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ジョーン・ジェット バッド・レピュテーション

70年代末に日本でも大ヒットした女性5人組バンド、ザ・ランナウェイズの中心メンバーであり、解散後は<ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ>としてソロ活動を続け、「アイ・ラヴ・ロックンロール」がビルボードチャート7週連続1位を獲得、2015年にはロックの殿堂入りを果たした、女性ギタリストでありロックンロールの象徴ともいわれるジョーン・ジェット。 
ロサンゼルスの変態プロデューサー、キム・フォウリーに発掘され、ビートルズ並みの熱狂で迎えられた来日公演、そして日本メディアがきっかけとなった解散の顛末など、ザ・ランナウェイズの歴史も描きつつ、完全なる男社会だった米国音楽業界で女性であるがゆえに経験してきた苦悩と、ソロ活動以降のバンドメンバーであり盟友のケニー・ラグーナ(THE BLACKHEARTS)とのレーベル運営など、厳しい音楽業界のなかで<純粋にロックンロールを演奏し続ける>ことでもがいてきたジョーン・ジェットの姿が炙り出されていくその幼少期から現代まで、約半世紀にわたる半生を95分間で描き切るドキュメンタリー映画。

13歳のクリスマスプレゼントにジョーン・ジェットが、両親にギターをねだった時から、全ては始まった。
ジョーンが、ちゃんとギターを習おうとギター教室に行っても「女にギターは教えられない」と追い返され、独学でギターを学んだ。
70年代フェミニズムが盛んで、励まされたジョーンは「女がロックをやってもいいはず」とハリウッドに行った。
ハリウッドのクラブ「ロドニー」で様々なロックを聞き刺激を受けたジョーンは、ガールズバンドを結成しようと思い、後にランナウェイズのドラムを担当するサンディ・ウィリアムズを通じてロサンゼルスのプロデューサー、キム・フォウリーに出会い、ボーカルのシェリー・カーリーなどのメンバーが加わってザ・ランナウェイズを結成。当時のロック業界は女性が活躍できるのはジョニ・ミッチェルのようなシンガーソングライターかお色気要員だけで、自分の心の叫びを歌うガールズロックに飢えていた女性ファンに支持された全盛期。
ビートルズ並みの熱狂で迎えられた来日公演、そして日本でのキム・フォウリーの独断で写真家の篠山紀信にボーカルのシェリー・カーリーのセクシー写真を撮らせたことがきっかけとなり、シェリー・カーリーと他のメンバーの仲が拗れ、メンバーが次々に脱退したが、ジョーン・ジェットがリーダーとなってザ・ランナウェイズを率いたもののメンバーとキム・フォウリーの仲が拗れまくって泥沼化した解散の顛末など、ザ・ランナウェイズの歴史を描きつつ「アバズレ」などと評論家に不当な評価されて観客にはビール瓶などを投げられるなど完全なる男社会だった米国音楽業界で女性であるがゆえに経験してきた苦労。
ザ・ランナウェイズ解散の痛手から酒浸りになっていたジョーン・ジェットが、どのようにソロ活動以降のバンドメンバーであり盟友のケニー・ラグーナ(THE BLACKHEARTS)と出会い大手のレーベルにそっぽを向かれインディーズ・レーベル「ブラックハーツ」を金銭的に苦労しながらも、どのように設立運営しアルバムをリリースしファンを獲得したかなど、厳しい音楽業界のなかで<純粋にロックンロールを演奏し続ける>ことでもがいてきたジョーン・ジェットの姿が炙り出されていく。
さらには、映画方面では契約上の義務を果たすべく生まれた苦い思い出『ジョーン・ジェットの爆裂ムービー』(84)やブルース・スプリングスティーンが演じるはずだった役をジョーン・ジェットが演じたハリウッド映画『愛と栄光への日々/ライト・オブ・デイ』(86)のジョーン・ジェットが演技初挑戦した裏話、ブラックハーツのメンバーの死と人気の陰りをジョーン・ジェットがどのように乗り越えたか、ランナウェイズに影響を受けたガールズロックバンド「ビキニ・キル」の「ライオット・ガール・ムーブメント」を支援したり、様々なロックバンドとジョーン・ジェットのコラボ活動、動物愛護などの社会活動に積極的に参加し、「ギッツ」のボーカルのミアが暴行殺害された時には残されたメンバーとアルバムを制作し印税売上を捜査活動に寄付して犯人検挙に貢献するなどのジョーン・ジェットの挑戦を諦めない幅広い活動。
男社会である音楽業界で多くのレコード会社に拒絶され、<ギターはいらない>と言われ、あくまで性的興味を引くための道具としてしか自身の存在を見ない世界の中で(実際、日本でレコードが発売されたランナウェイズの1stアルバムの邦題は「悩殺爆弾~禁断のロックン・ロール・クィーン」だった)、迎合せず、妥協せず、純粋にロックをやることだけを目的に生き延びて、2015年には「ロックの殿堂」に殿堂入りするところまできたジョーン・ジェットの人生を紆余曲折と波瀾万丈の音楽活動の中で垣間見ることができる。
 半世紀にわたって逆境と戦い、自身の純粋な目的を成し遂げるべく生きてきた一人のミュージシャンの生き様を追った『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』は、どんな状況に陥っても自分が賛同できない世界に迎合せずに突き進むことの重要性と美しさを提示する音楽ドキュメンタリーの枠や性差を超えて、ジョーン・ジェットのロックのように勇気と力を与えてくれる傑作ヒューマンドキュメンタリー映画。
「アタシは自分の評判なんて気にしない、気にする人は古い時代に縛られているだけ、女の子は好きなことをしていいんだよ、アタシは自分の評判なんて気にしない」
「バッド・レピュテーション」byジョーン・ジェット

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