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SWALLOW/スワロウ

あらすじ

完璧な夫、美しいニューヨーク郊外の邸宅、ハンター(ヘイリー・ベネット)は誰もが羨む暮らしを手に入れた。
ところが、夫は彼女の話を真剣に聞いてはくれず、義父母からも蔑ろにされ、孤独で息苦しい日々を過ごしていた。
 そんな中、ハンターの妊娠が発覚する。
待望の第一子を授かり歓喜の声をあげる夫と義父母であったが、ハンターの孤独は深まっていくばかり。
 ある日、ふとしたことからハンターはガラス玉を呑み込みたいという衝動にかられる。
彼女は導かれるままガラス玉を口に入れ、呑み下すのだが、痛みとともに得も言われぬ充足感と快楽を得る。
 異物を“呑み込む”ことで多幸感に満ちた生活を手に入れたハンターは、次第により危険なものを口にしたいという欲望に取り憑かれていく。
だが、ハンターが心の支えにしていた「異食症」が、夫にバレてしまい、ハンターが抱えている虚無感や低い自己肯定感の根源をハンターは向き合わさざるを得なくなる。
 監督のカーロ・ミラベラ=デイヴィスは、自身の祖母が強迫性障害により手洗いを繰り返すようになったというエピソードから本作を思い立ち、結婚、妊娠、夫や義父母からの重圧により孤独を深めていく主人公が、異物を呑み込むことで自分を取り戻していくというショッキングな物語を生み出した。 
本作はトライベッカ映画祭で披露されるや批評家からの大きな絶賛を集め、主演のみならず製作総指揮を務めたヘイリー・ベネットはその体当たりの熱演によりトライベッカほか様々な映画祭で主演女優賞を獲得!

解説と感想

低賃金の接客業で生きてきたハンターと会社の創業者一族の後継息子の夫の出自の違いの格差、愛し愛されてるものの夫や義理の父母や夫の同僚から男尊女卑的な貞淑な妻以外の役割を求められず息苦しさを抱えているハンターが氷から始まりビー玉やネジや画鋲などを食べる「異食症」により自傷行為や摂食障害行為により、自らの虚無感を癒そうと足掻く苦闘が描かれる前半。
ハンターの摂食障害行為「異食症」が、夫にバレてカウンセリングを受けたり、夫や義理の父母との衝突の中でハンターが自身の抱えている虚無感や低い自己肯定感の根源に向き合う後半。
ヘイリー・ベネット演じるハンターが、着ている服や豪邸のインテリアの寒色系の濃い青色や生活音を強調した映像や音の不穏な雰囲気の絶妙な演出、ろくに自身の話を聞いてもらえず妻や母親という男性社会の役割しか許されないハンターが抱えている虚無感や息苦しさと優しいようでいてズレている夫や義理の父母のリアル感、自傷行為や摂食障害的な「異食症」により虚無感を埋めようと自身の感覚や意志を取り戻そうとするハンターの苦闘、「ファイトクラブ」「プロミシング・ヤング・ウーマン」「82年生まれキム・ジヨン」の文脈で男尊女卑的な社会で「わきまえさせられ」苦しむ女性の苦闘を描いたヒューマンサスペンス映画。

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