話が、ミサトさんのコールで遮られるあたりも示唆的。あと、加持さんにキャッチが入ったあたり、シンジくんの場所は筒抜けな模様。

 シンジくんのシンクロ率は降下気味。「先の事件」はレリエルの件でしょうか。自分の内面と対話した結果が、先程の加持さんとのやり取りにも表れていますね。
 そして、ここでフォースチルドレンの件を「話づらい」で流したのが、後々効いてきます。ミサトさん、言い辛いこと言うのも仕事では……。

 リツコさんは、少なくともトウジに告知する仕事を全うしている模様。
 ケンスケの情報源は謎。「エヴァに乗りたい」という欲求は肥大化しているようですが。本当にシンジが何も知らないと見ると、慰めモードになるあたりは人の心があります。

 一方、実際に「エヴァに乗れ」と言われて、真顔のまま炎をながめるトウジ。ケンスケとトウジは対照的な扱いが多い気がします。

 週番で遅くまで残ったトウジを、わざわざ待っている委員長。それでもなかなか素直になれず、お弁当を話のきっかけに。委員長の姉妹は、後にシンカリオンコラボで登場します。
 トウジの方は、それどころじゃない様子ですが。委員長はお弁当を作ってくる約束を取り付けます。

 めっちゃ気合を入れてぶりっ子フォームのアスカ。加持さんとの絡みも減りましたね……。ちなみに、今回のアスカの出番はここと痴話げんかのシーンだけです。
 アスカはフォースチルドレンの正体を知ってしまい、自分の聖域でもあるエヴァに更に余所者が乗るようになることが許せない、というあたりでしょうか。混乱します。

 ラスト、次回予告にもあったトウジがバスケットボールをゴールにシュートするシーンで幕。

 今回、全体としては崩壊の序曲、という感じでした。次回予告も「最後の日常を謳歌していた」と不穏な感じ。ここからが、或る意味エヴァンゲリオンの本番、真骨頂と言えるでしょう。

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