アン・ハサウェイ夢小説

映画が好きだ。映画。

園子温も中島哲也も堤幸彦も伊丹十三も荻上直子もシュヴァンクマイエルもタランティーノもスコセッシもフェリーニもみんな好き。好きなものを挙げるならケイゾクビューティフルドリーマーと地獄でなぜ悪いと渇き。とスーパーの女とルナシーとトゥルーロマンスとアリスの恋と魂のジュリエッタだ。全部衛星放送のかったるい番組で見た。アン・ハサウェイのプリティプリンセスもいいな。メチャメチャド深夜でボーッとしながら見た。アン・ハサウェイかわいい。お付き合いしたい(レズ)おつきあいした(レズ)晴れて私はアン・ハサウェイとおつきあいすることになった。(レズ)


好きな人、いるの?とアンがぼんやりとスタバでラザニアをつついてつまみながらお話ししている。私はほうれん草とベーコンのキッシュとバターミルクのビスケットとカモミールのラテ。真っ白なミルク色のトレイに並べて、「美味しそう」ってちらっと私をみてる。ぱしぱしのゆっくりまたたくまつげと目があった。深い色のリップが小首をかしげて肩をつつく。は、はんぶんこしようかって言ったらそうしたい!とはしゃぐので、そうなった。ホイップのあっさりとしたビスケットはふたりのものだ。

今おつきあいしてるひといるの?ってアンが訊いた。私は、好きな人はいたけど、一昨年失恋したから付き合っているひとはいないとなんとか打ち明けた。好きな人は女性の人だったから、言ってもいいのかもわからない。気持ち悪いかなと考えてから女の人が好きだと告白したら、そうなんだと答えた。あっさり。たぶん、お兄さんがゲイなものだから「"そういうもの"を認めない訓えには属することはできない」とはねのけて家族ぐるみで宗教を辞めたことに寄るだろう。アンはカトリックだ。気持ち悪くない?と訊いたら気持ち悪くないわと優しくゆっくり首を振った。すごい。もっと好きになってしまった。
だからたくさんの好きなものの話をした。好きな服の話やブルーグレーのシルクタフタのパーカーが家にあって、もうはけない黒いスニーカーがあってお気に入りだと話して、アンは優しく笑った。夏だから良い色のワンピースがほしいとはしゃいで、良い色ねと笑った。

それから映画の話をした。

なにが好きなの?日本のものでもなんでも良いわと話を降られた。プリティプリンセスは面白かったよと答えたら首をかしげられた。そういえば邦題が違うんだった、PRINCESS DIARYだったっけ。ホイットニーヒューストンのってあわあわなんとなく説明を重ねたら、アンは納得して苦笑した。若いからあんまり好きじゃないのと肩をすくめた。でもいつでもかわいくて、おっとりとやさしいニュアンスのアンがとても美しかった。おどけてなんとなく照れたような感覚でいる。可愛らしいので良い
とにかく映画の話をした。マーティンスコセッシのヒューゴの不思議な発明はモノクロ映画でかっこよくてとても好き。シュヴァンクマイエルは生の肉をタールで塗りたくって羽毛を貼り付けるのが脳裏を過る、あとは牛のタンの生同士をずっと絡み合い続けるのも。トゥルーロマンスの逃避行ものもとにかくかっこいい。監督がわからないけど、ボニーアンドクライドの蜂の巣に遇うあのシーンはとにかく胸が引き絞られるような衝撃を受けた。あと、深夜番組だったんだけど、ぼんやり映画を見たのが面白かったよ。あまりにもガーンってハンマーで殴られたみたいになって、泣いちゃったのね。これいったいなんなんだって調べたら魂のジュリエッタだった。フェデリコ・フェリーニって有名な監督で……そうそう、8と二分の一、ナインって有名な映画で。あとは友達がすごく映画が好きでね、モノクロがすごい好きだったよ。ひまわりって映画が見たいねって検索してYouTubeなら見れるかなって調べてみたらどうしても考えてもダメで悔しかったな。ロンドンゾンビ紀行がゲラゲラ笑っちゃって、スイスアーミーマンのあの感覚がとってもエモくて、よかったんだよ。すごいよかった。私の一番のお気に入り。友達は何度も笑っちゃって、その友達がね

