【シード編】海外PropTech資金調達動向vol.2＜Part2＞

みなさんこんにちは、PropTech特化型VCを運営する株式会社デジタルベースキャピタルのアナリスト渡邉啓太郎です。
本記事では、グローバルにおけるPropTech企業の資金調達事例についてご紹介します。

はじめに

本記事では、海外のPropTech（Property×Technology、不動産テック）によるエンジェル、プレシード、シードラウンドの資金調達ニュースを中心にお届けします。【シリーズA/B編】と合わせて、米国を中心として、どのような領域でサービスが立ち上げられ、注目されるのか、その動向を少しでも早く捉えることが目的です。

欧米のスタートアップ7社を紹介。建設業界の業務効率化事業や、コミュニティ事業等が資金調達

Crunchbaseや各社ウェブサイト等から2020年1月にエンジェル・シードラウンドで資金調達をしたPropTech企業をまとめます。グローバルにおける初期段階の資金調達状況を見ることで、不動産、建設のPropTech領域における最先端の動向を探ります。
2020年1月1日～1月31日にシードラウンドで資金調達を行ったPropTech企業は14社です。前回記事「【シード編】海外PropTech資金調達動向vol.2＜Part1＞」ではその内7社を紹介しました。
本記事では残りの7社について個別に紹介します。

1 build

企業名：1 build
設立年：2019年
本社：米国　カリフォルニア
調達概要：シードラウンド （1月1日）、Y Combinator
事業概要
建設工事に必要なコストの推定サービスを提供。建設会社は、建設プランを1builtのプラットフォーム上にアップロードすると、estimator（コスト推定を行うプロ）からコンタクトがあり、プランとニーズについての詳細を聞かれる。それらの情報に基づき数日の間で正確なコスト推定が提供される。さらに入札コンペのためのアドバイス等も提供される。書類やコミュニケーションのやり取りは全てプラットフォーム上で完結する。
参考記事
・1 build HP

Neighbourhood

企業名：Neighbourhood
設立年：2019年9月
本社：イギリス
調達概要：プレシードラウンド GBP￡0.12M（1月22日）、Antler
事業概要
イギリスでシェアハウスとコミュニティネットワークを提供している。「住む場所」としてだけでなく、コミュニティ形成や人との繋がりの場としてのシェアハウスを提供。プライベートベッド、家具、wifi、エアコン、週1回のクリーニング等々充実した設備・サービスに加え、カフェ等の複数のブランドと提携し、特別サービスやディスカウントを享受できる。全サービスは専用アプリを通じて提供され、シェアハウスの検索や契約、上記サービスに加え、地元コミュニティへの参加等が可能。さらに、Neighbourhoodのシェアハウスを利用するメンバー同士でチャットが可能であり、容易にコミュニティ形成や様々な人々とつながる事が可能。
参考記事
・Neighbourhood HP
・CISION,2020年2月12日,「Clues to the Neighbourhood Invites Hotel Indigo® Guests to Embrace Curiosity and Discover the World Around Them」

KEWAZO

企業名：KEWAZO
設立年：2016年4月
本社：ドイツ　ミュンヘン
調達概要：シードラウンド EUR€2.5M（1月30日）、MIG
事業概要
建設現場の足場の組み立てにロボットエレベーターを提供。従来建設工事の足場の組み立ては労働集約的で非効率であった。特に、組み立ての80%以上の時間がパーツの運搬に使われていた。KEWAZOは足場組立現場にロボットエレベーターを導入し、パーツをJust-In-TimeでJust-In-Placeに運ぶ事を可能にしている。これにより、ワーカーの削減、時間の削減を実現し、労働コスト平均約33%のカットを実現する。
参考記事
・KEWAZO HP
・scaffmag,2018年4月11日,「Engineers Develop The World’s First On-Site Scaffolding Robot」

