いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン⑫第拾話『マグマダイバー』

 第拾話、「マグマダイバー」……の前に、大事な情報。後の16話で明らかになりますが、シンジくんは泳げません。これを知っているか否かで、今回の話のイメージはちょっと変わると思います。
 泳げないんですが、アスカと出会ってからは、8話では水中戦、9話では初号機ごと頭から水没と、どうも水モノトラブル続き。細かいところでもシンジくんいじめに余念がないアニメです。今回はマグマにグレードアップ。
 とはいえ、本人もアスカと関わっているうちは、それどころではない様子。

 ということで、本編です。
 水着を買いに行くアスカに、振り回される加持さん。流石に水着コーナーは事案スレスレで顔が引きつっています。
 ツイスター以外にスクーバも趣味の加持さん。中学生の頃は2000~2001年あたり。後に冬月の回想で「21世紀最初の年は、地獄しかなかった。他に語る言葉を持たない年だ」と言われているので、修学旅行に行く余裕など微塵もなかったのでしょう。

 とはいえ、今の人類がここまで復興しているのは喜ばしいことですが、エヴァのパイロットが修学旅行に行ける筈もなく待機。使徒は第三新東京市を目指してきますからね。前々回は例外。
 アスカは荷造りも準備万端。ドイツの学校に修学旅行があるかは定かではありませんが、アスカは飛び級しているため同年代の友達と旅行に行く経験自体が無いのかもしれません。少なくとも、エヴァパイロットの使命を一時とはいえ忘れてしまうくらいに、アスカにとっては修学旅行は楽しみだった模様。そして、アスカが水着を買って荷造りまで済ませたところで行けないことを告げるミサトさんに人の心はあるのか。
 シンジくんは悟っています。飼いならされた、というか、ここまでに酷い目に遭い過ぎて達観したというか……。
 細かい点ですが、ミサトさんのビールがエビスからBOAに変わっています。アニメ「空飛ぶ幽霊船」のボアジュースが元ネタだそうですが、輸入モノなんですかね……?

 アスカとシンジ、成績はあんまりよくない模様。そりゃ、そもそも入院だの訓練で欠席だのしてれば、そもそも授業に出られませんからね……。なお、アスカについては別途原因があるんですが。

 発令所。「バルタザール」「メルキオール」はそれぞれMAGIを構成するコンピュータです。
 オペレーター陣の暇の潰し方。小説に涙するマヤ、漫画を読む日向。音楽雑誌を見ながらエアギターする青葉。なお、青葉については、「エヴァンゲリオン2」にてバンドデビューとネルフ入社を天秤にかけた過去があることが判明します。

 ネルフ本部内のプールで泳ぐアスカとレイ。プールサイドで勉強するシンジ。シンジくんはカナヅチなので……。レイはずっとプールを泳いでます。
 シンジの視線はアスカの胸にくぎ付け。アスカの成績については、漢字を覚えてなかったから、ということらしいです。
 熱膨張の話。熱膨張というのは物体を加熱することで分子のエネルギーが増加し、平均原子間距離が開くことで物質が膨張する、というお話。そして、何故固体においてエネルギーが熱膨張に至るかというと、原子の振動において非調和振動成分が大きくなるからと言われているんですが……何が言いたいかというと、「別に幼稚じゃないやい」ってことです(張り合うな)。

 それはそうと、レイの水着には興味津々のシンジくん。一方、アスカの方には言われて視線を向ける。

 長野県・浅間山に使徒の影。厄介なことにここ、第三新東京市以上に、現在の日本の首都である第二東京(松本)が近いんですよね……(50kmくらい)。
 ミサトさんは相変わらず、他所の機材を使って壊してます。マグマに潜れる潜航艇って凄いですね。マグマの粘度は温度によって変わりますし。今回は使徒の影響もあってかサラサラの模様。
 ミサトさんはA-17の発令を決意。ネルフに纏わる特例措置は(アルファベット)-(数字)というコードで纏められており、後に発令されるD-17やA-801などがある様子。具体的な内容は不明ですが、資産凍結命令を含むことから第三新東京市以外に出現した使徒にまつわる試料保全や機密保持が目的の命令ではないかと推測されます。今回は第二東京が近いですし、お金の動きから情報が洩れれば大パニックを生みかねません。

 ゲンドウは生きた使徒のサンプルが大事、ということですが、前々回で生きたアダムのサンプルをガメてた人間が言うと説得力が違いますね。
冬月「失敗か。その時は人類そのものが消えてしまうよ。本当にいいんだな」
 微笑むゲンドウ。なんですが……これ、実はあんまり危険性がよくわからないんですよね。捕獲に失敗しても、別にアダムやリリスに接触されるわけではなし。
 恐らく、「現段階で公開されているセカンドインパクトの情報」……つまり「使徒調査中の爆発」というカバーストーリーに合わせた発言と思われます。そりゃ笑いたくなる。茶番ですから。

 使徒、サンダルフォンは胎児のような造型。前々回のアダムとの関連性がしれっと匂わされています。羽化しないうちに人類に見つかってしまいました。
 作戦担当者はアスカ。シンジくんは「また僕なんだろうな」と悟っていましたが。
 レイは本部待機。アスカをしれっと無視します。
 耐熱仕様のプラグスーツといい、D型装備といい、ギャグテイスト。初号機だとツノがはみ出そう。D型装備は耐圧、ということで、水中装備も兼用の可能性があります。嫌がるアスカ。まぁ、エヴァの運動性能と白兵戦に重きを置くアスカの戦闘スタイルとは滅茶苦茶乖離してますし……。
シンジ「あの、僕が」
 この時期のシンジくんは積極的です。レイを庇って初号機に乗ったのと同じような感じなのでしょうが。
レイ「私が弐号機で出るわ」
 それを遮り、レイが出撃を希望。意外とわかりやすい反応ですよね……。「貴方は死なないわ、私が護るもの」がまだ継続中、ということでしょうか。そして、アスカはレイに弐号機に触って欲しくないので出撃することに、というピタゴラスイッチ。チルドレンの関係性が詰まっています。
 ちなみに、シンジは触るのを許すどころか一緒に乗ったあたり、こっちもわかりやすいと言うべきでしょうか。