言えない。言いづらい。どうしたものかと考えていて、それでもなんだか悲しくなる。アンがじっとこちらを見る。目が透明で茶色く光っててきれいだ。好きな人だったの?って訊く。鼻がつんとして、ほっぺがパンパンにみるみる熱い。そうなんだ。好きだったんだ。大好きな友達だったんだよ。なんとなく涙が出てズルズル鼻水がすごい。でも好きな人ができたからって友達に言われちゃったよ。悲しい。

友達に関してなんとなく考えてみる。六月の下旬、「好きな人ができてしまった」ってなんとなくその友人から告白されてしまった。仲の良い大好きな友達だったから、その結果烈火の如く怒って、怒って怒って本当に違う友人にも愚痴って、どうしたらいいのかもわかんないくらいに延々と愚痴りまくって、それからなんとなくやっと考えて、最初からその子のことが女の子として大好きだったことを知った。心底メチャメチャ泣いて、友達を続けていた。ずっと私の嫌がらせを繰り返して喧嘩やギスギスを重ねていって、一年前からふとその子が忽然と消えてしまった。なんとなく、アバウトな緩い感じでずっと友達でいてくれるって思ってた。「もう話を聞いていてとにかく最低だから、あんまり考えない方がいいよ」と話友達がそう言う。でもなんとなくそう思えない。向こうが最低なら、私だってずっととにかく最低で罪悪感が胸がくるしくて、ただとにかく悲しいからそんなふうに泣いてしまっている。
たくさん話を聞いてくれたのが嬉しかった。大好きな女の子だった。でももうどこにもいなくて、きっと毎日を送っていて毎日を彼氏と彼女として送っているんだろうなと考えている。

こんなことを言った。つまり私は泣いている。

気がついたら、アンはスタバのコーヒートラベラーからナプキンをごっそり取っていた。私は泣きながらそれをとってしょっぱい水を拭き取ってチンと鼻をかんでいる。ぬるぬるで糸をひいて、ホントに恥ずかしい。きれいな手の甲の指で優しく肩を撫でている。アンは優しいなあ。とても好きだなあ。
「私にしたら良いのにね」
ゆっくりとたるい雰囲気で、スタバのボサノバの音楽が指で髪をといている。それも良いね。冗談に聞こえた。おかしくって笑った。鼻水だらけでぷうと風船がふくらんで、ぱちんとはじけた。いけねいけね、はずかしい。ナプキンでぬめるそれをごしごしこすった。ごめんね、ダメだね。そんなふうに笑った。

「嘘じゃない、ほんとよ」

じっとまるいきれいな目でアンは私をみつめた。なんだか本当に本当に悲しくなってしまった。そうなってみたいと私は泣いた。アンは私の頭を撫でた。そうしちゃおうねと首筋をさすった。


つまりはそうなったのだ。私は元気にアン・ハサウェイと美しくお付き合いしている。ステディのアンはとても元気だ、旦那さんも元気。普通に仲良くしている。シェイクスピアと似ていると聞くけど確かに似ている。ラインでいくつもメッセージを送りながらインスタでハートを送りあっている。私は元気だ。
友達は元気なのだろうかとなんとなく考えている。女友達はやっぱりなんとかうまくやってるんだろうな、pixivで彼氏の投稿をお気に入りして普通にしてたしヘェ~~~って気分でいるしまあそれでなんとか元気なんだろう。なんとなくわかっている。普通に元気でなんとかしてる。

アッ!アンがラインだ!💖ついてる!あたしも好き!!チュキチュキ!!ラブ💖💖💖💖💖💖💖💖


ア~~~~アン・ハサウェイと正式なお付き合いできねえかな(レズ)(はなほじ)(尻かき)(放屁)

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