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【シード編】海外PropTech資金調達動向vol.2<Part1>

みなさんこんにちは、PropTech特化型VCを運営する株式会社デジタルベースキャピタルのアナリスト渡邉啓太郎です。
本記事では、グローバルにおけるPropTech企業の資金調達事例についてご紹介します。

はじめに

本記事では、海外のPropTech(Property×Technology、不動産テック)によるエンジェル、プレシード、シードラウンドの資金調達ニュースを中心にお届けします。【シリーズA/B編】と合わせて、米国を中心として、どのような領域でサービスが立ち上げられ、注目されるのか、その動向を少しでも早く捉えることが目的です。


欧米や東南アジアで新たに生まれるPropTechスタートアップ。賃貸契約関連や売買マッチング事業が資金調達

Crunchbaseや各社ウェブサイト等から2020年1月にエンジェル・シードラウンドで資金調達をしたPropTech企業をまとめます。グローバルにおける初期段階の資金調達状況を見ることで、不動産、建設のPropTech領域における最先端の動向を探ります。
2020年1月1日~1月31日にシードラウンドで資金調達を行ったPropTech企業は14社です。社数が多いため2回に分けてお届けします。
本記事ではPart1として7社を個別に見ていきます。


Nannybag

Webサイト_Nannybag

企業名:Nannybag
設立年:2016年
本社:フランス パリ
調達概要:シードラウンド EUR€2M(1月28日)、Expon Capital
事業概要
荷物を預けたい旅行者と、空いているスペースを活用したい店舗をマッチングするプラットフォームを提供するリーディングカンパニー。従来の旅行客の課題として、ホテルやAirbnbのチェックイン前やチェックアウト後等に荷物が邪魔であるという課題があった。Nannybagは世界の300都市で4,000以上のホテル、レストラン、ショップなどとパートナーを組み、旅行者が数時間から数日間、一時的に荷物を預けられるサービスを提供している。パートナーは24時間365日対応可能であり、過去の利用者に5段階の定量評価とレビューにより評価される。また、Axa Assuranceと提携し、荷物1個につき€1,500まで保証されている。料金は1つの荷物につき、€6/24hで、1日追加毎に€4かかる。Nannybagは取引毎に旅行客から料金の一部を手数料として受け取り、残りをパートナーに支払う。
参考記事
Nannybag HP
Phocuswright Europe


Knox Financial

Webサイト_Knox Financials

企業名:Knox Financial
設立年:2018年1月
本社:米国 ボストン
調達概要:シードラウンド US$3M(1月27日)、Greycroft, Pillar VC
事業概要
引っ越し等に伴い、持ち家を貸し出して収益物件化したい住宅物件オーナーの、収益物件化に要する手続きを全て請け負うサービスを提供。従来個人が住居を収益物件化する際、ファイナンス、保険、テナント探し、税手続き等様々な手続きが必要で、手間と時間が膨大に掛かっていた。結果的に収益物件化を諦め、売却を選択し、将来的に物件価格が高騰し、売却選択を後悔する人が多かった。Knox Financiaは収益物件化に要する全ての手続きを請け負い、賃貸契約後のメンテナンス、マネジメントも担う事で、オーナーは不労所得を実現できる。また、賃料収入と将来の物件価格の予測から投資リターンを計算するアルゴリズムモデルを開発し、投資運用のサポートも提供している。料金は、賃貸仲介料、管理手数料は無料で、毎月賃料の10%を徴収するモデルである。
参考記事
Knox Financial HP
・crunchbase news,2020年1月27日,「Exclusive: Knox Raises $3M In Greycroft-Led Seed Round To Help People Become Landlords


SuperSurfaces

Webサイト_SuperSurfaces

企業名:SuperSurfaces
設立年:2014年7月
本社:インド ハイデラバード
調達概要:エンジェルラウンド US$0.5M(1月3日)、Vishnu Reddy
事業概要
インド初の壁面・床面のデザイン・施工に特化した企業。インドのTier1地域の都市部に住む富裕層に対し、ベネチア職人を雇い古来ローマ時代からのベネチア漆喰(しっくい)を使用した伝統的な技術を活用し、顧客の要望に沿ってカスタムされた壁面・床面のデザイン・施工を提供している。富裕層個人から5つ星ホテル「THE Park Hotel」等の企業が主要顧客。これまでに1,000以上の案件を手掛けている。今後は海外展開を目指し、2022年までにスリランカ・バングラデシュ、2023年までに米国・オーストラリアに進出する予定。直近では過去に手掛けた400以上デザインを展示する体験スタジオを2021年までにムンバイ、デリー等インドの数都市に展開する。
参考記事
SuperSurfaces HP
・YOURSTORY,2020年1月7日,「Interior design startup Super Surfaces bags $500k as a part of its seed round

