実録! ボードゲーム出版社との契約交渉

世はまさに大ボードゲーム時代

個人でボードゲームを作った結果、国内外の出版社から声がかかり、出版契約を締結することになったという人も多いと思います。

でも気を付けて! その出版契約、気軽にサインしてしまっても良いものでしょうか?

多くの場合、契約書の雛形は出版社側が用意してくれるでしょう。しかしその内容は、「このまま通ればラッキー」または「ここから作者の交渉を受けることが前提」という考えで、出版社側に有利なものになっていることもあります。

この記事では、「契約の交渉ってどうすればいいの?」という方向けに、実際の出版社とのやりとりを掲載します。

おう、マサト!

調子はどないや?

ワイはサイモン言うんや。アメリカの出版社の開発チームの頭領やねん。おまえはんのゲームを東京ゲームマーケットで購入したんや。

出版の検討のために最初のテストをやったんやけど、結果ええ感じやったで。テスターの連中もゲーム楽しんどったし、ウチらもテストの次の段階に進みたいと思っとるんや。

このゲームの権利はまだ空いとるんか? X月X日に会社でミーティングがあって、そこでいくつかのゲームをテストするつもりなんや。

おまえはんがええって言うんやったら、もう一回テストして最終的な結果を連絡するわ。

ほなな!

おう、サイモンはん!

メールありがとうさんでした。そない言うてもろて嬉しいわ。

せやで、ゲームの権利はまだ空いとるわ。おまえはんの最終的な結論を首を長~くして待っとるわ。

ほなな!

おう、マサト!

言うたとおり、X月のX週目くらいに結果を連絡できると思うわ。

ほなな!

おう、マサト! 元気にしとるか?

ウチらの会議でおまえはんのゲームを改めてテストしたんや。みんなの反応がめっちゃええから、出版に向けて進めていきたいんやけど、どないや?

ゲームの権利は今でもまだ空いとるんか? そやったら、ウチらの標準の契約書を送って、細かいとこ話し合おうと思うんやけど。

それか、他に知りたいことあるか?

ほなな!

おう、サイモンはん! ワイは元気やで。聞いてくれてありがとうさん。おまえはんも元気にしとるか?

ほんま、ありがたい話やわ。せやで、ゲームはまだ契約可能やで。他にも2つの出版社から提案もろてて、これから数週間で決めるつもりやねん。

自分らの標準の契約書、送ってくれたらありがたいわ。ワイ、自分らの会社のファンやから、一緒に仕事できたらめっちゃ嬉しいわ。

ほなな!

おう、マサト!

ほな、ウチらの標準の契約書や。好きなように交渉したり変更したりしてええで。遠慮せんでええから。

おまえはんのゲーム、めっちゃ気に入ったわ。ウチらもええ感じに編集作業してええ形で出版できると思うんや。

なんかあったら、すぐ教えてな。

ほなな!

おう、サイモンはん!

契約書送ってくれてありがとうさん。ちょっと話し合いたいところがあるんや。

1. 契約の範囲から日本語を除外したいんや。ワイは日本で小さな出版社をやっとるから、日本市場に向けたバージョンをワイが自分で出版できるようにしておきたいんや。

2. X年契約ってのは、ちょっと長すぎるんちゃうか? 長期契約自体はええんやけど、ゲームが活発に販売されなくなったら契約終了できるようにしたいんや。

3. X%のロイヤルティ率って、ちょっと低めやと思うんや。ワイはいつも最低でもX%でお願いしとるんやけど。

4. 同じように、サブライセンスの割合も、X%やなくてX%くらいでどうやろ?

おまえはんの考えを聞かせてくれへんか? ワイはこの件を前に進めて、おまえはんと一緒に仕事したいと思っとるで。

検討してくれてありがとうな。もう一回お礼言っとくで。

ほなな!

おう、マサト!

1. わかったわ。日本語は契約の範囲から除外するで。おまえはんがウチらのグラフィックとかを使いたい場合はまた教えてな。

2. X年言うてたんは、多くの場合、ゲームの編集や開発にめっちゃ時間かかるし、それが大きなコストになるからやったんや。でも、おまえはんのゲームは普通より小さいから、X年に減らすのはどうやろ?

3. ワイの経験からすると、おまえはんの言うX%ってのは市場でも最上級のロイヤルティやな。X%で提案したのは、ウチの会社に多くの人間がおって、編集プロセス・開発・マーケティング・販売に多くのリソースを使うからなんや。だから、ベストな仕事をするためにマージンが必要なんや。お互いの中間のX%くらいで妥協できへんか?

4. ワイの個人的意見やけど、標準的なサブライセンスの率は出版社側がもうちょい高いんや。でも、ウチはサブライセンスをめったに使わへんから、この契約でX%にするのは問題ないで。

ほなな!

おう、サイモンはん!

詳しい返事くれてありがとうさん。ほんまに感謝しとるで。

1. 了解してくれてありがとうな。

2. たとえば、年間の売上がX部以下になったら契約終了できる条項を入れたいんやけど、それでもええか?

3. 段階式のロイヤルティってできへんかな? お互いの中間のX%を基本にして、ゲームがうまくいって自分らが初期投資を回収できたら(たとえばX万部以上売れたら)X%に上げるとか。

4. こっちも了解してくれてありがとうやで。

ほなな!

おう、マサト!

残りの2つの件、ウチらとしても大丈夫やで。

他に何か聞きたいことあったら、遠慮せんと言うてな。どの出版社と契約するか決めたら教えてくれや。そしたらウチらが話し合うた内容を入れた新しい契約書を送るわ。

ほなな!

おう、サイモンはん!

条件受け入れてくれてありがとうさん。

決心ついて、契約書にサインする準備できたわ。新しいバージョンの決算書送ってくれや。

自分らと仕事できるのめっちゃ嬉しいわ。

ほなな!

おう、マサト! 調子はどないや?

ほな、契約書や。ようよう読んで、全部確認してな。

何もかもええ感じやったら、印刷してサインして、スキャンして送り返してくれたらええわ。そしたらウチらもサイン入れて送り返すさかい!

もし何かおかしいとこあったら、教えてな。

ほなな!

おうサイモンはん! ワイは元気にしとるで。ありがとうな。おまえはんも調子よければ何よりや。

契約書の条項の番号で「X.X」って書いとるやつ、これ間違いやろ。こっちで「X.X」に直しといたで。

他は全部ええ感じや。サインしたで。添付ファイルを確認しとくれや。

これからよろしゅう頼むわ!

おう、マサト!

これがウチらのサインも入った契約書や。

これからよろしゅう頼むで。一緒にええゲーム作ろうや!

なお、「そもそも業界の標準がわからなくて交渉が難しい!」という場合は、Cardboard Edison による出版契約に関する業界調査のレポートが参考になるかもしれません。

また、@dbs_curryにご連絡いただければ、可能な範囲でご相談に乗ることもできます。

※ この記事はフィクションであり、実際の人物・団体・作品とは一切関係ありません。


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