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あまくて、にがい/0802 ほの花

一人暮らしを始めてから、お盆と正月は実家に帰ることだけは欠かさずにここまできたが、今年はそれもはばかられ、初めて帰省しないお盆休みを過ごしている。

快適な部屋ででかい体をゴロゴロさせていても、美味しいご飯を無条件に出してもらえ、洗濯物が綺麗に畳まれて返ってくる。実家は天国だ。だけど一人暮らしもラクでいい。たまに、帰るのがちょうどいい、などと甘ったれたことを言い続けて早幾年。

つまり、今年のお盆は、誰も甘やかしてくれないお盆なのである。
それじゃあ、自分で自分を甘やかすしかない。
好きなことを、好きなだけするのだ。

そうして自分を甘やかすためにまず向かったのは、ご近所のコーヒーロースター。
そこに私の“夏の風物詩”がある。

それは、このお店特製の夏季限定メニュー「コーヒーゼリー」だ。
これを食べなければ、夏は終われない。終わらせないぜ。

家からすぐの場所にあるはずなのに、このお店は近いようで、遠い。

もともと手狭なお店であるのも、ある。
加えて、昔はイートインの座席が割と多かったが、コーヒーロースターの一面が店内にビシビシ現れ始め、いろんな産地の豆の陳列スペースが勢力を拡大し、ついにはカウンター6席のみになった。
…の割に、ローカル誌では必ずといっていいほどお店紹介で取り上げられる人気店で、大行列とはならないが、いつも誰かしら待ちが店の外にあふれている状態なのだ。休日は特に。
「近いからまた今度…」と思っていると、あっという間に時が流れる。

しかし、夏だけはそういうわけにはいかない。
この街に住み始めて丸5年。数えてみると、3/5(夏)でこのコーヒーゼリーを求めにいっていた(私のiPhoneのカメラロール調べ)。
なんだか、無性に食べたくなるのだ。

↓2017年のコーヒーゼリー

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↓2019年のコーヒーゼリー

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↓2020年のコーヒーゼリー

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毎年、アングルが異なるのも、また一興。

食べ始め…ふんわりと、けど甘すぎない生クリームと、バニラアイスのひんやり冷たい食感が優しく迎えてくれる。うず高く積み上げられたそれらを器からこぼさないように、注意深くいただく。外堀からすくって、器とアイスの間に溝を作るのがポイント。(生クリームとバニラアイスだけでも十分美味しい)
食べ進めると、白いそれらと混ざり合った、柔らかくてぷるんとした、漆黒の宝石に出会う。しかし見た目の通り、クールで、ビターなお味(無糖)。
中間地点で、クリームやアイスと、コーヒーゼリーが絶妙なハーモニーを奏でる。程よい甘さと苦さ。うん、ここが一番美味しい。今の私には。
そうしてしばらく宝石採掘を進めていくと、コーヒーゼリーのみが最後に残る。正直言って、私にはまだ、ほろ苦い。けど、つるんと入ってくる食感に委ねて、私の夏のひとつをクロージングする。


夏、ごちそうさまでした。


自分を甘やかすんだと言いながら、甘すぎない、むしろほろ苦いとわかっている味を選ぶあたりが、なんだか私らしいな、と自分でクスッと笑ってしまった。
甘いだけじゃ、すぐ飽きるのだ。
いくつになっても、ほろ苦さも楽しめる人生でありたいと願う夏。
来年はどんな味がするだろう?

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最近のこと

初めて、「ライブ書道」にトライしました!
本人も想像していなかった反響でドキドキ…!
またどこかでやれたらいいな〜!

日々を、かく 書家 ほの花 @honoka_shoka

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