 加持さんは本部待機……と見せかけて、近所のロープウェイに。話している女性は資産凍結命令の発令に異議を唱えていることから、日本政府の関係者でしょうか? 次回のアルバイトの打ち合わせも兼ねているのかもしれません。

 ネルフの失敗に備え、UNの空軍がN2爆雷で使徒を熱処理するため待機中。正直、N2兵器の使徒への有効性はちょっと疑問な上、今回は目標は山の下、ということで、示威以上の意味合いは薄い気もしますが。
シンジ「そんな命令、誰が出すんですか?」
リツコ「碇司令よ」
 ここで「碇司令なら大丈夫よね!」と全くならないのが人徳の無さである。前々回でも謀殺疑惑がありましたし。でも、今回は大事な大事な初号機が居るので、投下命令を出す気は……でも、ヒゲグラサンだからな……わからない……。

 レーザーを打ち込んで進路を確保し、弐号機を投下。ジャイアントストロークエントリーですが、多分ジャイアントストライドエントリーの間違いか、アスカのオリジナル技と思われます。まだアスカに余裕がある時期。

 マグマの中なので透明度は最低。エヴァにはCTを始めとする多種多様なセンサーがついています。そして、またも限界深度を無視してエヴァを降下されるミサト。
ミサト「近くにいい温泉があるわ、終わったら行きましょ。もう少しがんばって」
 こんなこと言った後に、人命軽視の命令を出せるのが、ミサトさんの怖いところです。そして、それに賛同するアスカ。
 エヴァに乗って活躍することに命を懸けているアスカと、如何なる犠牲を払っても使徒を倒したいミサトの相性は抜群です。アスカに戦力的価値がある限りにおいて、ですが。これが綺麗に噛み合った世界線が、後の新劇場版、エヴァQで見られます。

 目標を電磁柵で捕獲。この装備、「使徒キャッチャー」と言いますが、釣り竿型のバリエーションがエヴァのゲーム「鋼鉄のガールフレンド」に登場しています。余談でした。

 作戦は一応成功。
ミサト「下手に手を出せば、あの二の舞ですものね」
 この台詞で、ミサトさんはセカンドインパクトの真相について何一つ知らないことがわかります。一方、リツコは何か知っている様子。慎重に自分の見解への言及を避けていますが。
 浮上に転じた途端、使徒が羽化。使徒殲滅に作戦が切り替わった途端、イキイキしはじめるミサトさん。
 ナイフがないことに気付くアスカ。この辺のアスカは凡ミスが目立ちます。まぁ、極限環境だからしゃーない。
 そして、初号機のプログナイフを投擲。どうやら形状は違っても、エヴァ同士で互換性はある模様。
 高温高圧下で口を開く使徒。ガギエルも似たようなことしてましたが、ATフィールドの影響もあるのでしょうか。なお、使徒は「生命の実」……永久的な動力源を持つ生命体であるため、本来「口」は生きるためには不要な機能のはずなのですが。もしかすると、相手を捕食・融合するための器官なのかもしれません。

シンジ「そうだ」
アスカ「さっきのやつ!」
 ということで、冷却液を使徒に流し込み、序盤に出てきた熱膨張を利用して倒します。なんてロボットアニメらしい展開なんだ……!
 内側から冷却液で加圧すると同時に、外からプログナイフで亀裂を入れることで破壊を促すわけですね。亀裂を入れることで応力集中が起き、亀裂が進展して……まぁ、この話はいいか。

 やはりサンダルフォンは体をATフィールドで防護していたらしく、死亡と同時に体は熱で溶けながらバラバラになります。が、「ただでは死なん!」とばかりに、弐号機の命綱を引きちぎっていきます。
 そして、アスカを助けるため、マグマの中に身を投じるシンジくん。何度も繰り返しますが、シンジくんは泳げません
アスカ「馬鹿、無理しちゃって」
 あとでちゃんとお礼とか言った方がいいと思いますよ。

 そして、風呂。宅配便で送られてくるペンペン。温泉ペンギンの温泉要素が遂に回収されます。送り主は加持さんということで、先に戻ったのか、アリバイ作りのために詰めて送る手配をしたのか。
シンジ「風呂がこんなに気持ちいいなんて、知らなかったな」
 とのことですが。第2話(いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン④)だと、「でも、風呂って嫌なこと思い出す方が多いよな」だそうです。
 女湯の戯れを聞いて、照れて膨張するシンジくん。ノーコメント。まぁ、この辺だと完全にアスカを意識している、というお話。

 最後にミサトとアスカの事情が仄めかされますが、二人の過去についてはそのうち。ミサトさんについてはちょっと前に触れたけど、「ちょっち」では全くないです。

 今回の総評としては、泳げないシンジくんがアスカを助けるためにマグマに飛び込み、風呂を初めて気持ちいいと感じる、という、あまりにもいい話でした。
 今後もこんな調子で続いてくれればいいんですが、なかなかそうはいきません。ということで、次回はジブリ時空。使徒界の恥さらしが出てきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?