Dottid

Webサイト_Dottid

企業名:Dottid
設立年:2018年
本社:米国 ダラス
調達概要:シードラウンド US$3.85M(1月13日)、David Farmer, David Ridley, Laurie Dotter
事業概要
商業不動産のリース取引の全プロセスを、1か所で行う事のできるプラットフォームの提供。従来のリース取引では、取引の各プロセスを行う場が統一されておらず、コミュニケーションや書類のやり取り等が非効率的であり、情報の非対称性が存在し、テナントの満足度が低いことが一般的であった。Dottidが提供するプラットフォームでは、オーナー・ブローカー・テナントとリース取引に参加する全プレイヤーが一か所で全プロセスを完結する事ができ、取引費用・時間・手間を削減しながら取引の透明性の向上を実現しており、高い満足度に繋がっている。2018年の創業から現在までは、テキサスのメジャーなデベロッパーや不動産オーナーにパイロット版の提供を行っており、ユーザーのフィードバックを元にプロダクトの改良を進めている。
参考記事
Dottid HP
・FINSMES,2020年1月13日,「Dottid Raises $3.85M in Seed Funding
・MPA,2020年1月16日,「Tech platform Dottid raises millions to disrupt CRE industry


Kotoko

Webサイト_Kotoko

企業名:Kotoko
設立年:2019年10月
本社:シンガポール シンガポール
調達概要:シードラウンド (1月9日)、Antler
事業概要
インドネシアで複数ブランドによるシェア店舗を展開し、企業・個人が店舗の出店を行うハードルを削減するサービスを提供している。従来店舗出店を行う際には、テナント探し、スタッフの雇用、物流システムの構築、支払いシステム構築等々、膨大なコストと手間が掛かっていた。KotokoはThe Center Hotelという店舗を展開し、顧客は他のブランドと共に出店する。スタッフの雇用、物流準備、支払いシステムの構築等を全てkotokoが担い、顧客はkotokoに商品を送るだけでストア出店を行う事ができる。店舗はモール・オープンエリア・オフィスビル等々、多様なロケーションから選択する。料金は1日300,000IDR(ルピア,≒2,000円)から出店する事ができる。
参考記事
Kotoko HP
・TECHINASIA,2020年1月8日,「Antler injects $1.4m into 14 startups from third Singapore cohort


Federa Inc.

Webサイト_Federa.Inc

企業名:Federa Inc.
設立年:2016年
本社:米国 バージニア
調達概要:シードラウンド US$0.5M(1月15日)
事業概要
一律定額でフルサービスを提供する不動産ポータル仲介。従来の不動産売買取引では、ブローカーへの仲介手数料が取引の3%程度と高かった。Federaは物件の売買価格に関わらず、一律$1,000で他の仲介と同レベルのフルサービスを提供する。数百のwebサイトへの広告、内見の調整、契約のレビュー、書類手続き等を全て請け負いながら、平均で$11,000の仲介手数料の削減を実現している。
参考記事
Federa Inc. HP
・WASHINGTON BUSINESS JOURNAL,2020年1月16日,「This local real estate firm is rebranding — and launching an Instagram-style app for listings 」


Offmade

Webサイト_offmade

企業名:Offmade
設立年:2019年
本社:ドイツ ベルリン
調達概要:シードラウンド US$1.1M(1月10日)
事業概要
市場外の不動産売買のオンラインマッチングプラットフォームの提供。市場外での取引とは、不特定多数に公開された広告プラットフォームへのリスティングを行わず、個人間で売買する取引である。ドイツでは不動産売買取引の40%が市場外取引である。しかし、特にグローバルでの市場外取引は、企業の限られたネットワークに依存し、ローカルなルールによって制限されるなど、非効率的であった。Offmadeは独自開発のアルゴリズムによって、開示する情報を最低限に抑えながらバイヤーとセラーのマッチングを可能にし、市場外取引のオンライン化を実現している。
参考記事
Offmade HP
・Gründerszene Magazin,2020年1月10日,「The new Berlin Proptech with Samwer money」


おわりに

今回は2020年1月にシードラウンドで資金調達を実施したPropTech企業7社を取り上げました。欧米、東南アジア等の地域にて、賃貸契約関連、売買マッチング、シェアスペース等のサービスが調達を実施していました。基本的には不動産賃貸、売買領域で、API、AIといった技術の活用による業務効率化や、無駄なスペースを収益化するシェスペース事業等、既存ビジネスの簡略化、効率化がメインテーマの一つとなっています。


株式会社デジタルベースキャピタルとは
2019年に設立された日本初のPropTech特化型ベンチャーキャピタルです。人々の暮らしや働き方を豊かにするLaaSをテーマに規制産業(不動産、金融、建設)領域に関連するスタートアップへ投資しています。
主な投資先 X KitchenCLASADDressmodecasFUEL 等。

ベンチャー投資事業に加えて、大手企業向けのデジタルトランスフォーメーション、オープンイノベーションにおける戦略コンサルティングも行っています。
主な支援事例:ゼンリン、LIFULL、三菱UFJリースらによる次世代不動産情報インフラプロジェクト「ADRE」、一般社団法人第二地方銀行協会「SARBLAB」等。

PropTechスタートアップコミュニティPropTech JAPANの運営を行い、アジア最大規模のPropTech特化型ピッチカンファレンスPropTech Startup Conferenceを運営しています。

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