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我的不忘台灣旅/0702ほの花


地元から出て、県の境をまたいで広い世界を知りたいと思ったのが18歳の時。それから、国の境を越えてみたいと素直におのずから思うまでに、10年近くかかった。
そう、私、根はものすごく保守的な人間なのである。

筆を持って海外を旅するんだ!と、大口を叩いておきながら、これまで海外に行ったことは片手で数えられるほどしかない。しかも人に誘われて、がほとんど。
そんな私が唯一、一人で国境を越えた旅がある。5年前、台湾へ。

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唯一のインターナショナルな友人

大学時代、文系だったので留学に行く同級生も近くにたくさんいたが、どうも自分の保守性が手伝ってか、海外への憧れがあまりなかった。だから、そんなコミュニティとも無縁で、海外からの留学生の友達もほとんどいなかった。
しかしたった一人だけ、インターナショナルな友人が私にできた。台湾からの留学生の彼女。私の所属していたサークルに彼女がやってきて、自然と仲良くなった。
彼女がふるさとへ帰った後も、気まぐれな手紙のやり取りを続けており、いつか台湾に遊びにおいでよ!と言ってくれていた。それこそ海外慣れしていない私は、行ってみたいなあ〜とは思いつつ、一人で国境を越える不安を言い訳にちょっと躊躇していた。しかし、大学も卒業が迫り、こんなに時間を持て余している人生もしばらくはそうないじゃないか、現地に日本語が分かるガイドがいてくれるなんてそんなに恵まれた旅はないぞ、今行かなくていつ行くんだ!と自分にハッパをかけ、peachの往復航空券を予約した。

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私は「旅行」じゃなくて、「旅」をした

「旅行」と「旅」の違いは何か、辞書的な意味の違いはあるだろうが、私の中では、与えられたものを楽しむのが「旅行」で、そこにある人・モノ・ことに突撃しに行くのが「旅」なのではないかと、漠然と定義している。つまりは、受動的か、能動的か。
この台湾滞在が間違いなく「旅」だったと言えるゆえんは、彼女の存在だった。そこに住む人の声を、リアルに聴けること。それまで自分が“常識”だと思っていたことと異なる景色に気づいて、湧いてきた疑問を投げかけると、すぐに応対してくれる彼女。言葉のこと、歴史のこと、街のこと。淀みなく、スラスラと。

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歴史を知ること、ルーツを知ること

その中でも印象に残っているのは、台湾の歴史のことだった。 私が訪れた日、2月28日が和平紀念日という台湾の祝日で、なぜこの日がそう制定されているかというと、二・二八事件が起こったことに起因しており、第2次大戦後の台湾と中国の争いと台湾国内の混乱によって(かなり簡略化したが)多くの市民が犠牲になった日であり…ということを彼女はわかりやすく私に解説してくれた。 また別の時に、そういえば日本はかつて台湾を統治下に置いていたのになあと思い(日本の歴史の教科書的解釈レベルで)、「なんで台湾の人は親日なの?」という疑問を投げかけると、それにもすらすらと答えてくれた。
そんな話を聞きながら、自分の国の過去を知ることは、大げさかもしれないけれど、自分のルーツを知ること、今の平和がある理由を知ることに繋がるんだと、意識的に初めて感じることができた。…でも、もし自分が、外国の人に自分の国の歴史のことを説明するとなったときに、私はちゃんと話せる自信がなかった。 それまでの私にとって、「歴史」はテストの解答欄を穴埋めするためのものに過ぎず、自分とはどこか違う世界の話だと、勝手に思い込んでいた。だけどそうではなかった。この、紛れもない「今」をさかのぼった時間と、ひとつながりで繋がっている“あの時”の事実を知ること、解釈を考えること、多方向から見つめること。さほど自分と年齢も変わらない彼女は、それが自然とできている。その間に圧倒的な差を感じずにいられなかった。

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「放浪兄弟」

中国語は紛れもなく、全て漢字表記である。なんとも、繊細だと思った。日本語は、外来語をそのままカタカナで表現してしまうけど、中国語は意味(もしくは音)を漢字に当てて表現しないといけない。ときめきを運ぶよ「EXILE」が「放浪兄弟」だったのには驚いたけど。 でも、全てを漢字で書くと、日本人からしたらやっぱり、ちょっとかたいな~って思ってしまう。いくら優しい丸みのあるフォントで書いても、なんか、いかつい。日本語表記の、かなの丸み、カナのまっすぐさ、その真ん中をいく漢字。それらが融合されているのがやっぱり好きだなあと思う。これはもう、遺伝子レベルなのかも。

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你還差得遠呢!