Cobu

企業名：Cobu
設立年：2016年
本社：米国　ボストン
調達概要：シードラウンド （1月22日）、Beni VC
事業概要
アパートの住民同士や近隣住民同士のコミュニティ形成サービスを提供。従来の近隣住民関係、特にアパートの住民同士の関係は薄く、一人暮らしの住民等は孤独であるケースが多く存在していた。Cobuはアパートの住居者同士、近隣住民同士が相互に繋がる事のできるコミュニティをオンラインプラットフォーム上に作り、近隣住民SNSを提供している。オンライン上での交流から、同じ趣味を持つ者同士での直接の交流等、アパート住まいの孤独を解決し、近隣住民間のコミュニティ形成を実現している。
参考記事
・Cobu HP
・jtango VC,2019年9月20日,「Angel Investment: Cobu」

eDraw

企業名：eDraw
設立年：2017年
本社：米国　ユタ
調達概要：シードラウンド （1月6日）、Blackhorn Ventures
事業概要
建設ローンの支払業務の自動化ソフトウェアの提供。リーマンショック以降レンダーが過度のリスクを取ったポートフォリオを組めないよう、様々なチェックポイントが設けられ、建設ローン取引プロセスも労働集約的な状態であった。紙面でのやり取り、大量のエクセルワークが基本であり、必要なワーカーの数も多かった。eDrawは住宅不動産・商業不動産・SBA(Small Business Association)のレンダーに向け、ローンの支払いプロセスの自動化や、借り手とのマッチング等のサービスを提供している。WASATCH PEAKS CREDIT UNIONやTRACY HARPER CONSTRUCTIONが主要顧客。
参考記事
・eDraw HP

Savvy

企業名：Savvy
設立年：2019年12月
本社：米国　ニューヨーク
調達概要：プレシードラウンド US$0.15M（1月3日）、Antler
事業概要
賃貸住宅契約の際、テナント候補者とオーナーの契約手続きプロセスを効率化するサービスを提供。従来は賃貸契約の際、テナント候補者のスクリーニングに大量の書類を要し、手間と時間が膨大に掛かっていた。Savvyのプラットフォームでは、APIで銀行とアプリを繋げ銀行内の個人情報を容易に共有するサービスを提供するPlaidと提携し、オープンバンキングによりテナント候補の情報を入手し1枚のレポートにしてオーナーに提供する。テナントは大量の書類を作成するプロセス、オーナーはそれらをチェックし精査するプロセスを省略する事が可能。
参考記事
・Savvy HP

L2BNB

企業名：L2BNB
設立年：2017年2月
本社：米国　オースティン
調達概要：シードラウンド US$0.5M（1月3日）
事業概要
高所得者層の旅行客に高級な民泊を提供。富裕層旅行者にとって、一部のエリアのホテルは高すぎるが、Airbnb等の民泊ではサービス水準が低いという課題があった。L2BNBは高級な戸建てやアパートを民泊として提供し、高級アメニティの提供や現地のエージェントによるホテルレベルのサポート等により、高級ホテルより安価で、高い水準のサービス品質を実現している。現在オースティン・ダラス・ヒューストン・サンアントニオとテキサスの主要都市に加え、マイアミでサービス提供を行っている。
参考記事
・L2BNB HP

おわりに

今回は2020年1月にシードラウンドで資金調達を実施したPropTech企業14社を2回に渡って紹介する記事のPart2として7社について紹介しました。欧米の地域において、建設業界や賃貸契約関連での業務の自動化、効率化サービスや、シェアハウス、コミュニティ事業が調達を実施していました。従来労働集約的であったビジネスのIT化による自動化、業務効率化や、人と人を繋げるコミュニティ事業は、メインテーマとして注目を集めます。

株式会社デジタルベースキャピタルとは
2019年に設立された日本初のPropTech特化型ベンチャーキャピタルです。人々の暮らしや働き方を豊かにするLaaSをテーマに規制産業（不動産、金融、建設）領域に関連するスタートアップへ投資しています。
主な投資先 X Kitchen、CLAS、ADDress、modecas、FUEL 等。

ベンチャー投資事業に加えて、大手企業向けのデジタルトランスフォーメーション、オープンイノベーションにおける戦略コンサルティングも行っています。
主な支援事例：ゼンリン、LIFULL、三菱UFJリースらによる次世代不動産情報インフラプロジェクト「ADRE」、一般社団法人第二地方銀行協会「SARBLAB」等。

PropTechスタートアップコミュニティPropTech JAPANの運営を行い、アジア最大規模のPropTech特化型ピッチカンファレンスPropTech Startup Conferenceを運営しています。

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