琥珀色の街、上海蟹の朝


町であまり流れない曲を勧めてしまったことをとても後悔している。

君は、5年間自分から人を好きになったことのない僕が、本気で好きになった、この人の笑顔のためならなんでもできる、そう思った人だった。

だけど、君からすれば僕は大多数の中の一人で、印象に残るわけでもない、ただの男なんだろう。

今までも、そしてこれからも。


なんで有名な曲を好きな曲だと偽って勧めなかったんだろう。

なんでもあっただろ。

街中で僕の勧めた曲が流れれば、その瞬間に僕を思い出してくれたかもしれないのに。


そんな淡い期待はまるで上海蟹の泡のように消えた。

小籠包じゃ足りない。上海蟹じゃなきゃ。


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