そういえば、今回のテーマは「忘れられない旅」だった。上記のエピソードも十分印象深いのだが、いまだに私の衝撃的旅エピソードランキングで堂々の1位に輝き続けている話が、この台湾旅の中にある。
私はなぜか、台湾で「テニミュ」(※)を観劇したのだ。日本ですら、観たことがなかったのに。

※「テニミュ」とは・・・週刊ジャンプで連載されていた漫画「テニスの王子様」(通称「テニプリ」)のミュージカル。テニスコートに模したステージで、俳優さんたちがラケットを振り回して歌ったり踊ったりする。(元々日本で上演されており、日本版では城田優さんや斎藤工さん、瀬戸康史さんあたりも、実はテニミュ俳優だったりする)

なぜテニミュを観ることになったかというと、同行してくれていた彼女は私が滞在する日のうち1日すでに先約があり、それが台北へテニミュを友人と観に行くというものだった。その日のその時間は、私と彼女は別行動、という予定になっていた。
1日目の彼女の観劇後、合流。ものすごく楽しかったそうで、興奮していた様子が伝わってきた。…ん、話を聞くとどうやら翌日も別の友人と観に行くらしい。そうかそうか、楽しんでおいで…と思ったら、「ほの花もぜひ観た方がいいよ!!!」と猛プッシュを受けた。テニプリ、実は小学校高学年の時にアニメと漫画にどハマりしていたことがあるので、ストーリーはおおむね分かる。だけど、台湾まで来てテニプリ…だと…?!?!いや、これはめっちゃ面白いんじゃないか(ネタ的にも)…という若干の下心もあり、「全家」(台湾のFamily Mart)のチケット売り場でチケットを購入した。ちなみに、彼女とその友人らはすでに座席をおさえていたので、私は同じ会場で、しかしひとりで観劇である。ちょっと切なくて寂しくて心細い。
翌日、開演。席にいても一人、だ。唯一救いだったのは、俳優さんたちのセリフが日本語だったということ。これで言葉が理解できなかったら、、、辛かったなあと思ったので、内心ホッとした。では、台湾ガールズたちはどうやってセリフを認識するかというと、ステージの両サイドに設置されてある電光掲示板に表示されている中国語訳を追うのだ。字幕付きミュージカル、なんとも忙しい。
…だからと言って、ここは台湾。せっかく台湾で公演しているのだから、現地のファンへのサービスというものが必要だ。それが、各キャラクターの決めゼリフのみ中国語訳して言い放つ、という最大限のサービスだった。

ストーリー的にも一番盛り上がる決めゼリフのシーンで

「你還差得遠呢!」

台湾ガールズたち、歓喜!!!!!!!

一方の私、さっぱり分からない。。。。。。


そうして、ストーリーの一番大事な部分をおさえられないまま、公演は終了した。一生忘れない。
国境を越えて、女子たちを熱狂させられるストーリーとキャラクターを描く許斐剛氏(原作者)には、尊敬のまなざしである。

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おわりに

実はこの文章の大部分は、5年前に実際に台湾を旅をして、あまりに多くの刺激を受けて帰ってきてから、それらの新鮮な気持ちを忘れないようにと自分のfacebookページに投稿していたものがベースになっています。今回、加筆修正して仕上げました。
読み返していると、今の自分にも刺さる部分があって、全く進歩できていない自分が恥ずかしくも思えました。特に、自国の歴史を知る、という部分。
今、自然と海外に出てみたいなあと思えていることは自分にとって非常に喜ばしい変化なのですが、同時に、自国について語れないのはまずいなあと、5年前の自分に説教されている気分でもあります…。

書き残しておけば、時間が経っても、こうして記憶を呼び覚ますことができる。人生を重ねて変化した自分にとって、また別の角度から言葉を取り入れることができる。
書くことって、想像以上に、面白くて、強いことかもしれないなあと、そのエネルギーの大きさをじわりじわりと感じる7月の湿った夜です。

※ちなみに私は中国語が全くできません。タイトルの「我的台灣旅不忘」、ただの雰囲気です。。。謝謝。

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最近の“日々をかく”

①「空想雑貨店」で販売したものの一部を、Twitter上でも販売してみました!

他クラスでも興味を持ってくださる方がいらっしゃって、嬉しかった。今週末に発送します!

一旦閉店しましたが、また風のように現れると思うので、ぜひ捕まえてください。それと同時に、もうちょっとシステマチックな形も模索していきたい。

「おなまえじかん」お申し込みいただいた方、遅くなってすみません!今週末から動き出しますのでしばしお待ちを。。。

②7月、始まりましたね。

7月って1年の中で最もいろんな表情を持つ月だと思うのです。湿っぽくてどんよりした梅雨で始まったかと思ったら、ジリジリと刺す暑さともくもくの雲の空で終わっていく。多重人格な月だなあと。そんなことを頭の片隅に置きながら、書いておりました。

2020年も折り返し!早い、早すぎる!!!6月はバタバタしていたので、一回ここらで自分の活動のあれこれをきちんと言語化する時間を取りたいなあと思っています。前に進むことも大事だけど、立ち止まって振り返ることもちゃんとしていきたいところです。

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